2018.10.01
【日替わりレビュー:月曜日】『わななく牙のダリア』高永ひなこ
『わななく牙のダリア』
異種間恋愛なファンタジーBLです。
カップリングは、
2足歩行の獣人(軍人)×王子
となっております。
下剋上の身分差ラブですね。美味しいところをまとめて詰め込みましたと言わんばかりの舞台設定でございます。
獣人は頭部がオオカミで尻尾つきで2足歩行です。常にその姿で、最近はやりの変身などはしません。常に獣ベースの姿です。だからそうつまり、BL的ギシギシシーンでも獣姿のままとなっております! 禁断の関係っぽくてたまらん背徳感ですね!!
獣人であるトラヴィスは、人間の国王が治める国で軍人として王族に仕えていたのですが、ある時トラヴィスの上司がクーデターをたくらみます。トラヴィスは王子を自分のものにしたいあまり、詳細を確認しないままホイホイその思惑に乗っかって、無事に立派な反逆者に。
殺すつもりのなかった国王夫妻はあっさり殺され、モノにするはずだった王子まで殺されそうになるというトラヴィスのツメの甘さに、後頭部をはたき飛ばしたくなりましたね。こいつもしかして強いだけの脳筋なんでは疑惑が持ち上がる勢いです。
この待てがきかなさそうな獣人トラヴィス、思いあまって牢獄につながれた王子を無理やり押し倒してしまいます。冷静に考えて、ちょっと自分の望みと欲望のままに生きすぎだと思います。
その後、これまでの失点を挽回すべく王子救命に奔走し、なんとか王子の叔父の居城まで逃がしますが──今度は自分が囚われの身となります。ものすごい行き当たりばったり感です。軍の上層部がこれで本当にいいのか!? と思いますが、そこは王子が頑張ります。身体を張って叔父を説得し、どうにか自分の元護衛の獣人の身柄を取り戻します。
王子との身分差を埋めたいあまり国に反逆するというアグレッシブさを持つ、一見冷静でかっこいい獣人攻ですが、よくよく読むとものすごい猪突猛進であることがお分かりいただけるのではないでしょうか。
きっとこの先、王子はとても苦労すると思いますが、二人で艱難辛苦を乗り越え幸せになっていただきたいと思います。
©高永ひなこ/リブレ出版