2019.05.27

【特別対談】『甘えたい日はそばにいて。』川井マコト ×『スロウスタート』篤見唯子 インタビュー!

人間そっくりなアンドロイドがいたら、何をしてほしい?

──『甘そば』という作品で、川井先生が描きたかったことはすべて描ききれましたか?

川井:はい。もともと『甘そば』は途中で終わらなければ、2、3巻でまとまる構想でした。だから、しっかり3巻分描かせてもらえて本当にありがとうございますという気持ちです。

──きらら本誌でも人気の作品でしたし、もっと続くのかなと思っていましたが、最初から短くまとめる予定だったんですね。

川井:重ための展開が多い作品ではあったので、分量的には長すぎない方が読みやすいかなというのもありました。

あ、でも、最終回のあとの、各キャラクターの”その後”をもう少し描きたいという気持ちもあったのですが、話の本筋と少しずれてしまう部分なので入りきりませんでした。

篤見:そういうエピソードも読んでみたかったです。個人的な要望をお伝えするなら、もう1巻くらい丸々使ってゆるさ全開のネタも描いてもらいたかったですね。どの子もみんなかわいいので、仲良くしているばかりなところが見たかったです。

川井:ひなげしたちには悩んだり泣いたりさせてしまうことが多かったので、もっと笑わせてあげたかったという思いはたしかにありました。そのぶん、単行本のカバー裏や特典イラストの描きおろしではだいぶふざけてます(笑)。


単行本のカバー裏。こんな日常もあったのかも

篤見:あとは、桂姉妹のやりとりももっと見たかったです。あのふたりの関係性も好きだったんですよ。姉のつくしさんのほうがしっかりしているように見えて、どちらも別方向のポンコツ感があるというか。

川井:ありがとうございます。あのふたりは、実は妹のらんが主導権を握っていて、つくしに甘えつつもいじるみたいな不思議な関係だったと思います。

篤見:表面上はクールを装っているけど、それを隠しきれていないところがかわいいですよね、つくしさん。

川井:つくしは嘘をつくときに肩に手を当てる癖があるというネタを2巻で描いたんですけど、そのあともことあるごとにやってたりします。よかったらぜひ探してみてください。


つくしは嘘をつくとき、肩に手を当てる

──篤見先生は、『甘そば』のキャラクターの中で誰が一番好きですか?

篤見:私はあずきちゃんですね。『甘そば』の中でもひときわ元気で、登場すると画面がパーッと明るくなる子だったと思います。あと、もうちょっとがんばれば楓さんを落とせるのに! ってやきもきしたり(笑)。

川井:この作品の人間関係全体を通してですけど、自分が「こうしたい」という気持ちと、相手の幸せを考えるなら「こうしなきゃいけない」という気持ちがせめぎあうシーンが本当に多かったですね。あずきの楓に対する恋心なんかまさにそれで。

篤見:楓さんのことが好きなのに、ひなげしさんが好きな彼の意思を尊重して潔く身を引くところがすごくいい子だなと。

川井:作中で、結果一番つらい思いをさせてしまったのはあずきかなという気がしていて。アンドロイドみたいに記憶を消去することもできず、好きな人への気持ちを抱えたまま生き続けるって、リアルに考えるとかなりしんどいじゃないですか。元気な子が苦しんでいると私も苦しいので、あずきには幸せになってほしいなと思います。


あずきには幸せになってほしい

──『甘そば』の世界は、人間とアンドロイドが共存する世界である一方、恋をすることや小説を書くことは禁止されていたりと、アンドロイド側が明確に差別されている描写もあります。恋はともかく、小説を書くことも禁止されているのはどうしてなんでしょう。

川井:作中の世界よりも前の時代では、アンドロイドたちを物扱いする風潮がもっと強くて、それが今もまだ残っているというイメージで描いていました。見た目は人間そっくりになっても、人間以外が作ったものを簡単には受け入れられないんだろうなと。


感情を持たされたが、恋することも創作することを許されないアンドロイドたち

──現実の世界でも、AIが線画を自動着色したり、音楽を作曲したりしていますよね。

川井:現実もかなり近いところまできてますよね。将来、本当に人間そっくりなアンドロイドができたとしても、彼らが作ったものを素直に認めてあげられる世の中になっていてほしいなと思います。まだまだ未来の話で、完全に想像ですけど。

──『甘そば』の設定に関連して、いくつか架空の質問をさせていただきます。まず、もしマンガを描くことが法律で禁止されたらおふたりはどうしますか?

川井:近くに身内がいるかどうかでも変わってくると思いますけど、誰にも迷惑がかからない状況であれば、こっそり同士を探して何か行動を起こすかもしれないですね。自分が一番好きなことを認めてもらえないのは、やっぱり苦しいですから。

篤見:描いている途中で禁止されるのか、もともとそういう世界だったのかでも違ってくるんじゃないでしょうか。今まではOKだったのにいきなりダメと言われたら、私は俄然描きたくなりますけど

川井:ふふっそれはたしかに(笑)。途中で取り上げられたら余計に創作意欲が湧きそうです。

篤見:試験前に急に部屋を掃除したくなったり、締め切りがやばくなるとなぜかスケジュールを整理しだしたりする、あの感覚(笑)。

──続いて、もし人間そっくりなアンドロイドがいたら、どんなアンドロイドに何をしてほしいですか?

川井:やっぱり、ひなげしみたいなアンドロイドに身の回りのお世話をしてもらったり、修羅場のときに励ましてもらいたいなと思います。博識なアンドロイドに色々な話を聞いてみるのも面白そう。

篤見:私は……、ものすごい煩悩にまみれたことを考えてしまいました……。

川井:ぜひ言ってください、聞きたいです(笑)。

篤見:普通に部屋を掃除してほしいのと、あと、色々なポーズを取ってほしいです。うう……ダメですね、完全に道具扱いしてる。

川井:でも確かに等身大で表情もついているデッサン人形と考えると、マンガの資料としては最高ですよね……! それなら私も色んな性別と年齢のモデルがほしいかも。

ただ、個人的な欲望を抜きにして言えば、人間の世話はしなくてもいいから自分の好きなことを見つけて自由に生きてほしいですね。『甘そば』を描き終えたあとだと、特にそう思います。

たまちゃんは、たまらないですね(たまだけに)NEXT

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