2021.06.28
薄暗い路地裏のような雰囲気のBL。蟻地獄の底で出来上がっていく恋愛感情から目が離せません。『ハッピー・オブ・ジ・エンド』おげれつたなか【おすすめ漫画】
『ハッピー・オブ・ジ・エンド』
丁寧な暮らしの対極にあるような、ドブをさらったようなというか薄暗い路地裏のような雰囲気のBLです。
カップリングは、「口説かれた後に電マで殴りかかってくる謎イケメン×顔だけがいい底辺クズ男」です。
書いててどうなのこれ……という組み合わせですが、見知らぬ子供のハンバーガーを強奪して空腹を満たしながら食わせてくれる相手を探して口説く千紘(受)は、最初本当にどうしようもなくクズでしかなくて、ちょっと途中で読むのやめようかしらと迷うレベルです。
行きつけのバーで出会った好みの男を口説いていい雰囲気になったあと、電マでボコられるくらい甘んじて受け給え。と思っちゃう程度には人間としていろいろダメな受なのです。
ケイト(攻)も、容赦なくタコ殴りにした男が用なしになると、自分が傷だらけにした男をあっさり「消えて」と家から放り出そうとするような人間で、なかなかです。
え、君たちなんで一緒にいることになって最終的にくっついてるの?
と首をかしげるしかない組み合わせなんですが、何も持ってなくて、相手にもさほど期待しないからこそ一緒にいられたのかなという気もします。
千紘は、好きだった相手に二股をかけられて、恋人だと思っていた男が結婚することで失恋し、実家からもゲイだという理由で勘当されており、金もなく住むところもないという心身ともにどうしようもない状態で、自分をボコったケイトの家に居候を決め込みます。
ケイトも、母親に捨てられて子供の時から自力で生きていかざるを得ず、それでも母親を見捨てられずに、薬でラリって立ちんぼをやっているような親に定期的にお金を渡しています。
お互い、愛に飢えていて、傍にいる相手が一番ではないのに、その相手からしかぬくもりが得られません。
蟻地獄の底で出来上がっていく恋愛感情という感じで、爽やかに楽しむことはできないのですがどうにも目が離せない作品です。
人間臭くて、人のイヤな部分をむき出しにしてこすり合わせたみたいな生々しさがあるので、癒されたいとかほっこりしたいとかそういう気分の時はやめときましょう。
でもちゃんと面白いですよ!
©おげれつたなか/竹書房