2019.05.02

【インタビュー】『アラタプライマル』及川大輔・村瀬克俊 ×「古生物学者」芝原暁彦 特別対談!

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Webマンガ誌「少年ジャンプ+」で絶賛連載中の『アラタプライマル』

とある街の一部が突如として原始時代にタイムトリップし、太古の自然や凶暴な古生物たちが主人公のアラタを含む漂流者たちに牙を剥くという、一風変わった設定のサバイバルミステリー作品です。

作画は『カラダ探し』などでおなじみの村瀬克俊先生、原作は村瀬先生と親交も深い新鋭作家の及川大輔先生。連載が始まるやいなや話題沸騰中となっている本作品の、単行本第1巻が5月2日に発売となりました。

単行本第1巻書影

これを記念して、今回は両先生に加え、古生物の生態などに詳しい古生物学者の芝原暁彦先生の3人による異色の特別対談を行いました!

左:及川先生 中央:芝原先生 右:村瀬先生

はたして、現役の古生物学者は『アラタプライマル』の不思議な世界をどう捉えるのか? マンガ家たちのロマン溢れる妄想学者としての見識(リアリティ)がぶつかり合う、スペシャルトークをお届けします!

村瀬克俊

神奈川県出身。週刊少年ジャンプにて『K.O.SEN』『DOIS SOL』、週刊ヤングジャンプにて『モングレル』、少年ジャンプ+にて『カラダ探し』『カラダ探し解』を連載。『カラダ探し』シリーズは累計250万部を突破するヒット作になる。2019年より『アラタプライマル』連載開始。

及川大輔

岩手県出身。2007年、新人漫画家の登竜門である手塚賞の準入選を受賞。『トリコ』のアシスタントを経て、2019年少年ジャンプ+の『アラタプライマル』にて原作者として連載デビュー。

芝原暁彦

福井県出身の古生物学者。博士(理学)。地球科学可視化技術研究所 所属。18歳から恐竜の化石発掘調査などに携わり、2007年に筑波大学生命環境科学研究科で環境学や古生物学の研究で博士号を取得。『地質学でわかる! 恐竜と化石が教えてくれる世界の成り立ち』『世界の恐竜MAP 驚異の古生物をさがせ!』など執筆・監修書籍多数。

(取材・文:紳さん / 編集:八木光平

マンガ家と古生物学者の出会い、つくばの研究室にて

村瀬克俊先生(以下、村瀬):本日はよろしくお願いします。

及川大輔先生(以下、及川):よろしくお願いします。 あ、(研究室に置いてあった本を見て)この本、マンガの資料として買いました!(『ああ、愛しき古生物たち ― 無念にも滅びてしまった彼ら』

『ああ、愛しき古生物たち ― 無念にも滅びてしまった彼ら』土屋健著、芝原暁彦監修、ACTOW絵(©笠倉出版社,2018年)

芝原暁彦先生(以下、芝原):ありがとうございます。色んな本を監修しておりまして、こっちの本には『アラタプライマル』に登場する巨大哺乳類も多数登場しますよ!

及川:早速、買って帰ります(笑)

芝原:こういう古生物の研究ってそんなにお金にならないと思われがちですよね? 実は僕は今、研究を続けながらベンチャー企業を立ち上げてCEOとしても活動しているんですが、模型を作ったり展示用の装置を作ったり、テレビ番組用にモデリングのデータを提供したり、必死で研究費を稼いでいるんですよ

村瀬:研究室に模型がたくさんありますが、ご自身で作られるのですが?

芝原:今はビジネスパートナーを見つけて模型の制作を依頼していますが、自分で作ることもありますね。ちなみにモデリングの技術は独学で学びました。

村瀬:研究を続けながら本を出版したり、模型を作ったり、会社の経営まで……すごいですね。

芝原:いや、プロのマンガ家の方がすごいですよ! ちなみに僕は『カラダ探し』をめちゃくちゃ読んでて、個人的に村瀬先生のファンなんです。『カラダ探し』はすでに5周ぐらいしてると思います(笑) キャラクターの感情が非常にリアルに描かれていて、ものすごく没頭して読んでいました。

村瀬:なんと(笑) ありがとうございます、マンガ家にとっては最高の褒め言葉です!

及川:村瀬先生の描く人間は、本当に良いですよね〜。

芝原:本日の対談、ずっと楽しみにしておりました。よろしくお願いします!

「本当の姿は誰にもわからない」 謎多き太古の生物をマンガで描く

──まずはマンガ家の両先生にお聞きしたいのですが、『アラタプライマル』の題材として「原始時代へのタイムトリップ」を選んだ理由はなんでしょうか?

