2019.05.31
全年齢向け、全方位に可愛い、まどかの可愛らしさに是非あなたも溺れてみて!『まどかのひみつ』金魚鉢でめ【おすすめ漫画】
『まどかのひみつ』
女の子の格好を好んでする可愛い男の子と、男の子みたいな格好を好むボーイッシュな女の子が出会うことで始まる物語。
今となっては女装男子キャラも珍しくなくなってきていますが、それを「小学生の視点から描く」という作品はそう多くありません。「自分らしさ」というものが確立できていない多感で繊細で不安定な年頃であるために、描写が難しいこと、また何より志村貴子先生の『放浪息子』という金字塔があるために、なかなか参入しずらいという背景もあるのかもしれません。
『放浪息子』は思春期手前の子どもたちの感情の揺れ動きをセンシティブに描きあげましたが、本作『まどかのひみつ』は、同じような境遇ながら、とにかく明るく、かわいく、前向きに物語が進行していくのが特徴であり、特長となっています。
主人公のまどかは、かわいいものが大好きで、姉の手ほどきによって女の子の服をよく着せられています。周りから「かわいい」と言われるのも、ぼくにとっては当たり前……。けれど、学年が上がるにつれて、それが普通じゃなくなっていきます。
転校先ではそのことを隠し、男の子らしく振る舞おうと決意した矢先、出会ったのはとってもボーイッシュな女の子・いつき。最初こそケンカをしてしまったものの、自分をしっかり持っていて、自分にも不器用ながら優しくしてくれる彼女に、だんだんと心を許していき……というストーリー。
小学生の秘密なんてのは、よほど念入りに隠そうとしない限り、簡単にバレてしまうもの。小学生というのは鈍感で残酷ですから、ひとたび「変なこと」を見つけると、徹底的に晒し上げ、イジります。
どちらかというと繊細な心の持ち主であるまどかは、当然それに傷つくわけですが、一人であれば挫けてしまうことも、二人でいれば乗り越えられる。いつきとともに、自分らしさとは何か、自分の好きなことは何かを思い描きながら行動することで、少しずつ周囲の見る目を変えていきます。
乗り越える方法は、真正面からぶつかってなんてこともなければ、議論して言いくるめるなんてことも、巧妙に罠にはめるなんこともありません。言うなれば、圧倒的な可愛らしさ、かっこよさでもって、周りを黙らせるのです。それも、とびきり一生懸命に楽しく。だから読んでいて、とても清々しい。
扱う題材はセンシティブなものなのですが、それも作品中に渦巻く可愛らしさの前では霞んでしまうほどに、ただただまどかが可愛い。可愛すぎる。小学生ですから、恋愛要素は無し。ジャンル的にはファミリーとかヒューマンとか、そういうところになるんですかね。
全年齢向け、全方位に可愛い、まどかの可愛らしさに是非あなたも溺れてみてほしい。いや可愛いってほんと偉大ですわ……。可愛さの前には、男女も何もないんですよ。
©金魚鉢でめ/祥伝社