2021.12.07

極道者が人気K-POPアイドルグループにどっぷりハマる、異色コメディ!『やくざの推しごと』八田てき【おすすめ漫画】

『やくざの推しごと』

今回紹介するのは極道者がアイドル沼にどっぷりハマる異色コメディ。一迅社がpixivコミック内で展開するWebマガジン「comic POOL」で連載中の『やくざの推しごと』だ。

主人公・金城健、39歳。オールバックの髪に黒スーツをビシっときめて顔には深い傷痕を刻む、凄みに満ちた中年男。彼は鷲尾組とよばれる組織に所属するヤクザ……それも若頭という幹部職にある上級ヤクザである。

そんな男がある日、組長の一人娘(女子高生)の熱心なおススメで人気K-POPアイドルグループ「MNW」のパフォーマンスにふれ、衝撃を受けた。

見た目華やかなアイドルが舞台裏では悩み苦しみ、ぶっ倒れるほど厳しいレッスンを積みながらステージ上では笑顔を徹底するプロ意識。チームメンバーが一心同体と化す歌唱とダンスの完璧なコンビネーション。それを高い統率力で導くメインラッパーのカリスマ。

熱い意地がある、かたい絆がある、理想にかける覚悟がある。それらに身も心も削って道を究めようとする漢がいる。任侠だ! 形は違えど、あれこそは自分たちが目指す任侠の極致だ!

感動に包まれた健。すっかりMNWのリーダー「JUN」推しにハマりこみ、コンサートに行けば「兄貴になって」と書いたうちわを掲げて仇でも見つけたようなすさまじい眼つきで推しの一挙手一投足を見守る熱烈なファンとなりはてる。

気軽に推し変する姐さんと激論を交わしたり、同じくMNWにハマったライバル組織のヤクザとライブのチケットを融通する仲になったりと極道世界のアイドル沼は充実の日々が続いていく……。

強い・コワい、あるいは渋いおじさんが可愛いものや家庭的なものを嗜むギャップを愛でる漫画はしばしば見かけるが、本作の場合「男ヤクザが血道を上げて男アイドルを応援する」という強烈なパラメータの振りかたで鮮やかな印象を残してくる。

組み合わせ的にヒネった変化球なようでいて、よくよく考えると実際ヤクザの任侠を描く物語には“男が男に惚れる”ありさまが重要なポイントだよな、と親和性の高さに気づかされるところがミソ。『とんかつDJアゲ太郎』の「とんかつ屋とDJって同じなのか!!!???」に匹敵する、「言われてみればたしかに」の度合いが高い重ね合わせだ。

“自分が見込んだ人物にてっぺんを取らせるため我が身もかえりみず助力を尽くす”という角度から、推しという概念に極道の仁義を重ねるのはああなるほどという観である。

おじさんギャップ萌え系の作品の多くは、タフでマッチョな男性性を解体させて「べつにキュートでもいいよね」という価値観を示すところに要点があるわけだが、『やくざの推しごと』では任侠というマッチョな軸はキャラクターに保たせつつ、その対象をキラキラしたところへ置き換えるズラしの手際がワザありと言えるだろう。

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miyamo

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