2018.11.25
【日替わりレビュー:日曜日】『めんけぇなぁ えみちゃん』沼ちよ子
『めんけぇなぁ えみちゃん』
今回ご紹介する『めんけぇなぁ えみちゃん』は、「Webコミック ぜにょん」で連載中の作品。
本作は秋田の山の少し奥で、おばあちゃんと一緒に暮らす女子中学生・えみちゃんの穏やかな日常を描いているのですが、この主人公のえみちゃんが、タイトル通り凄まじくめんこい(可愛い)…!
えみちゃんは、秋田の自然や風習が大好きで、そして大のおばあちゃんっ子。彼女の大きな魅力の1つが秋田弁なのですが、普通に聞いたらなんて言ってるか分からない部分もありそうな程にコテコテで、これがまた可愛い! おばあちゃんの方言がうつったわけですが、友達からイマドキそんな言い方しないよ〜って言われても、おばあちゃんへの愛でいっぱいのえみちゃんはもちろん気にしません。
ご近所さんや学校の友人達とのやりとりも、自然体でのびのびとしていてほんとにめんこい。男鹿の海水浴場で泳いだり花火大会を楽しむカットなどでは、爽やかな青春の様子が、ノスタルジーをちくちく刺激してきて田舎に帰りたくなってきます。
もう何か家族関係であったり友情における過激なドラマなんかは全く必要ないので、ぜひこのまま優しく穏やかな世界をずっと展開していってほしい、と心から思います。
それから要所で、冗長にならない程度のちょうど良いバランスを保ちながら、実在する秋田の風景や、特産物、料理などの紹介も挟まれているのもグッド。県外出身の私なんかは秋田に旅行してみたいなって思いますし、秋田出身の方にとってはあるあるネタとしても楽しめる要素が散りばめられているのではないでしょうか。
作者の沼ちよ子先生は、なんと本作が初連載。そうとは思えない程に表現力豊かで、登場人物たちを魅力的に描かれています。(本作と並行して『もういちどスポットライト』という作品も連載中されており、こちらでは高校演劇部の青春ストーリーを展開されてます。)
本作における「可愛さ」については、全くあざとくないとは言えませんが、一切嫌みがないのが素晴らしい。バランス感覚に優れてらっしゃるのだろうと感じます。
まさに、めんこい! の一言に尽きる『めんけぇなぁ えみちゃん』。優しく温かな癒やしで満ちていますので、日々の生活に疲れたな…って方にはぜひおすすめです!
©沼ちよ子/徳間書店