2020.07.01

【インタビュー】『おじさまと猫』桜井海 「そこにいてくれるだけで幸せ。愛されていてよかった。」

Twitter発漫画で現在Webマンガサイト『ガンガンpixiv』にて連載中、6月12日に最新コミックス5巻が発売した『おじさまと猫』。

みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞2020』や『このマンガがすごい!2019 オンナ編』、『次にくるマンガ大賞2018 Webマンガ部門』など数々の賞を受賞している注目作です。

とあるペットショップで売れ残り猫として1歳を迎えようとしているエキゾチックショートヘアのねこちゃん

ペットショップで人気なのは子猫ばかり……どんどん値段が下げられていくにもかかわらず、成猫はずっと小さな箱の中で子猫が巣立つのを見守るばかり。「ブッサイク」「子猫がいい〜」と言われ、どうせ誰も私にゃんてほしがらにゃい……と諦めモードに入っていたある日、「この猫をください」と声がかかります。

その声の主は紳士すぎるおじさま、神田冬樹

『おじさまと猫』は、疑心暗鬼のぶちゃかわ猫を優しく救い上げた元ピアニストのおじさまと、猫のふくまるの日常を描いたハートフルストーリーです。

コミスペ! は今回、『おじさまと猫』の作者、桜井海先生にメールにてインタビューを実施。心がほっこり暖かくなる、猫愛溢れる本作がどのようにして生まれたのか、どんな想いをこめて執筆されているのか等々お伺いしていきます!

(取材・文:八木あゆみ/編集:八木光平

はじまりはTwitterだったから描けた、おじさま×猫

──単行本5巻発売おめでとうございます! また、今回TSUTAYAコミック大賞で第2位となりました。まずは、いまの率直なお気持ちを聞かせてください。

桜井海先生(以下、桜井):沢山の投票ありがとうございます!皆様の応援のおかげでランクインできました!本当に嬉しいです、ありがとうございます!

──『おじさまと猫』はもともと、桜井先生のTwitterで投稿した4ページの短編漫画をきっかけに生まれていますが、猫漫画を描いて投稿してみようと思ったのはなぜですか?

桜井:『神とよばれた吸血鬼』の連載終了後、気分転換に大好きな猫をテーマに漫画を描き、Twitterに載せたのが始まりです。商業を意識しなかったため、ブサ猫・ペットショップ・中年男性という、編集にボツにされそうな要素だらけの漫画になりました。

──ボツ要素だらけの中で、『おじさまと猫』がこれだけ多くの支持を得た理由は何と感じていますか?

桜井:難しい質問ですね。

ただ沢山の感想をいただいているのですが、「泣けました」「笑いました」「ふくまる可愛い」「おじさま可愛い」などなど、登場人物たちに心揺さぶられていただけたおかげかもしれません。愛されていて良かったね、と嬉しくなります。

──本作品を書くにあたって、飼い主を「おじさま」としたのはなぜでしょうか?

桜井:筆の進むまま悩まずサクッと描いた漫画だったので、それまでの連載経験、心情に左右されていたと思います。

「おじさま」にしたのは他ではしっくりこなかった為だと思います。子供では「欲しい」と言っても親が関わってきます。若い男女でもしっくりこない。「私が欲しくなったのです」の言葉を一番印象付けられたのが「おじさま」だったのかもしれません。

──『おじさまと猫』はTwitterをきっかけに人気を獲得し、ガンガンpixivと月刊少年ガンガンでの連載に移籍になりましたが、作品やスタイルに何か変化はありましたか?

桜井:4ページ構成に囚われなくなったので、一気に話や感情が深くまで描けるようになりました。個人的には本当に嬉しい変化です。

Twitterから移動しなければ、ふくまるの去勢やおじさまの苦悩、ふくまるにそっくりの猫・マリンとの出会いなどのエピソードが、もっとさらっとしていたか、描けなかったと思います。

ふくまるの去勢が心配でしょうがないおじさま

──神田さんが元ピアニストであったり、職場が音楽教室だったりと「音楽」もこの作品にとっての重要なキーワードだと感じます。この題材を取り入れた理由やきっかけなどあれば教えてください。

桜井猫といえばピアノですから! たぶん。ピアノを邪魔する猫が可愛いのです。

それと、キャラを作るときは、ネームを作りながら完成させていくのですが、何故こんなセリフを話すのかは、そのキャラの子供時代や人生を想像して作ります。そこで一番イメージにしっくりくるほうを選びます。そうやってできたのが、今の神田冬樹です。

