2019.09.11
姫騎士、魔王軍の「恐ろしすぎる」拷問に耐え続ける『姫様”拷問”の時間です』春原ロビンソン, ひらけい【おすすめ漫画】
『姫様”拷問”の時間です』
姫騎士、魔王軍の恐ろしすぎる拷問に耐え続ける
魔王が姫を幽閉するとなると、そりゃ人間共の秘密を聞くために身体的な拷問の1つや2つしないわけがない。そして苦しむ姫騎士は、漫画の人気の定番シーン。
しかしこの作品の“拷問”は、身体を痛めつけるタイプのものではない。むしろある意味において、想像を絶する残忍な拷問ばかりだ。
例えば深夜に拷問官がやってきたら、普通は不眠で心と身体を痛めつけると思うだろう。王女にして、国王軍第三騎士団の騎士団長である姫は、不眠不休での戦いなんてすでに経験済み。負けるわけがない。
だが彼女を待ち受けていたのは、はるかにおそろしい拷問だった。深夜に拷問官がこってり濃厚ラーメンを目の前で食べる、という地獄。フーフーしてちゅるちゅる、美味しそうな笑顔。この拷問に、姫の胃は悲鳴をあげる。
悶絶しつつも耐える姫。しかし拷問官のさらなる行動や卑劣。ラーメンスープをしみこませた海苔でごはんを巻いて、美味しく頂いた。姫様、陥落。彼女は秘密を話してしまうのだった。
他にも「たこ焼き」「炙ったアンパン」「くまの子供が遊んでいたボールを取り上げる」など、悪魔のような拷問の連続。
言うまでもなく、姫は全部拷問に負ける。
ただ、拷問中の姫の苦痛に耐え続ける表情と、拷問に負けたあとの解放感に満ちた幸せ過ぎる笑顔を見ていると、もう敗北して正解としか思えなくなる。魔王の軍側も、秘密さえ聞ければなんでもいいので、姫には大変やさしい。
ラーメン拷問の時は、切り落としチャーシューのサービスをするくらい温かい。
彼女が受ける拷問は、イコール「人間の感じる幸せ」だ。何かを不自由にさせるマイナスの拷問(例・身体に傷を負わせるなど)ではなく、幸福を感じるであろう部分をちょっぴり我慢させるものばかり。
しかも最終的には(秘密を話しさえすれば)全て幸せは与えられる。なので、見ていて「いじめられている」感は全くない。
中でも、魔王の城で出来た友人をめぐる拷問の回は、まだ若い彼女の幸福の受け止め方に、ちょっと泣けてくる。友達との青春の笑顔は、人生の大切なプラス部分。受け取れてよかったね姫。
オムニバス形式の作品なので、漏らしている機密情報はどえらい量になっている。どうなるのかは、是非読んでみてください。
この幸福な拷問の日々が、永遠に続けばいいのに。
©ひらけい,春原ロビンソン/集英社