2020.05.15
テストの問題用紙を盗んだという疑いをかけられた女子高生が、指定校推薦のために奔走するが…!?『笠佐木梓と七人の敵』辻田りり子【おすすめ漫画】
『笠佐木梓と七人の敵』
『笑うかのこ様』『恋だの愛だの』の辻田りり子先生の新連載です。実に3年ぶりの連載ということで、久しぶりですね。それではさっそくあらすじをご紹介しましょう。
指定校推薦のために奔走
主人公、笠佐木梓は高校2年生。この世はとにかく生き辛い。世の中知らないことばかり。けれども、知っていれば得をすることもある……。そんな思いを胸に、彼女がひそかに狙っているのは、指定校推薦!そのために、地頭がよくないなりに必死に勉強し、先生のポイント稼ぎも忘れず行い、推薦枠を勝ち取るため、日夜努力を続けています。
そんなある日、ひょんなことからテストの問題用紙を盗んだというあらぬ疑いをかけられてしまうという事件が。疑わしきは、同じく推薦を狙っていると思しき人物たち……。このままでは推薦枠が危ないということで、6人の学友を巻き込み犯人捜しをするのですが……というストーリー。
キャラが渋滞してます
「7人の敵」って言っていますが、7人のうち1人は梓自身なので、全部で8人いるみたいなことはありません。
この梓以外の6人ですが、それぞれ一芸に秀でている面々がそろってます。小説家の卵だったり、学校随一のモテ男だったり、学年トップの成績ながら性格最悪なメガネとか、悪そうなヤツらは大体友達って感じの不良系お姉さま、誰からも好かれる人たらしに、漫画家志望と、キャラが渋滞してますね。というか、それだけキャラクター投入してるのに、これが元々読み切りだったっていうんだからすごい。
衝撃のラスト(完結ではない)
そんな彼らが、梓の求心力によって寄り集まり……なんてことはなく、それぞれ利害が一致しているために一緒に行動しているというのが実態。一応チームの体は成しているのですが、一体感は無く、時に意図して、時に意図せず、すれ違いが発生します。
そんな、みんなバラバラの方向を向いている7人ですが、一緒に過ごすことで少しずつ友情が芽生えてくる過程もまた読んでいて面白いところ。物語は、推薦枠をゲットするために奔走する梓の周りで起こるちょっとしたトラブルを、梓が6人の協力を得て解決していくという展開になるのですが、7人の”仲間”ではなく、”敵”としているところがポイントとなります。
物語が進むと、彼らに対する疑惑・疑念が持ち上がり、表立っている出来事だけでなく、裏側でも物語が動くのですが、1巻ラストで早くもとんでもない展開を迎えるんですよ。自分は読んでで普通に「は?えええ!?」って声出しました。
かのこ様とは違うんですよ
ヒロインの笠佐木梓は、けっこう理屈っぽい戦略家で、用意周到な根回し大臣。斜に構えたところがあり、周囲に流されない性格と、どこかか前作主人公のかのこ様と被る印象があります。けれどかのこ様よりも、なんというか詰めが甘い印象があるんですよね。結構簡単に手の内を明かしちゃったり、上手いこと使われちゃったり。そもそも推薦を狙うために死ぬほど努力してるんですけど、それを勉強に全振りしたらいいんじゃないの?非効率じゃね?っていう。
実際作者の辻田先生もあとがきで、「前作の主人公は人生のポイントでなんだかんだ言っても絶対失敗しない子だけれど、今回の主人公は若干ポンコツ」という評をしており、至極納得。先の「衝撃のラスト」も、「どうしてこうなった…」という感情とともに、「まあでも、彼女自身が呼び込んだんだろうなぁ。うん。」という納得感が同時に湧いてきて、割と受け入れられてしまうのが不思議なところ。
とにかく1巻ラストまで読んでほしい
1巻時点では恋愛色も強くなく、個性的な面々とあーだこーだ騒いでいるという感じなのですが、これから恋愛色もきっと出てくることでしょうし、脇役達にもスポットがもっと当たってより深みを増していくことでしょう。1巻ではさすがに濃いキャラ達を処理しきれていない感がありましたが、全然心配してません。
正直ラストがラストだけに、2巻どうなるのか全く想像つかないのですが、とりあえず一緒にラストの衝撃を味わっていただきたいので、是非読んでみてください。
©辻田りり子/白泉社