村瀬:きっかけは、原作の及川先生のなにげない一言だったんですよ。及川先生は僕が『カラダ探し』を連載していた時のエースアシスタントだったんですけど、すごく仲の良いマンガ仲間という感じで。マンガについても日々、色んなことを話し合う仲なんです。

そしてありがたいことに『カラダ探し』がすごい好評だったので、集英社からも「そろそろ新連載を」という話が出ていたんです。そんなある日、及川先生が僕のところに来て「マンモスとか描きたくない?」って(笑)

及川:そうなんです(笑) フワッとなんですけど、原始の世界を描いてみたいって願望があって。

もともと映画の『ジュラシックパーク』とか見ててすごくいいなって思ってたんですけど、恐竜とか太古の生き物って自由に描きやすいんじゃないかな、と。骨格はわかっていたとしても、実際にその姿を見た人は誰もいない。そういうものをマンガに登場させたら面白いだろうなって。

村瀬:僕も虫とか動物とか描いたことないし、古生物の姿を自由に描けるって考えたら、ワクワクしちゃって。それが『アラタプライマル』を描くきっかけになったんです。

及川:ただ、マンモスとか恐竜と戦うマンガはこれまでにもあったので、4万年〜5万年前ぐらいの世界にタイムトリップしたという設定にしました。この時代だと恐竜は絶滅していますね。話のメインはサバイバルなので、古生物とのバトルはほどほどに、という感じで。

主人公の新太たちは突如原始の時代にタイムトリップしてしまう

芝原:なるほど。僕もこの対談の話をいただいて『アラタプライマル』を拝見させていただきました。鳥とか虫とか、すごく色んな年代、地域の生物が登場する印象でしたね。

村瀬:とにかく読者に楽しんで欲しいので、「怖い」とか「すごい」って思わせるようなビジュアルの生物を描いてるんですけど、やっぱり不安になる部分もあるんですよ。「この生物は共存していた時代が違うんじゃないか?」とか、「こんな大きさじゃない、こんな姿じゃない」とか、読者にツッコまれたらどうしようと……。

及川:ぶっちゃけ、本当に真実がわからないことなので。わからないなら(マンガに)出しちゃおうっていう想いはありますが(笑)。

一同:(笑)

村瀬:だから今回、古生物学者の方からお話が聞けるということで嬉しくて。「この時代にこんな生物はいないのかな……でも、いる可能性もあるのかな?」とか、そういう話が聞けたら最高なんですが……。

芝原:少しずるいかもしれないですけど、「この時代にこんな生物はいない」ってツッコまれたとしても「その年代の地層から発掘されていない化石はまだまだあり、近しい種類の古生物がこの時代にもいた」っていう設定にすれば、SF的には説得力のある話も作れると思います。実際、これからも新しい古生物が発見される可能性は十分にあります

村瀬うおおおおお!? キター!! 可能性があるというだけでも嬉しいです。

芝原:生物が化石になるという現象は、ものすごく低い確率でしか起こらないことなんです。上アゴの一部の骨しか見つかっていないとか、爪しか見つかっていないとか、そんな生物がゴロゴロいる。実際にどんな大きさで、どんな姿をしていたかを復元するしかない。誰にもわからないことなんですよね。

村瀬:よっしゃー! これからも自由に描ける!(笑)

及川:いきなりいい話が聞けた……。

序盤でやられたアイツは本当は最強生物!? 古生物学者の主張

──原始の昆虫、古代ワニ、巨大な鳥、サーベルタイガー……これまでにも色んな古生物がマンガに登場しましたが、古生物学者として気になったことはありますか?

芝原:うーん、『アラタプライマル』の第4話で登場する鳥がいるじゃないですか。おそらく、フォルスラコスがモデルですよね? 恐鳥類(きょうちょうるい)といわれる。

第4話で登場する恐鳥類・ティタニス

及川:はい。あれは一応、ティタニス(フォルスラコスが進化したという説の鳥)をイメージして描かれてます。

芝原:なるほど。その鳥が第5話でスミロドン(サーベルタイガー)にアッサリと倒されてしまうんですが、あの展開にはものすごく驚きましたね。我々にとって恐鳥は最強クラスの生物なので……。

村瀬:……! やはり、見るところが違う……!

