2019.03.16
「ゾンビ+アイドル+佐賀」な人気アニメの、がばいコミカライズ!『ゾンビランドサガ』空路恵【おすすめ漫画】
『ゾンビランドサガ』
主人公・源さくらは不運体質な女子高生。あるきっかけからキラキラ輝く新しい自分に変わりたいと願い、行動を起こした矢先いきなり車にひかれて事故死! そこから何の因果かゾンビとして復活し、佐賀県を盛り上げるご当地アイドルグループの一員として活動する使命を背負ってしまう。なんでだ!?
さくらと肩を並べるメンバーは、平成アイドル・昭和アイドル・天才子役・暴走族特攻隊長・幕末の花魁・すべてが謎の女……と時代を越えて集められた伝説持ちのゾンビ娘たち。強烈な個性がぶつかりあう中、一人だけ記憶喪失に陥っているさくらは混乱しつつも、文字通り新しい自分をめざしてアイドル活動に励んでいく……。
事前の宣伝でゾンビ物らしいという情報だけが流れたのち、ふたをあければ「ゾンビ」+「アイドル」+「地域振興」という超ジャンル合体で視聴者に衝撃を与えたテレビアニメ『ゾンビランドサガ』。
ハイテンポなコメディ演出や多彩な劇中歌、そしてゾンビだからこそ描ける過去から未来への“生き直し”をとらえた切実な人生ドラマをアイドルアニメという器へきれいに盛りつける離れわざで、2018年秋アニメ最大のダークホースとして話題をかっさらったのは記憶に新しい。
今回取り上げるのは、その『ゾンビランドサガ』のコミカライズだ。アニメ版の放送開始とほぼ同時期の昨年10月から「サイコミ」Webサイトとアプリで連載の配信が始まり、今年2月には単行本第1巻が発売された。
コミカライズは第3話まででアニメ版第1話の筋をなぞったのち、第4話の途中から独自路線へ突入。さくらたち「フランシュシュ」のメンバーを見守る謎の敏腕プロデューサー・巽幸太郎の視点がメインとなり、彼が企業タイアップ企画を思いつく様子や営業に出向く姿を中心に描いていくこととなる。
アニメにも登場して知名度がガン上がりした佐賀・福岡の鳥料理専門店「ドライブイン鳥」を訪ねて鶏肉や焼き飯に舌鼓を打ち。
佐賀県最北端の呼子でイカやサザエなど海産観光資源のポテンシャルを感じ取り。
有名うどんチェーン「釜揚げ 牧のうどん」のボリューミーな肉ゴボウうどんで腹を満たし……。
どの食べ物についても巽が大量のモノローグでじっくりたっぷりと説明をほどこし、読者の食欲を刺激するさまはまるでグルメ漫画みたいな……いや、みたいなどころかこれ完全にグルメ漫画だーーッッ!?
そうくる発想はなかったな~、というズラし感はある意味アニメ本編の初見時にゾンビアイドルという設定で「俺たちは一体なにを見せられているんだ!?」と面食らったあの不可思議な体感の再現ではある。そういう意味においての「『ゾンビランドサガ』のコミカライズ」たりえているのが本作のおもしろみかもしれない。
全体的にいえばこのコミカライズは巽幸太郎の視点で『ゾンビランドサガ』のすきまを埋めていく舞台裏、つまり本編に対してオルタナティブな番外編であり、アニメ各話を既に知っている視聴者がむしろ新鮮さを得られる内容になっている(逆にアニメ未見者に向けてはダイジェストを挟み、さくらたちの活躍が気になる人は本編の視聴よろしくね~と誘導しているのがいさぎよい)。
なお、当レビュー執筆時の最新話ではメンバー間の相性をふまえて巽が曲作りに苦心するエピソードが進んでおり、アニメではちらちら垣間見せるくらいだった彼の一面をうまく掬い上げている。
いやー、まさか名曲「アツクナレ」の誕生にアツアツの湯豆腐が貢献していたとは……ってやっぱりグルメ漫画だこれ!
©広報広聴課ゾンビ係, 空路恵/講談社