2018.06.21
【日替わりレビュー:木曜日】『なかよし番外地』中川ホメオパシー
『なかよし番外地』
強面ふたりの“なかよし”で平和な日常
ペンギンズというお笑いコンビがいる。兄貴役の吉間と、彼を慕う舎弟役のノブオの掛け合い漫才で一気にテレビに出るようになった。ネタはもちろん面白いのだが、兄貴のことを好きすぎるノブオと、そんなノブオの情熱を一身にうける吉間の関係性は、設定ではあるが「良さ」がある。強面の二人の、平和なやりとり。そのギャップが癖になる。
そして、ペンギンズを好きな人には、たぶん素質があるので、ぜひこちらのマンガも読んでほしい。
中川ホメオパシー先生の『なかよし番外地』である。『抱かれたい道場』や『干支天使チアラット』などシュールギャグ界の鬼才である先生の、BL作品、である。
当作品は、公式サイト「聖☆オーラル学園」や「ヤングチャンピオン」に掲載されたものから、BL誌「canna」で連載したもの、そして書き下ろしが一冊にまとめられている。初期作品から最新作までを一気に読むことができる貴重な作品だ。
実際に読んでみたら、中川ホメオパシー先生がBLを描く、そんなの絶対面白いに決まってるよね、という期待をはるかに上回る「良さ」があった。
主人公は、どう考えてもカタギではない強面の兄貴と、パンチパーマでど天然の辰。おおまかなあらすじは、この舎弟コンビが、一緒に遊んだり、八百屋に行ったり、歯医者に付き添ったり、たまに知らない男に嫉妬したり、愛を確かめ合ったりする……そういう話だ。
なんの仕事をしているかもわからないし、どういう経緯で知り合ったのかもわからない。ただただ二人の平凡な日常が、キュートで甘いセリフと圧倒的な顔芸で彩られている。1ページ完結だが、キャラが渋滞しているので情報量が多い。最初は読むのにカロリーを使いすぎて思考が止まってしまう可能性もある。
たとえば…
鶏の“肉垂”を“肉吸い(という妖怪的なもの)”に勘違いした辰は、「こわいよ兄貴…」と震えながら兄貴に抱きつく。そんな辰に「大丈夫…俺がそばにいるよ…」と内心つぶやきながらぎゅっと抱きしめる兄貴の回がある。
文字だけ見ればちょっと頭の弱い受けが、攻めの兄貴に甘えている萌えシーンにようにも思えるのだが、作画がアウトレイジなので全く話が頭に入ってこない。
とにかく、明らかにカタギではない二人だが、特に抗争やトラブルに巻き込まれるようなこともなく、めちゃくちゃ長生きしそうな平和な日々を送っている。ピュアで危なっかしい辰と、それを大きな器で受け入れる兄貴、そんな二人のなにかありそうで何もない日常。気がついたら癖になっている。慣れると、ずっと読んでいたくなる。
そうそう、あとは、本書内にあるQRコードの読み取りも忘れずに。
©中川ホメオパシー/KADOKAWA