2021.11.01
あんまり神様を信じていない新米神父・ジルと、200年孤独に生きてきた吸血鬼の恋。切ない系のハッピーエンドファンタジーBL!『寒がりな怪物』あさじまルイ【おすすめ漫画】
『寒がりな怪物』
外面はいいけどあんまり神様を信じていない新米神父・ジルと、200年孤独に生きてきた吸血鬼の異種間・年の差恋愛です。
カップリングは、「吸血鬼(約200歳)×新米神父(28歳)」ということで、年の差実に172歳の年上攻ものです。
ファンタジーならではの設定といえるでしょう。ただ、古びた教会に住み着いていた吸血鬼・エミールにあまり年上感がないので、年の差ならではの萌え要素は少なめです。きっと長生きしすぎていろんなところがフラットになっちゃったんでしょう。
赴任先で敬虔な神父としての猫を被っていたというのに、教会に住み着いていたエミールに本音が漏らしていたのを聞かれてしまい、口止め代わりに教会に住むことを許したジル。
一人の時間が欲しかったのに同居人ができるなんて冗談じゃないとげんなりしていたジルですが、初日の夜に、
「僕はすごく寒がりで…すこし……あたたまるだけ……」
といいながら布団に潜り込んできたエミールに「誘われた」判定を下します。
赴任したその夜に、初対面の男に誘われたからってそのままやっちゃっていいんでしょうか神父様……。
育ちのせいで、いわゆるセックス依存のようになっていたジルは、実はただ本当に寒くて添い寝してほしかっただけの吸血鬼と体の関係になってしまったのでした。その後、顔のいい神父は教会に男を囲っているという噂を流され、否定はするものの消えてはくれません。
そのうち、ジルとエミールは身体だけではなく心もお互いに傾いていき、相思相愛の仲になります。お互い、過去に負った心の傷があり、それを埋め合うような愛です。
吸血鬼として不完全なエミールはジルを吸血鬼にすることができるかは分からないのですが、迷っている場合ではない事態になります。ジルが町の男に刃物で脅されて犯されそうになり、エミールが助けに来たものの、男の手元が狂ったのかジルが抵抗したからなのか、ジルの腹には深々と刃物が刺さってしまっていました。明らかに致命傷で、このまま死ぬか、一か八かで吸血鬼に変えてしまうかという選択を迫られ、エミールはジルに噛みついて吸血します。
最終的にはハッピーエンドなので安心して読んでいただければと思いますが、けっこうハラハラの展開でした。
200年生きて初めて知った恋の結末が死別では報われないにもほどがありますので、どんな形にせよ彼らが幸せに共に生きることができるようになって心からほっとしました。肌色シーンはかなりしっかりめにありますが、切ない系のハッピーエンドBLとして楽しめるお話です。
こんなに人間に迷惑かけない吸血鬼いるんだ……という慎ましい生きっぷりが微笑ましくてほっこりするので、ファンタジー好きさんにはかなりおすすめです。
©あさじまルイ/リブレ