2019.02.17
【日替わりレビュー:日曜日】『一日三食絶対食べたい』久野田ショウ
『一日三食絶対食べたい』
先日2月13日に記念すべき第1巻が発売された、『一日三食絶対食べたい』をピックアップ。本作は元々「アフタヌーン」で読み切りとして掲載されましたが、反響が大きく「コミックDAYS」にて連載されている作品です。
環境問題が悪化した結果、大洪水が発生し、あらゆる文明は水没。その後氷河期を迎え滅亡寸前にまで至った世界。生き残った少数の人類は、高層建築物をなんとか居住地として、自給自足の生活をしていました。
そんなみんな毎日が精一杯の社会をベースに、スポットライトが当たったのは、自分の長所は「1日3食絶対食べること」でその3食を食べ続けるために、働くのは本当にイヤだけど働くしかないからきたと、お仕事の面接でそのまま言ってしまう、元ニートで泣き虫なユキ。
自他共に認めるダメ人間な彼が一念発起したのは、リッカという同居している10歳の少女のためでした。2人は世の中に異変が起き始めた大混乱の中で彼女が親とはぐれていたところに出会い、お互い身寄りが無いこともありそのまま家族になったという、共にかけがえのない相手です。
しかし、病弱なリッカはなかなか栄養のとれない日々に、やせ細っていくばかり。彼女に栄養たっぷりのおいしいご飯を食べさせてあげたいと、ユキは嫌々だけどぐっと頑張ってお仕事に励んでいくのです──というのが冒頭のあらすじ。
もうなんと言っても、たった一人の家族であるユキを想う、リッカちゃんの健気で可愛らしいこと……。こんな良い子のためならと、死と隣り合わせの屋外での仕事も頑張ろうとするユキの気持ちも分かります。
また本作はこの2人の物語をベースとしつつも、並行して、ユキの仕事上のパートナーである鬼畜上司スギタさんや、発掘された氷河期以前の遺物を再実用化していく研究チームのスズシロさんなど、この環境下において様々な立場や考え方で働いている仕事人たちの、人となりやスタンスなども丁寧にすくいあげているのもポイント。この厳しい現実をどう生き抜いているのか、色んな目線で描かれていくことで、ストーリーの深みや味わいも引き立てられていきます。
生きることも難しい世の中で、家族や同僚との、食事や仕事という当たり前だったけど大切な人の営みを、とても優しく温もりいっぱいに描いた本作。心に響くヒューマンドラマでありながら、合間に挟まれるコメディタッチもゆるくクスっと笑えるので、ぜひチェックしてみてくださいね。
©久野田ショウ/講談社