──キャラづくりの話が出ましたが、登場キャラクターにモデルは存在しますか? キャラクターを作る際に気をつけていることなどあれば教えてください。

桜井:小さな影響はありますが、私は実在の人物をモデルにキャラを作ることはありません。主人公ができると、その主人公に合わせて「面白いか?」でキャラを作っていきます。周りのキャラクターたちは、できるだけ主人公に被らずギャップが楽しめるキャラにしています。

キャラの外見を決めるときは、人生や家族構成も考えるので神田の幼なじみで親友の小林の真の名字も当初から決めていました。物語が進むにつれ、それぞれのキャラの子供時代のエピソードも描けるのはとても嬉しいです!

─Twitterで人間キャラ投票を開催していましたよね。小林さんが人気でしたが、先生個人としては人間キャラでは誰がお気に入りでしょうか?

桜井:ふくまると神田冬樹が一番ですが、みんな大好きです。みんな幸せにしてあげたいし、みんな笑っていてほしい。

でも作画が楽なのは小林です。そして一番大変なのが神田冬樹です……。

愛猫がもたらしてくれるもの

──桜井先生は愛猫の現在ぷくまるとマリンとともに生活されているかと思いますが、猫との生活が桜井先生にもたらしてくれるものは何でしょうか?

桜井幸せです。そこにいるだけで幸せな気持ちになります。生き物がいるのはいいですね。

──エキゾチックショートヘアは初めて飼われたとのことですが、実際に生活してみて他の猫と比べて特徴などはありましたか?

桜井:顔がつぶれている違和感にはすぐに慣れましたが、つぶれ顔は何度見ても可愛いです。行動は他の猫と変わらないです。

あと、エキゾチックショートヘアは鳴かないとよく言われるものの、ぷくまるは確かにあまり鳴きませんが、マリンは歴代猫たちの中でも一番鳴きます。

ぷくまる

マリン

──『おじさまと猫』ではおじさまによる猫への愛情がたっぷりで、周りの人にふくまるを自慢する神田さんの姿を見ると思わず顔を綻ばせてしまいます。桜井先生からみた、ぷくまる・マリンのたまらないポイント自慢をお願いします!

桜井:ぷくまるはあまり鳴かないので、気持ちを行動で表現します。ご飯が欲しいときや構ってほしいときは、ゆっくりパソコン画面の前を行ったり来たり。寝ているときはゆっくり顔の上に上ります。

マリンはよく鳴くので、移動するときも「るるる」と鳴きながら歩いていきます。そして呼ぶとどんなに離れていても「るるる」と言いながらやってきます。「ぷくまる」と呼んでもマリンが先に来ちゃうんですよ。可愛くって幸せですね。

40年の付き合いでも知らない顔を引き出してしまう、猫ちゃんの魔法

また、ふくまるの影響で鼻くそ模様や、面白模様の猫が更に気になるようになりました。

でも猫はみんな可愛いので、猫というだけでどんな子でもニコニコ見てしまいます。作中に出てくる猫の行動は、うちの猫はもちろんほかお宅の猫ちゃんたちも実際にやってそうなものを選んでいます。

少年漫画好きの桜井先生

──過去に影響を受けた漫画や漫画家、最近ハマっている作品を教えてください。

桜井:少年漫画が大好きで、尾田栄一郎先生の『ONE PIECE』、冨樫義博先生の『HUNTER×HUNTER』、井上雄彦先生の『SLAM DUNK』は何度読み返しました。

そのせいか時々、少年漫画的展開が作中でも出てきます。逆境に立ち向かったり、仲間や大切な人のために頑張る展開が好きなんです。

名シーンが多すぎて、好きなところを絞るのがなかなか難しいのですが……『ONE PIECE』のアーロンパーク編で、ナミの「助けて…」にルフィが「当たり前だ!!」と叫ぶシーンが大好きです。ここは何度読み返しても泣けます。主人公が誰かのために、一番言ってほしい言葉を発するシーンが大好きなんです。

『HUNTER×HUNTER』は「キメラアント編」のメルエムとコムギの最期が素晴らしいのはいうまでもないですが、有名すぎるので感銘を受けた他のシーンを紹介します。

暗黒大陸編、ハンター協会VSビヨンド派の暗黒大陸攻略争奪戦で、王子の過酷な運命を悟った王妃オイトが「心底…後悔し、ようやく、何が大切か気付いたのです…」と伝えるシーンです。この短いシーンとセリフだけで、キャラの好感度を爆上げして、イメージを一変させ、世界観まで伝えるのです。冨樫先生の腕に惚れ惚れします。

『SLAM DUNK』は、「山王戦」でルーズボールに突っ込む主人公・桜木花道を姿を見て、晴子さんの「いつかバスケ部の、救世主になれる人かも知れないよ…お兄ちゃん‼︎」のセリフを赤木部長が思い出すシーンが好きです。

物語序盤のセリフが最終回付近で出るのは泣けますよ。頑張る桜木君が大好きです。

読者やファンの方へのメッセージ

──桜井先生が『おじさまと猫』を通じて描きたいテーマはずばりなにでしょうか?

