2020.06.01

おじさまと真面目メガネの青年が繰り広げる、ハートフルなパパ活男子BL!『僕のパパになってください』緒川千世【おすすめ漫画】

『僕のパパになってください』

流行りのパパ活がBL業界にまで……と言わんばかりのタイトルです。

実際、表紙のロマンスグレイのおじさまと、真面目メガネの青年は赤の他人なのです。そして、若者がおじさまにお金を払って「パパ」になってもらっています。

とてつもなくインモラルな気配がしますよね……でもふたを開けてみたらどこに出しても恥ずかしくないレベルのハートフルヒューマンドラマでした。偶然出会ったこの2人が、血のつながらない「父子」として定期的に会うというだけのお話なのですが、胸キュン必至です。

日々の激務と人間関係に神経をすり減らしていた春樹は、自分にも他人にも厳しく人との距離をうまく取れないのですが、「パパ」である灰田の前では素直になることができました。金銭でスイッチを切り替えているというだけでは説明しきれない部分で心を許している感じがします。

BLで「パパ活」ときたら肌色シーン方面にしか妄想が進まなかったわけですが、この2人、なんとそういう意味ではキスはおろか、指一本触れておりません。邪推して本当に申し訳ございません……。

本物の親子以上に真面目に親子をやるんですよ。春樹が子供のころにやりたかったことをし、行きたかった場所に行き、時に厳しくアドバイスをされ──。外から見たら本物の親子にしか見えません。

春樹はずっと、実の親に褒められたくて努力してきましたが、ある時ふとした気の緩みから自分が同性愛者であることがばれてしまい、その事実を親は受け入れられずに高校卒業以来、ずっと疎遠になっていたのです。

そのことを灰田に告げてからも、彼の態度は変わりませんでした。本当の親子よりも親子らしく交流を重ねる2人が丁寧に描かれていきます。

灰田の包容力ときたら、半端ないと言わざるを得ません。こんなできたお父さん滅多にいないですよ!

春樹は、疑似親子として以上の気持ちを灰田に抱かないように必死に努力します。心地よい親子関係を壊したくない、でもさらに踏み込みたい。どちらも本心です。

そんな気持ちを抱えたまま新年を迎えますが、神様に祈ったところで自分の気持ちにブレーキなどかかるはずがないのです。

灰田も、過去に離婚を経験しており、おそらく何かを背負って生きているのでしょう。作中では描かれませんでしたが、
「ありがとう、もう一度私を父親にしてくれて」と言って泣いていました。

そんな彼に、父親として以上に好きになってしまいましたって言えるでしょうか。

この先の彼らを見たい気持ちと、このまま終わらせたい気持ちがせめぎ合うという珍しい経験をしました。この作品は、お互い指1本触れないけれどちゃんとBLだと思いますし、同時にヒューマンドラマでもあります。

ハートフルで清らかななパパ活男子BL、ぜひ読んでみてくださいね。

この記事を書いた人

アキミ

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