2018.04.06
【日替わりレビュー:金曜日】『あかいろ交差点』ひのなつ海
『あかいろ交差点』
ひのなつ海先生の作品『あかいろ交差点』が完結を迎えました。
青春のキラキラと可愛さに溢れた、ボーイ・ミーツ・ガールど真ん中の素敵な作品でした。
物語の主人公・蒔田恵太は、人懐っこい性格で誰とでも仲良くなれる男の子。しかしそんな彼にも、唯一苦手とする女の子が。
その子・大原たまきは、恵太とさほど接したことがないにも関わらず、あからさまに嫌な顔をしてくるのです。こともあろうに、2年のクラス替えでは彼女と同じクラスに。
どうして嫌われているのかわからないまま、その後も不思議と、事あるごとに鉢合わせする始末。
ある時、思い切ってその理由を尋ねてみると、彼女から返ってきたのは思わぬ返事でした……
「私と蒔田くん、赤い糸で繋がってるの!」
たまきが恵太を遠ざけていたのは、赤い糸が見えていたから。そう、あの“運命の赤い糸”です。
赤い糸が見えるたまきは、恵太と出会った時に自分の指から、恵太の指に糸が伸びていることに気づき、それに戸惑い努めて避けるようにしていたのです。もし万が一好きになってしまっても、それが自分の意志なのか、糸の意志なのかがわからないから……。
思ってもみない告白に戸惑う恵太でしたが、真面目なたまきが冗談を言うとも思えず、その言葉を信じることに。そして仲良くなることに後ろ向きな彼女の不安を取り払おうと、「絶対に好きになったりしないから友だちになろう」と約束するのでした。
赤い糸は単につながっているだけでなく、2人をくっつけようとする作用が働きます。そのため自然と席は近くになるし、偶然ばったり出会ったりなんてこともしばしば。なるべく距離取りたいたまきの想いとは裏腹に、2人の距離は、まず物理的に近くなっていきます。そうすればもう、人懐っこい恵太の間合い。
彼の仲良くなろうとする積極的なアプローチの前に、頑なだったたまきの態度が徐々に軟化していく様子が、この上なくニヤニヤできるのですよ。
クールな女の子が少しずつ崩されて、慌てふためいたり、赤面しちゃったり、そんな様子がめちゃくちゃ可愛い。
設定からも分かる通り、やがて2人は互いに惹かれていくことになるのですが、最初に交わした「好きにならない」という約束に悩まされることになります。その約束を超えて、どのような結末を迎えるのか。
出会いからはじまり、ラストまで一つ一つのエピソードが丁寧に描かれていて、どのエピソードもかけがえなく愛おしい。
結末が分かっていたって、何度だって読み返したくなるような、キラキラ輝く青春グラフィティです。
©ひのなつ海/一迅社