2020.04.10
【インタビュー】『君は放課後インソムニア』オジロマコト「こんな景色が見れるなら、眠れないのも悪くない」
日本人の4人に1人は何かしらの睡眠障害を抱えていると言われている昨今、睡眠とどう付き合うかは誰にとっても関係のあること。それは大人だけの話ではなく、高校生にだって言えることで……。
不眠に悩む男子高校生・中見 丸太(なかみ がんた)は、同じく不眠に悩むクラスメイト曲 伊咲(まがり いさき)と出会い、校内のエアポケットのような天文台でときに一緒に眠り、秘密を共有する、青春ストーリー『君は放課後インソムニア』。
まさに「こんな青春過ごしたかった」、甘酸っぱい高校生活がぎゅっと詰まった第3巻の発売を記念して、作者のオジロマコト先生と担当編集の加納さんにお話を伺った。
意外と周りに多かった不眠症
──タイトルにもなっている「インソムニア=不眠症」に着目したきっかけを教えてください。
担当編集・加納さん(以下、加納):えーっと、僕が実際に不眠症なのでお話ししたこと……ですかね? ここ1,2年の熱いトピックだったので。
オジロマコト先生(以下、オジロ):そうですね、加納さんとの付き合いはもう10年くらいになるんですが、前作の『猫のお寺の知恩さん』が終わり、次はどんな話にしようかと考えているときに、不眠症というワードが出てきました。職場のアシスタントの人にも不眠に悩んだ過去がありましたし。
私の場合は不眠のピークは小中学生くらいで、夜に目が冴えるのは自分の特殊能力みたいに感じて(笑)、眠れない時に絵を描いたり楽しく過ごしていましたね。
──ふたりで次のテーマを考えているときに、「不眠症」というキーワードが出てきたんですね。他にもいくつか候補はあったんですか?
オジロ:小学生をテーマに、みたいな話もありましたよね?
加納:あ、ありました! オジロ先生の描く子どもの絵がすごく好きなんです。『猫のお寺の知恩さん』でも主人公の源ちゃんの子どもの頃とかがすごく可愛いかったので、オジロさんの描く子どもをもっと見たいなって。
──過去作では日中の部活や縁側のひなたぼっこなど、「あたたかいお昼のシーン」の印象が強いですが、『君は放課後インソムニア』は眠れない夜がメインの時間帯になります。夜をテーマに描写する際、どんなところに気をつけていますか?
オジロ:画面的に夜の処理って全体が暗くなりすぎちゃうんですよね。暗くしすぎずに夜に見える感じをいま模索しています。
──特にお気に入りの夜のシーンは?
オジロ:悩ましいですが……単行本で描き下ろした、1巻の夜のおたのしみ会のシーンでしょうか。
──オジロ先生の描くヒロインは自由奔放で仕草がかわいいイメージがありますが、キャラクターをつくる時に意識していることは?
オジロ:ヒロインはなんとなく、好みです(笑)。
加納:今回、結構ヒロインの変遷がありましたね。『富士山さんは思春期』のときは背の高い女の子の魅力をオジロさんの絵で、と打ち合せをしたら、次のネームのキャラ表で富士山牧央という名前とビジュアルが出てきたんです。
けど、本作の伊咲は最初ロングヘアのパーカーの女の子でしたね。キャップに関しては、オジロさんのキャップ女子をぜひ、とリクエストさせて頂きました。
──初めての「夜のおたのしみ会」の時の、オーバーオールの私服がめちゃくちゃ可愛かったです。
オジロ:これは担当さんの好みです(笑)。でも高校生が夜に着てくるにはあざといので、実は2人の間で戦っていたんですよ。めっちゃ落としに来てるじゃんみたいな(笑)。
ただギャップというか、好きに生きている! みたいな対比は最初から考えていて。丸太は自分をこう一生懸命からに閉じ込めているんですけど、伊咲は学校では制服でもオフでは似合う・似合わないとか、男にモテる・モテないとかじゃなくて、自分でいいと思ったものを着ているみたいな。
こういう対比を考えて、結果服装も結構攻めたものになりました。伊咲は最初はきれいめで考えてたんですけど、身長も小さくなって……。
加納:当時、映画『シュガーラッシュ』の話しましたよね、ヴァネロペがかわいいって。初期は実はすきっ歯なんですよ。
オジロ:半年くらいかけて連載準備をしていきましたが、懐かしいですね……。実は、天文台も最初はなかったんですが、取材先で出会った高校に天文台があったことと、さらに編集長からの「秘密基地っぽさが欲しい」というアドバイスから生まれたんです。
──ただのクラスメイトとしては、ふたりは仲良くなるタイプではないけれど、不眠症をきっかけに繋がる場所になりましたね。
加納:途中まで、伊咲がダンス部という設定もありましたね。スクールカーストの違う層のふたりが、天文部で出会うといった流れも考えていましたが、最終的にダンス部の設定は友達の蟹川にうつりました。
©オジロマコト/小学館
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