2019.05.16
41歳差の恋のいく末は。堂々たる完結を迎えた珠玉のラブストーリー『長閑の庭』アキヤマ香 【おすすめ漫画】
『長閑の庭』
『長閑の庭』の最終巻が発売された。
41歳差というハードルを乗り越え、見事結ばれた榊教授と元子。しかし、付き合ったあとも壁は多い。
自分の祖父と同世代の相手と恋をした彼女は、榊教授の元妻・朝霧翠からも「貴方達ふたりの関係は必ずしも歓迎されるものではないのよ」と言われる。教授から以前言われた「揶揄されるような関係」という言葉が重なる。
そもそも「普通の恋愛関係」ってなんだろう。たしかに、40歳以上離れているカップルと聞けば多くの人が驚くだろうが、しかし、それが必ずしも糾弾されるべきことなのだろうか。ただ好き同士のふたりが共に生きることを決めた、ただそれだけなのに。
この作品では決して「歳の差恋愛が素晴らしい」といううたいかたはしないが、「普通ってなんだろう」という問いかけを常に読者に与え続ける。
そして、同時に、歳の差恋愛において避けられない現実も突きつける。
最終巻は、教授の「病」によって物語が大きく動く。
教授の病態を知り戸惑い取り乱す彼女に、朝霧翠がつきつける「所詮欲しかったのは恋愛ごっこ」「枯れないチープな造花」という言葉が読む側の心もえぐる。私もいわゆる枯れ専のような嗜好があり、イケてるおじさんが出てくる作品を見れば、彼らの色っぽい仕草や独特の魅力にはしゃぐだけで満足していた。しかし、『長閑の庭』はクライマックスに向けて、歳の差恋愛のときめきと同じように、酷な事実も描くことを決めた作品だ。
一切妥協のない、全力のクライマックスは、あまりに美しくて涙が止まらなかった。「普通ってなんだろう」と普通に生きることができずに悩み続けた彼女が、「黒い服」を捨てずに到達した場所。大きな希望を残して終わる、素晴らしい最終巻であった。
©アキヤマ香/講談社