2019.04.11
巻を追うごとにおもしろさが加速する人生リセットコメディ!『凪のお暇』コナリミサト【おすすめ漫画】
『凪のお暇』
主人公はちょっと「嫌なやつ」
空気を読みすぎる女子力高いOL大島凪は、ある日彼氏の一言に過呼吸を起こしたことをきっかけに、会社もスマホもストレートヘアーもすべて手放し人生をリセットする。天パで家賃3万のぼろアパートで暮らす凪の物語、『凪のお暇』の最新刊が先日発売された。
それまで隣人のゴンさんに恋をして精神がボロボロになった凪など、リセットしたあともいまいち「自由」にはなりきれていなかった彼女だが、そういった失敗を重ねながら少しずつ精神的にタフになっていく。
正直、私はずっと凪のことをいまいち好きになれなかった。どちらかというと、凪のことを好きなのに素直になれない慎二の可愛さに惹かれて読んでいた節がある。それはなぜか、いまいち言語化できていない部分があった。
その「なんかあまり好きになれない」部分が一気に露わになったのが、最新刊である第5巻だ。
貯金を切り崩していた彼女は、ある日たまたま知り合ったスナックのママから「ボーイ」として手伝ってくれないか、とお願いされる。心機一転、近所のスナックでバイトをし始める凪。そして、彼女はそこで「自分の嫌なところ」と対面するのだ。
空気を読んで相槌を打って「聞き上手で優しい」ように見えていた彼女は、冷静に振り返れば、ただ「他人に興味がない」だけであった。そのくせ心のどこかで「自分には興味をもってほしい」と思っている。
おまけに自分の「正義」だと思っている部分は、意外と「この人の方が格上」とか「このような言い方をするやつは悪いやつ」のような偏見によって支えられている。読みながら、これか、と思った。それまで彼女が「悲劇のヒロイン」のように描かれる場面を見るたびに、少しの違和感があった。だって、彼女も「そこそこ嫌なやつ」だったのだ。
でも、こういういやらしさみたいなものは、多くの人がもっているものなわけで、とても等身大な主人公だとも言える。
そんな、凪がちょっと嫌なやつだったことが明るみになったところで、非の打ち所がない「悲劇のヒロイン的なライバル」が登場したりして、より物語の面白さが加速する神巻だった。
©コナリミサト/秋田書店