『神客万来』

ねむようこ先生の新作『神客万来』の第１巻が発売されました。

時折ファンタジー作品を描くねむようこ先生ですが、なかなかハートフルな物語となっていますよ。

お客様は神様です

物語の舞台は、一日一組限定で、願いごとを一つ叶えてくれるというツバメ屋ホテル。そこで住み込みで働きはじめた、新人客室係のミチル。「お客様は神様」とは聞いていたけれど、訪れたのは本当に神様!?

そう、このホテルは人外専用。あちらの世界の、あんな有名人やこんな有名人が、次々と訪れるのです……というストーリー。

タイトルから、神様ばかりが泊まりに来る「神様専用」のホテルかと思ったんですが、客層はもうちょっと幅広いです。例えば１巻に登場するキャラクターを挙げると、五穀豊穣と交通安全の神様を皮切りに、ドラゴン、キツネ、赤ずきんちゃんに桃太郎と、今昔和洋入り交じるなかなか雑多なラインナップ。

お好みのプランをお選びください

ホテルには某旅行サイトのように様々なプランが用意されていて、宿泊客はそれぞれが抱える悩みや願望を叶えるために、自分に合ったプランを選択するのです。例えば心優しいドラゴンはガールズプランを選択し、普段堪能することのできない「かわいいもの」に囲まれて癒されます。

また赤ずきんは、ずきんを外すと途端に地味になってしまうことを憂いて、ビューティアップコースを申し込んできたりと様々。

そんな宿泊客のお悩みを、客室係として一番近いところから聞き出しサポートするのがミチルのお仕事。ついつい感情移入して、おせっかいを焼きたくなってしまう性分のミチルの頑張りが、時にハッピーを、時にトラブルを巻き起こします。

かわいい男子ももちろんおります

ねむようこ作品と言えば、アクセントとなる「ひと癖ある同世代の男子」ですけれども、今回もおります。

同じくホテルの従業員で、調理を担当している瑞希。とにかく口が悪いのですが、なんやかんや面倒見がいいという、恋愛フラグびんびんの素敵男子でございます。

ミチルはミチルで結構調子の良い元気女子なので、二人のやり取りはなかなかに賑やか。物語の一つの華として、彩りを添えてくれます。ただ１巻ではおあつらえ向きなシチュエーションのわりにあんまり恋愛要素はなく、２巻以降期待といった感じですかね。

肩ひじ張らずに気楽に楽しめる作品です

こういうコンセプトの作品として思い出すのは、最近では『潮騒の魔女』あたりでしょうか。あちらはレストランという形で、実在架空様々なキャラクターの悩みを料理として描き、物語を紡いでいきますが、より美しくクールな雰囲気を感じさせるのに対して、こちらはより可愛らしくハートフル。

全国民が知っている物語を土台に、作者が自由に物語を膨らませて展開させるというのは読んでいてワクワクしますし、漫画家それぞれの個性が滲み出るので、また面白いですよね。

肩ひじ張らずに気楽に読める、親しみやすい一作。コロナ疲れのあなたの心にも、ちょっとした癒しを与えてくれるはずです。

試し読みはコチラ！

©ねむようこ/芳文社