2020.05.23
大人気転生作品の外伝!『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった… 絶体絶命! 破滅寸前編』nishi, 山口悟, ひだかなみ【おすすめ漫画】
『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった… 絶体絶命! 破滅寸前編』
「小説家になろう」への投稿作にもとづく商業小説を原作として、アニメ版がホットな話題作に躍り出た、『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』こと、通称“はめふら”。
本日は、その本編に対して大胆な「もしも」を掛け合わせて独自展開する外伝を紹介したい。
その名も『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった… 絶体絶命! 破滅寸前編』。
破滅寸前とは穏やかでないね。さあどういう意味か。
まずは、すべての前提となる本筋のおさらいをしておこう。
カタリナ・クラエス。
とあるファンタジー世界の公爵家に生まれ、幼くして国の第3王子と婚約を結んだお嬢様。
烈しい気性のわがまま娘で、学園に上がると恋敵を酷くいびり、その結果として自業自得で命を落とすか国外追放されるかの末路をたどる業深い存在──の、はずだったのだが。
幼少期にうっかり転んで頭をぶつけたカタリナは、自分の前世が地球で若くに亡くなったオタク女子高生だったという記憶を取り戻す。
しかも現在の自分が生きる世界は、なんと前世でプレイしていた乙女ゲーム『FORTUNE・LOVER』の舞台であり、カタリナ・クラエスはどのルートに進んでも破滅するサブキャラの悪役令嬢だと気づいてしまう。
今度はつつがなく年を取って人生をまっとうしたい!
そう強烈に願ったカタリナは、ゲーム本編にあたる15歳の学園生時代がくるまでに破滅フラグを回避しようと決意。ゲームの攻略対象キャラで、破滅の原因となる王子・義理の弟・貴族子弟らとの人間関係を、ゲームとは異なる形に整えていく。
それどころか、貴族としてはあまりにワイルドで常識破りの言動をするカタリナは攻略対象キャラはもちろんその近縁の貴族令嬢、はては本来ゲーム主人公となるはずの少女まで心の苦しみから救いまくり。
悪役令嬢ポジションでありながら、主人公のお株を奪ってメインキャラ全員、男女問わず深い好意を抱かれる超ハーレム状況を自覚ゼロのまま築いていくのだった……。
まずはここまでが原作やそれにもとづくコミカライズ、またアニメ版のベースとなる本編の展開である。全体通してみれば、とにかくカタリナが子供時代に前世の記憶をインストールすることが必要条件なのはお分かりだろう。
で、ここに「もしも」の余地があるわけだ。
もしも、カタリナが前世を思い出すタイミングがもっと後にズレこんでいたらどうなるか?
破滅エンドが確定するまでほんの一年ほどしか残っていない、15歳。主人公キャラ・マリアをいじめて彼女お手製のお菓子を無情に踏みにじろうという、悪役令嬢ムーブ真っ最中。そんな、限りなく詰みに近いシチュエーションでとつじょゲームの今後の展開を思い出してしまったら!?
かくして、まさに「絶体絶命! 破滅寸前編」の名にふさわしいルートが幕開けるのだ。
このIF外伝のポイントは、カタリナの努力の種類が本編とは根本的に異なるところだろう。
本編カタリナがやることは「まだやっていないことをやらないよう気を付ける」「まだ起こっていない出来事に備える」という、ゼロベースからプラスに積み上げていく予防や準備だ。
それに対して、破滅寸前編のカタリナはゲームの設定どおり育った後であり、目の前にはもうイジメはじめていた主人公がいる。攻略対象キャラたちとの関係も、悪役令嬢に対するものがすでに出来上がってしまっている。
すでにしてしまったことをどう埋め合わせるか。いきなり価値観ががらっと変わった言動を周囲にどう説明して信じてもらうか。つまり挽回・償い・帳尻合わせの努力をしなければいけない、悪人改心劇に寄っているのである。
そして、読み進めていくと、それでも何とかしてしまえるのがカタリナなのだというのが分かってくるのがアツい。
翻って言えば本編のカタリナも決してタイミングに恵まれただけで上手く運んだわけではなく、どんな状況でも彼女は彼女だから活路が拓け、そして周りを魅了するのだという人物の価値が浮き彫りになるのだ。
他にも、悪役カタリナの取り巻きのモブ令嬢にスポットを当てる回があるなど端々によい着想が光る外伝なので、アニメなり原作や本編コミカライズなりとあわせてチェックしてみてほしい。
ところで、この外伝マンガを含めて“はめふら”の書籍展開は一迅社が手掛けている。
一迅社といえば、そう、かの「コミック百合姫」だ。
“はめふら”は基本的には男の子いっぱいな乙女ゲームのメタを張りながら、要所要所で濃厚な百合成分を注入しているのは本編履修済みのかたならご存じだろう。
そこで……ということなのか、百合に特化した公式アンソロジー『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった… GIRLS PATCH』が百合姫コミックのレーベルから6月26日に発売されるそうだ。
そっち方面のツボをついてくれる本になっていることを期待しよう。
©nishi, 山口悟, ひだかなみ/一迅社