2019.07.06
ファンタジックな世界で繰り広げられる、魔女の師弟ドラマ!『ニーナさんの魔法生活』 高梨りんご【おすすめ漫画】
『ニーナさんの魔法生活』
本日のピックアップは「COMICメテオ」で連載中のこちら、『ニーナさんの魔法生活』。
「女性同士の師弟ドラマ」×「ファンタジー」×「スローライフ」という、もっとあってもよさそうなのに意外と供給が少ない方向性でありがたい作品だ。
竜が空を飛び、魔法を精密な理論のもとにあつかう魔術師たちが存在するその世界で、魔法学校中等部の女子生徒アイリスは魔女見習いとして実地の研修を受けることになる。彼女の師匠についたのは、世界最強の呼び名が高い魔女ニーナさん。
ところがこの女性、初歩的な知識もないまま強大な魔法をあっさり使いこなす超・感覚派だった。
早く一人前の魔法使いとして自立したいと気の焦るアイリスに対して、森の奥で植物を育てながらのんびり……というよりズボラな暮らしぶりで隠棲を楽しむニーナさん。ふたりのテンポは常にズレて、弟子が師匠のだらしなさを叱るような一幕もしばしばだが、ふとした時にニーナさんが見せる魔法と自然界の奥深い結びつきにアイリスは少しずつ感化されていき──というのが大枠だ。
しっかり者だが理屈が先走って心身とも発展途上の少女と、マイペースで自由奔放ながら懐深い大人の女性という組み合わせは完璧なまでにコントラストが効いており、師弟ものの醍醐味をじっくり味わうことができる。
ニーナさんの艶やかな造形も素晴らしいが、個人的に注目したいのはアイリスのほう。太眉で眼鏡をかけてキリっとしたアイリスの容貌はみごとに性格をあらわし、一目見ただけでも「あっ、こういう子にこういう師匠がついたらいい組み合わせだな」と期待できるし、実際その期待ど真ん中に刺さる関係性が展開されていく。
そして、そんな二人が身を置く世界の描きこみ、これがまた見ごたえあっていいのである。
草木が生い茂る森の空気感。生活味のあふれた屋内の雑然さ。天地ゆるがす魔法のスペクタクル。
細かいものから壮大なものまで、どれもけっして記号的な背景ではなくひとつの世界の風景としてみっちりと身が詰まっており、本来の意味での“世界観”へ読者をひたらせてくれる……つまり単に設定上の情報量が多いという意味ではなく、ひとつの世界の見方・見せ方が豊かである、という意味だ。そう、このマンガの絵面に関しては「美しい」というより「豊か」という言葉がふさわしいように思われる。
ちなみに本作は2016年1月にWeb連載が始まったのち第8話時点でいったん休止期間へ入りファンは気をもんでいたが、2018年秋にめでたく再開。単行本派の読者が待望した第2巻も最近刊行された。
描き悩みながらも改めてしっかり筆を取りなおした作者・高梨りんご先生に敬意をまず表したい。
©高梨りんご/フレックスコミックス