2019.06.07

かまど自作系女子高生とゲームクリエイターの年の差ラブストーリー!『カモナ マイハウス!』南波あつこ【おすすめ漫画】

『カモナ マイハウス!』

稀代のヒットメーカー

南波あつこ先生の『カモナ マイハウス!』2巻が発売されました。

『先輩と彼女』『青夏 Ao-Natsu』は映画化され、『スプラウト』はドラマ化と、瑞々しい青春模様で10代女子の心をぐっと掴み、次々とヒットを飛ばす南波あつこ先生が、満を持して送り込んできた新作がこちらになります。

今作もメディアミックス必至……かと思いきや、ちょっとこれまでとは雰囲気が違っているんですよね。

かまど自作系JKとゲームクリエイター

物語の主人公・陽向は、昔住んでいた空き家に通い、庭に自作したかまどで、放課後通ってはとうもろこしだのスルメだのを焼いて楽しむという、かまど自作系JK。長らく空き家だったその家ですが、ついに借り手がつき、ある日陽向と借り主はばったり鉢合わせることになります。

陽向からしたら、自分だけの場所に知らない人が突然現れてパニックですし、向こうからしたら、借りた家の庭で知らない女子高生がなんか焼いてるんですから、当たり前にビックリなわけですよ。その借り主・は、有名ゲームクリエイター

最初こそ陽向を迷惑そうに追い払う樹でしたが、彼女がかまどでつくる食べ物につられ、さらに彼の作るゲームに夢中になる陽向の姿に気をよくして、庭に自由に通うことを認めてしまいます。自分の大切な場所を失わずに済んだ陽向は、以降も頻繁に樹のもとに通い続け、いつしか彼に想いを寄せるように…という年の差ラブストーリー

いやはや、多彩な主人公が求められる昨今ですが、ついにTOKIOもびっくり、かまどを庭に自作するというとんでもないDIYJKが現れましたよ。そしてそれをネタとしていじらずに、割と平然と設定に落とし込んで物語の中で流れていくんですから恐ろしい。まあこうして何かを作るということで、クリエイター職である樹とも、何か気持ちが通ずるものがあるのかもしれません(知らんけど)。

良識ある大人を相手にどう攻めるか

高校生と社会人ですから、当然くっつくには問題あり。というかそもそも、自分の居場所を彼に見出し、恋心を募らせていく陽向に対して、樹はそんな素振りは一切見せません。もちろん陽向の寂しさみたいなものを感じ取って、許される範囲で不器用ながらも優しく受け入れてくれるのですが、そこには明確に一線が引かれており、あくまで保護者然とした、年上のお兄さんとしての振る舞いです。

うまいこと懐に入り込んだは良いものの、しっかりと良識を持った社会人相手に、どうアプローチしていくのかというのが、一つの見所。序盤からこんな感じなので、こう、爽やかさだとか青春ならではのときめき成分みたいなものは、従来の作品に比べるとやや薄いかもしれません。

良い噛ませ犬がいるんです

2巻では、陽向に小学生の頃から思いを寄せるクラスメイト・大橋が本格参戦。その深く強い恋心とは裏腹に、小学生時代「好きだからこそいじめちゃう」的なポカをしてしまい、以来陽向から嫌われているという、可哀想なやつです。

押しかけ系の陽向もなかなかタフな心の持ち主ですが、陽向から嫌われながらも、彼女から離れることなく近いところを高校生になってもウロウロして、時に陽向と樹との間に勝手に介入してくるという気持ちの強さがすごい。中身は完全に純情少年で、描かれ方といい完全に圏外な噛ませ犬なんですが、空回り方がとにかく愛らしい素敵なキャラなんですよ。

南波あつこ先生の過去作『隣のあたし』では、噛ませ犬が大逆転するみたいな展開もあったりしたのですが、こと彼に関してはそんな可能性が一ミリもなさそうなのが逆にイイ。

というわけで、素敵な噛ませ犬くんも交えつつ、かまどもゲームも思いのままに作り出す2人が、カタチのない”恋愛”をどう組み上げていくのか。まだまだ動き出したばかりの恋模様に要注目な一作でございます。

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いづき

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