2018.11.14
【日替わりレビュー:水曜日】『かみのこののこ』梅ちゃづけ
『かみのこののこ』
神様を子育てしたら、あの娘と仲良くなれますか?
子育てストーリーとラブコメディを融合したこの作品。幼児たちはめちゃくちゃキュートで、クラスメイトもときめくほどかわいい。表紙のどれかのキャラにキュンと来たら、文句なしにオススメ。
高校生男子・神白和佐(かみしろ・かずさ)の元に転がり込んできたのは、保育園に通う女児。名前はののこ。彼女は自分を神様だと言うが、和佐のネクタイで鼻をかむわ、寝ているところで大暴れするわで、どこからどうみても普通の子供。
全く信じていなかったが、ののこは証明するために力を発揮。それは人と「えん」を結ぶというものだった。半信半疑だった和佐。しかし彼の目の前に、気になっていたクラスメイトの椎名夏芽(しいな・なつめ)が現れる。ののかは、本当に縁結びの力を持っているのか……?
このマンガのキモは、ののかの力が弱いため人と人を会わせるくらいしかできない、というところだ。「縁を結ぶ」と言われると、恋愛なりなんなりが成就するように考えてしまうもの。しかし「会う」以外は自分で努力しなければいけない。ここが和佐の成長物語につながっていく。
椎名ととりあえず知り合った後、彼女の年下の双子の面倒を和佐が見ることに。誠意を尽くして子どもたちを見守ることで、椎名との関係は密なものになっていく。縁が接触してつながったら、結び目を太くするのは自分自身だ。
椎名の双子とののこが、何をするかわからない手のかかる子供として徹底して描かれているのもいい。特にののこは、神様とはいえ精神年齢は明らかに幼児。彼女の元気を持て余しつつも、自分が親になって育てる、と和佐自身が決断したのが重要なポイントだ。
椎名は妹弟を世話できない。「あたしだってまだ子供なのに…お母さんがいなきゃ何もできないよ」。
和佐は母親が何一つ自分の世話をしてくれず、大人にならざるを得なかった。まだ子供でもあり、すでに大人びた部分もある和佐。椎名の気持ちも、ののこの気持ちもわかる立場として、子育てに奔走しはじめる。
登場人物にはヒロインになりそうなキャラクターがまだ他にも出てくる。ハーレムものになるのかまだわからないが、少なくともののこの力が弱い限り、簡単にベタボレになるような子は出てこなさそう。
親役としての子育て、高校生なりの成長、そして頑張らないと育たないラブコメのさじ加減が絶妙なマンガだ。
©梅ちゃづけ/KADOKAWA