2018.04.29
【まとめ】女の子が一緒に暮らす生活にときめいちゃう! 女子ルームシェアマンガ
ルームシェア。ひとつの住居に他人同士が共有して住む。
これ、絶対ドラマ生まれるよね。だって家族じゃない、友人か赤の他人かが一緒に住むんだよ、特殊な人間関係すぎるでしょ。下宿や寮とは違う、独特な接触がある。
少し前のマンガだと『NANA』がこれにあたります。彼氏と住むために上京してきた小松奈々と、ミュージシャンを目指す大崎ナナ。新幹線の中で出会い、ルームシェアをはじめる……。
マンガが始まった2000年前後、若い人同士でルームシェアをするのは、ちょっとした憧れでした。かねてからもあったのでしょうけれども、一般化したのがこの頃。
それでもまだ、知らない人同士のルームシェアは珍しいケースでした。賃貸条件も、トラブル回避のために「ルームシェア禁止」としている場合が少なくありませんでした。
それに比べ今はというと、ルームシェアは当たり前のものになりました。友達同士のみならず、赤の他人でも一緒に暮らす人も増えました。マンションの一室だけでなく、戸建ての住宅を借りてそれぞれの部屋で、というパターンも。
ルームシェアは基本大学生や、若い独身の社会人。お金があれば一人暮らしするだろうし、若すぎると親がルームシェアを許してくれない。
ルームシェアには大人の青春が詰まっているのです。
マンガの世界では、ルームシェアというシチュエーション性からたくさんの物語が生まれています。特に女子同士のルームシェア作品は数多くのバリエーションがあり、キャラクターの関係性などの様々な魅力をじっくり味わえますので、一部をご紹介いたします。
『たくのみ。』
ここが私達の家だから、思う存分飲んでもいいんだよ
アニメ放送が開始した『たくのみ』は、女性専用シェアハウスを扱ったマンガです。
一戸建ての「ステラハウス春野」に住むのは、転職で上京してきた20歳の天月みちる、ウェディングプランナーで面倒見のいい緑川香枝27歳、元気いっぱいお酒大好きのアパレル店員・桐山直26歳、就活中の大学生で真面目な妹・桐山真21歳の4人。
彼女たちは、仕事から帰ってきたらリビングに集まり、お酒を楽しみます。宅呑みだから、好き勝手飲める。即寝られるもん。
一人酒もいいけれど、ルームシェア仲間と飲むのって魅力的です。近すぎず遠すぎないから。変に踏み込まない。変に無視しない。変に気を使わない。絶妙です。
宅呑み中は年齢様々でも、皆20歳になったばかりの時の新鮮な気持ちで、ガールズトークとほろ酔いを楽しめます。
『なり×ゆきリビング』
自然な距離感と大人の自由
ルームシェアできるということは、自分が信頼できる相手を選択して、自由に過ごすことができる、と言う証明でもあります。
これはタイトルの通り「よく知らん相手となりゆきで住むことになってしまった」というマンガ。会社の飲み会で酔った勢いで、「住ませてよー」「……いいよ」で決まってしまった。お酒の勢い、怖い!
とはいえ、実際勢いというのも大事なもんで。真面目できっちりした性格の佐藤雪と、雑でいい加減な性格の篠峰奏莉(しのみね・かなり)は共に暮らし始めると、性格の違い、価値観の違いに気付かされ、お互いを尊重するようになります。今まで気づかなかった新しい視点も生まれます。すると次第に一緒に過ごす時間は楽しくなり、生活は充実していきます。
親友二人というより、お一人様×2ではじまった生活。
「私達…人生で今が一番自由な時なのかもね」と2人で笑うシーン、とってもキラキラしています。自由を満喫できる仲間がいるのは、ルームシェアした大人の特権です。
それぞれ人間関係があるけれども、最終的には元々知らない同士だったはずのルームシェア仲間の元に必ず戻ってくる。同居人、という特別な関係性の描写を堪能できる作品です。
『木根さんの1人でキネマ』
バツイチが転がり込んできやがって!(でも案外楽しい)
木根さんはホラーやハードアクション映画大好き女子。独身。一人暮らし。三十ウン歳。あまりにマニアックな趣味嗜好ゆえに、本音を話せる友達がいなかった。
ところがそこに、会社の同期の水城さん(別に親しくない)が、離婚して転がり込んできた。理屈っぽい水城と、とにかく映画で発散したい木根の三十ウン歳二人暮らしが(望んでもないのに)始まってしまう……。
ルームシェア作品としては、結構年上の設定。大人の女性が2人で暮らすとこんなに本音が出るもんかいってくらい、ケンカするわ、けなすわのドタバタ騒ぎ。性格が真逆なのがうまく作用して、お互い諦めているというか。ただし2人とも妙に熱血なところがあるので、一緒に映画館に飛び出して行っちゃったりもする。
どっちかが結婚したらこの生活は終わるんだろうけど、いつしかお互いがいないと寂しくなっちゃってるのが、かわいらしい。腐れ縁って、いいもんですね。
