2018.03.19
【日替わりレビュー:月曜日】『針と姫』タナカイッパチ
『針と姫』
タナカイッパチ先生のデビューコミックスです!
デビュー作といいながら、絵が繊細で美しくてとても1冊目のコミックスとは思えません。
1冊の中に3作品収録されているのですが、どのお話もすっと世界に入り込めてページ数以上の満足感があるので、それぞれのお話に浸って読み終えることができます。
特筆すべきはBLにおける重要要素たる肌色シーンです。
実はどのお話も最後までの描写はないんですが、二人の息遣いが聞こえてきそうな感じとか指に絡む髪とかキャラの表情とか、細やかなところがとても丁寧に描きこまれていて、ものすごく想像力をかきたてられるのです。しっかり楽しめますよ!!
表題作の「針と姫」がこのあたり、特に顕著です。
子供のころから女の子のための服を作りたくて、その仕事に憧れて自分のブランドを立ち上げた中嶋ですが、スランプになってしまい、洋裁教室の講師として働いています。そこに生徒としてやってきた浅野に、ある日、縋るようにお願いをされます。
「女性の服が着たいんです!」
……。
女性のために服を作っていた中嶋ですが、男でありながらあまりにもまっすぐに自分の服を称賛してくれて、あなたの作った服が着たいとド直球に口説かれ、彼になら望む服を作れるかも知れないと承諾します。
服を作るためには採寸が必要です。
この、セクシャルじゃないのに日常生活ではありえないほど近づく必要がある接触に萌えるんですよ……!!
採寸中にうっかりキスしちゃって、そのことに動転してしまう良い年した男、可愛すぎますよ!
他の2話も、近くにいすぎたせいでお互いの気持ちが把握しきれずにすれ違ったり、偶然出会っていつの間にか好きになったり、そんな珍しくもないシチュエーションから始まる恋なのですが、描き出されていく二人の距離感の奥行きがすごいのです。
お互いの気持ちにピントを合わせていくまでの過程。視界がぼやけてもどかしい感じから、徐々にクリアになっていくさまに、いつの間にか引きずり込まれていく感覚があります。出会ってから恋に落ちるまでの二人の関係性の変化の見せ方が、とても丁寧で美しい。
1話ずつ大事に読みたいBLです。
©タナカイッパチ/幻冬舎コミックス