2018.03.30
【日替わりレビュー:金曜日】『絶対にときめいてはいけない!』築島治
『絶対にときめいてはいけない!』
「少女マンガの鉄板ネタを全部やるつもりで描いてます。」
表紙折返しの作者コメントに書いてあるのが、この言葉。少女マンガの鉄板ネタと聞いて、あなたは何を想像するでしょうか?
先生と生徒の禁断の恋? イケメン二人が自分を取り合い? 色々な王道設定やお決まりのハプニングがありますが、本作は同い年の男の子とひとつ屋根の下暮らすことになるという、同居ものの王道を行きます。
親の再婚で「弟」ができると喜んでいた、さくら。けれど出逢った弟は、「同い年」の男の子・楓だった!ぶっきらぼうで無神経な態度の楓を、最初は苦手に感じていたけれど、困った時にいつも助けてくれる楓の優しさに気づいて……?
お約束がこれでもかと
ひとつ屋根の下系における鉄板ネタと言えば、そう、ラッキースケベですよ。本作、築島先生の宣言通り、わざとらしすぎるほどに鉄板ネタの数々をぶっ込んできております。まずは挨拶代わりの、「半裸状態の男子に遭遇」です。
いきなり半裸の男が現れて、パニックのヒロインは騒ぎ暴れ、相手にケガを負わせ、事実を知り「えー!!!?」となるところまでがお約束。
その後は逆に、風呂場で遭遇して裸を見られるという、これまたこすられまくったハプニングが起こります。うーん、この徹底ぶり、素晴らしい。
そこからも、学校で姉弟として一緒に暮らしていることがバレてひと騒ぎあったり、イケメンと同居しているがために色々情報を仕入れてこいと言われてしまったり、両親が不在となって家に二人きりになったり、無駄に身体接触しちゃったりと、どこかで見たことのある展開がこれでもかと詰め込まれてきます。
これまで何度となくドキドキワクワクさせられてきた、偉大なる王道展開を、この一作でこれでもかと味わうことができる。少女マンガ好きとして、これ以上嬉しいことはないですよね?
キャラクターはしっかり個性的
そんな中、オリジナリティを生み出す源泉となるのが、キャラクター描写でしょう。ヒロインのさくらは、威勢は良いけれど要領が悪くドジしがちな空回りガール。いつもエネルギッシュに行動するも、勢い余ってトラブルに陥りがちという、放っておけない危なっかしい女の子です。
一方弟の楓は口は悪いけれど、意外と細やかにフォローできる頼りがいのある男の子。失敗しがちなさくらを、しっかりと守ってくれるヒーローです。
距離が近いがためについついぶつかりがちな二人ですが、需要と供給が一致した良い組合せなんですよね。一巻ではまだ姉弟として関係を構築している状況で、これが恋に変わっていくのはこれから。
キャラクターに対する思い入れが強くなればなるほど、鉄板ネタも味わい深くなるはずで、熟成度が増す二巻以降の展開が非常に楽しみです。
一つ屋根の下モノがお好きな方は、チェックしないわけにはいかない一作ではないでしょうか。
©築島治/講談社