『花もて語れ』
一緒に暮らす親友と、同じ人を好きになってしまいました
キャラクター皆が「朗読」に情熱を燃やす、熱血作品。ヒロインの朗読シーンは圧倒的なので必見です。
佐倉ハナは、朗読は得意だけど仕事やコミュニケーションは苦手な22歳。彼女が出会ったのは、トラウマが蓄積してしまって引きこもっていた26歳の佐々木満里子。ハナに出会って、満里子は外に出るようになる。
満里子とハナはお互いが最高の親友で、好きでしかたない。だからルームシェア生活は楽しいことこの上ない。ところが、2人の想い人が同じ人だったからさあ大変。正直な2人は、大好きな友人同士、自分の心の内をお互いに打ち明けます。
真逆な性格が多いルームシェアものに対して、こちらはものすごく似た者同士。だからよりによって、恋愛でぶつかってしまう。また、どちらも朗読好きなのだけれども、読みのスタイルが違う。この差異で表現力が変わってきて、心が微妙に擦れてしまう。
それでも仲良く有りたいという2人の関係が、ぐっとくる作品です。苦しい思いもぶつけあえるから、心から幸せだと思えるようになるものです。
『2DK、Gペン、目覚まし時計』
なんでだらしないあの子のことが気にかかっちゃうんだろう
バリバリ働くデキる女子・香月奈々美。彼女のルームシェア相手は、マンガ家志望の、だらしなくてグダグダしていて、普段なにやっているのかよくわからん女子・藤村かえで。子供っぽい彼女は、まるで子犬のように奈々美になついている。
世話を焼きたくなってしまう奈々美と、世話されたくなっちゃうかえでの、うまくハマった生活の様子がとっても楽しい作品。奈々美の会社の人や、かえでのライバル的存在のオタサーの姫、奈々美をたらしこもうとする女子など様々な人物が登場。
それぞれとやりとりを繰り返せば繰り返すほど、ルームシェアの相手(かえで)が気になって仕方がない。うん、この気持ちは、恋でしょう。恋だよ。
百合姫コミックスから出た人気作。ルームシェアから恋が生まれる過程が、じーーーっくり時間をかけて描かれるので、共感度合いが半端じゃないです。初期は、恋愛展開ないんじゃないかと思っていたほどで、6巻かけて、気持ちに気づいてようやく向き合えた、くらいの段階です。
ルームシェアから恋愛、ありでしょー、と読者的に思ってしまうものの、逆に近すぎるゆえに適度な距離感を保とうとするのがリアル。友情なのかなんなのかわからないさじ加減から始まるのが、ルームシェアものの魅力です。
『明るい記憶喪失』
記憶喪失の恋人がやたら嬉しそうな件
記憶喪失といえば、辛い話が多いもの。でもこの作品はタイトルどおり「明るい記憶喪失」。
アリサとマリは同居人であり、恋人だった。しかし、アリサは記憶喪失になりここ数年の記憶をなくしてしまった。一緒に暮らしていたマリとしては、「女の恋人だなんて…信じられないだろうし…一体どう説明すれば」と悩みます。ところが目覚めたアリサは、マリのことが超絶好みだったため、「どっどちらさまです?か?」と超にやけ顔。「一緒に住んでるの」「恋人……なの」とマリが言った途端、「うそうそ え゙ーっ ヤバイーっ」と大喜び。
かくして、恋人だったことは覚えてないのは残念だけど、無自覚女子アリサと生真面目女子マリは改めて一緒に暮らすことになるのでした。恋人として、でいいのかどうなのか。
ルームシェアと同棲の中間みたいな作品です。同棲時代は色々コトを致していた関係のようですが、そのへんの記憶がストーンとないので、恋人になりたてのような初々しい関係が見られます。なのでエッチシーンはないです。
冷静に考えるとやっぱり記憶が消えているのだからちょっと寂しいはずの2人暮らしだけど、2人は前だけ見ています。「幸せだしまぁいいか!!」
『ストレッチ』
同居人と身も心もほぐしましょう
天然でマイペースな蘭と、普段ツンツンしているけど寂しがりやな慧子(けいこ)。2人は仕事から帰ってくると、軽口を叩き合うほどの仲良し。一緒にご飯を食べたり、お酒を飲んだりと、家族のように親しく暮らしています。
2人が頻繁にやっているのが、ストレッチ。身体を伸ばし、やわらげ、ほぐします。身体が落ち着くにつれ、心も落ち着いてくる。ストレッチを軸に描くルームシェアマンガですが、最大のポイントは、ルームシェアだと心を預けられる相手がいる、という部分。中でも2人組ストレッチは、相手への信頼が重要で、身体にふれるスキンシップのおかげもあり、描かれる安心感が半端じゃない。
東日本大震災をほのめかすシーンにビクリとさせられる。この時期、みんな緊迫していたと思うんだ。一番欲しかったのは安寧だったと思うんだ。だからこそ、ルームシェア相手と一緒にストレッチ。