芝原:あんな強い生物をヤラレ役として登場させてしまうなんて、すごくもったいないと思ったんですけど……。恐竜が絶滅した後は恐鳥類が生態系のほぼトップに立っていたという説もあります。現代の鳥類で大型のものだとヒクイドリがいますが、前蹴り一発で人ぐらいなら簡単に殺しますし。

村瀬:……正直、鳥の戦闘能力については2人でかなり議論したんですよね。

及川:そうなんです。鳥の強さは重々承知の上で、分かりやすさを重視してあの描写になったんです。

──マンガ的にスミロドンを強く描きたかった、ということですね。ビジュアル的に強そうですもんね。

画力の迫力が凄いスミロドン

村瀬:そうなんですよ。マンガでは自衛隊もスミロドンにやられちゃいますが、実際の自衛隊はめちゃくちゃ強い。取材にも協力してくださっているので、できれば自衛隊の格は下げたくないのですが……。

及川:難しいですよね。自衛隊はすごく強いですけど、マンガの中ではそれほどスポットを当てる予定はなくて。

村瀬:敵キャラの強さを際立たせるためとはいえ、「所詮人間」と自衛隊を殺すシーンは心を痛めながら描いてます……。

一同:(笑)

劇中ではスミロドンに惨殺されてしまう自衛隊の隊員

スミロドンは本当にアロマ水で撃退できる? 古生物学者の見解はいかに

──芝原さんはサーベルタイガーの体について調査していると聞きました。実際にスミロドンをアロマ水で倒せると思いますか?

芝原:あの戦い方はなかなか面白かったですね。以前、ネコがアロマオイル中毒になったというニュースがあったので、その話を元にしているのではと思いました。

アロマ水をかけて攻撃するアラタ

確かにスミロドンもネコ科の生物ですからね。大きさ的にも現代のライオンより少し小さいぐらいなので、ライオン相手にアロマ水を試してみればわかると思います。まあ実際にやるわけにはいかないので、結局はわからないけど……。

及川:銃とかで普通に倒したのでは面白くないと思ったんですよね。なにか意外性のある展開にしたくて。

芝原:銃もどれぐらい効くのかわかりませんよね。あの自衛隊が持っていた銃の口径の弾でどれほどのダメージを与えられるのかと、ずっと考えて読んでました。できればショットガンを持ちたいですね。

村瀬:そんなところまで考えて読んでくださっているのは嬉しいです。

及川:ちなみにスミロドンは上半身の筋肉がすごいんですよね?

芝原:はい。実は主な攻撃方法は、ネコパンチだったんじゃないかと言われています。そもそも牙が意外と弱そうなんですよね。あんな細長い牙を動いている獲物に突き刺したらすぐに折れてしまうでしょうし、トドメを刺す専用の武器として使っていたのではないでしょうか? あの牙は戦闘においては、あまりアドバンテージにならなかったと思われます。

及川:スミロドンは実際、どれぐらい強かったんでしょうか? 「スミロドン弱い説」とかもあるんですよね……。

芝原:古生物の強さ議論では、色々な意見が出ますよね。真相はわかりませんが、あのティラノサウルスですら本当は屍肉を漁るタイプの生物だったんじゃないか、という説が以前はあったくらいです。まぁ、スミロドンに関しても、現代のライオンといい勝負するぐらいの強さがあった可能性もあります。

及川:ライオンといい勝負かぁ。

村瀬:ヒクソン・グレイシーは「息子を守るためならライオンとも闘う」と言っていましたが、僕が動物園でトラを見たときは「無理だな」って思いました。これは時間稼ぎにもならないぞ、と(笑)

芝原:野生動物と実際に相対するとそうなりますよね。僕も以前、1人で地質調査をしていた時にクマに襲われたことがあるんですけど、殺気がものすごかった。とっさにガケから転がり落ちるように逃げて助かりましたけど、あの時のクマの目は完全に僕を殺す気でした。

村瀬:僕も絶対に助かるとわかっている状況であれば、野生動物に一度襲われてみたいです。今後のマンガに活かすためにも。

及川どういう状況?(笑)

──軽装備でスミロドンの生息域に突入していくアラタはすごいですよね。実際の歴史では、人類とスミロドンはどちらが強かったのでしょうか?

芝原:捕食する側だったのか、される側だったのか、どういう関係性だったか詳しいことはわかりません。矢じりが骨に食い込んだスミロドンの化石でも見つかれば、人がスミロドンを倒していた証拠になるんですけどね。

ただいずれにせよ、スミロドンに限った話ではありませんが「人類の繁栄のタイミングと重なってとある生物が突如として数を減らす瞬間」があるんです。これはなんらかの形で人類の介入があったのではという説もあります。人類が捕食したのか、他の生物が狩るべき獲物を人類が狩り尽くしてしまったのか。注目していきたいポイントです。

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