ラストまで読むと、この2人の関係は非常に絶妙なバランスだとわかるので、オムニバスではありますが一気に読むことをおすすめします。
『織子とナッツン』
デコボココンビの2人ぐらし
『でこぼこガーリッシュ』の続編として描かれた作品ですが、本作から読んでも大丈夫。
めちゃくちゃ背が高くてイケメンだから男女問わずモテモテ、でもなんかちょっとずれてる織子。とってもちっちゃくて元気いっぱい、子供によく間違われるナッツン。仲の良かった2人がいい物件を見つけて、2人暮らしを開始します。
以前からの友達と一緒に暮らす、というのはルームシェアの理想形と言えるものの、思いもしなかった相手の欠点に気づいたりもするわけで。
例えば食事。料理が超絶得意なナッツンですが、経済観念がまるでダメなので、あっという間に食費が底をつく。じゃあ私が、と織子が作ると、下手ではないけど感覚がおかしいのか、やたら分量がちぐはぐに。その一方で、ナッツンは子供っぽいところを、織子はイケメンなところを生かして、2人の生活をうまく乗り切ったりする(何をするかは読んでね)。
ルームシェア生活は、足を引っ張ることもあれば、補い合うこともある。だからこそ楽しい、というのを描いた作品。2人を遠くから見守りたくなります。
『オタシェア!~エロゲ女子×腐女子×ルームシェア~』
実話だからこそ憧れてしまうオタクルームシェア
ショタ物大好きな腐女子作者・小針タキ先生が、ロリ系エロゲ大好き司書兼ライターのさよりさんと暮らすことになった様子を描いたエッセイコミックです。
実話のルームシェアを描いているだけあって、リアル。だからこそすごい羨ましく見える。
最初は作者も、趣味があるからこそ「押し付け合い」「カップリング争い」などがあるんじゃないかと危惧しますが、「一緒に暮らせたら楽しいだろうなあ」という思いがあったから(あと利害関係が一致したから)、あっさり2人の生活がはじまります。
ところで、属性の違うオタクが一緒に暮らすには、どうしたらいいか。
「平和に暮らす秘訣は、相手の話をほどほどに聞き流すこと」と「相手の地雷を居間に設置しないこと」。なるほど……。
一方でルームシェアをしていて良かったと思う点は、「コ●ケで収穫物の送料が割り勘できること」。そして、オタ話ができること。
うらやましい。
なお節約のため、ご飯は一緒に食べる、一緒に寝る、そして一緒に入浴……えっ、それ他のマンガでもなかなか見ない。
何かあってもさよりさん側が、「まぁ、いいか」で流す部分が印象的です。こういうのが本当の意味で、うまくやる秘訣なんでしょう。これからルームシェアする人にも、ルームシェア女子の生活にときめく人にも、オススメです。
女子ルームシェアマンガに欠かせないもの
女の子2人のルームシェアマンガは数多くありますが、やはり魅力ポイントは共通しています。
・2人の性格のコントラストが如実に出る
・最初は気を遣っていたのにどんどん心を許していく様子が見える
・ルームシェアでしか見られない特別な距離感が味わえる
・大学生や社会人の様子を内側からのぞける
「ずぼらな子と真面目な子」、という構図は以前からも非常に多く、2000年『ニアアンダーセブン』(安倍吉俊,gK/角川書店)、2008年『ふら・ふろ』(カネコマサル/芳文社)、2011年『明日からがんばる!』(もりちか/アスキー・メディアワークス)などでも見られます。
2人で長いこと過ごすとなると、漫才のようなボケツッコミが成立した方が、お互い楽になっていくんでしょう。「ほんとしょうがないなあ」みたいに双方しているうちに、「照れ屋」とか「怖がり」とか、知らなかった一面が見えてくるのもまたいい。ここで真面目な方の子がほだされて、リビングで寝っ転がるようになったり、甘えるようになったりする変化があるとなおキュンとくる。
多分、読んでいて感情移入するのは、真面目な子側でしょう。他人と暮らすというのは、最初はどうしても精神が張り詰めます。相手が勝手な行動をすると、ちょっとピリピリする。だからこそ、片方が同居人に癒やされている状態は、読んでいる側も気が緩む。
『たくのみ。』などは、明確に主人公が後輩ポジションで設定されているので、先輩たちのワイワイに引っ張られて幸せになっていくのがよく伝わります。
同居人というよりは居候な『小林さんちのメイドラゴン』(クール教信者/双葉社)や、同居人高校生3人のトリオコントが楽しい『バターチーズガール』(安倍川/KADOKAWA)など、女の子ルームシェアものはまだまだあります。
ルームシェアでしか見られない特別な関係は、もしかしたら今後「ルームシェアもの」と構えなくても、当たり前な生活形態の一つとして描かれるのかもしれませんね。
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