桜井愛情でしょうか。

これはふくまるとおじさまだけじゃなく、全てのキャラ同士でも同じだと思います。世の中哀しいことが溢れているので、お話の中くらいは辛くても幸せいっぱいであってほしいです。

──今月に5巻が発売されましたが、見所やおすすめのポイントを教えてください。

桜井:5巻ではSNSで話題にしていただいた「ふくまる脱走編」をすべて収録しています。描き下ろしもたくさん描きました!

また、今年の12月には完全描き下ろしの絵本も発売予定です。どちらも楽しんでいただけたら嬉しいです。

──最後に読者、ファンの方にメッセージをお願いします。

桜井:自分の漫画を読んでいただけるだけでも嬉しいのに、ご購入していただけて、Twitterなどを通して感想までいただけるなんて、いつも感謝と喜びに限りがありません。

この喜びをどう伝えたらいいのか、いつも悩みます。読者の皆さま、いつも本当にありがとうございます!

──本日はありがとうございました!

作品情報

試し読みはコチラ!

第4回 みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞

『おじさまと猫』が第二位となった『TSUTAYA×comicspace「第4回 みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞」』は、次にヒットする「ネクストブレイク作品」を読者投票で決めるマンガ賞です。結果発表ページでは、大賞作品や上位10タイトルに加え、一緒に投票されたタイトル投票が多かった人気作品をご紹介しています。

結果発表ページはコチラ!

サイン入り単行本を読者プレゼント!

今回のインタビューの実施を記念して、桜井海先生の直筆サイン入り『おじさまと猫』単行本を1名様にプレゼントいたします!

下記の応募要項をご確認の上、どしどし応募くださいませ!

プレゼントキャンペーン応募要項

【賞品】
桜井海先生の直筆サイン入り『おじさまと猫』単行本1名様にプレゼント

【応募期間】
2020年7月1日(水)~2020年8月1日(土)23:59まで

【応募方法】
以下の2点の手順にしたがい、ご応募ください。

コミスペ!公式ツイッターアカウント @comicspacejpフォロー!

②公式アカウントよりツイートされた以下のプレゼント情報を、「#おじねこプレ」ハッシュタグを付けて、コメント付きリツイート

▼リツイートして頂くツイートはこちら!

★該当ツイートに、コメント付きRTインタビューへの感想『おじさまと猫』へのアツい思いを書いていただければプレゼントの当選確率がアップ!

★更に、漫画の口コミ情報サービス「comicspace」で書いた『おじさまと猫』のレビューへのリンクを該当ツイートに付けて、コメント付きRTしていただければ更に当選確率がアップ!

当選者へのご連絡

厳正なる抽選の上、当選者様のTwitterアカウントへDM(ダイレクトメッセージ)にてご連絡いたします。

その後、当選者様には【住所・氏名・お電話番号】をご連絡いただくことになります。プレゼントの配送に必要な情報となりますので、ご協力を宜しくお願い致します。

注意事項

・当選の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。
・当選に漏れてしまった方へのご連絡は致しません。あらかじめご了承ください。
・賞品発送時の紛失につきましては対応いたしかねますのでご注意ください。
・発送先住所は日本国内に限ります。
・当選権利の譲渡、換金は一切できません。
・転売を目的としたご応募は禁止させていただきます。
・応募内容に不明な点があった場合や当選後の連絡が不通となった場合、応募・当選を無効とさせていただくことがあります。あらかじめご了承ください。
・抽選に関してのお問い合わせにはお答えできかねます。あらかじめご了承ください。
・本キャンペーンは、「comicspace/コミスペ!」運営の株式会社comicspaceが主催しています。桜井海先生ご本人や、株式会社スクウェア・エニックスへお問い合わせ頂いても各位お答え出来かねますため、お控え下さい。また、本キャンペーンはTwitterおよびTwitter社とは関係ありません。
・応募時に記入いただく情報については、抽選および当選された方への賞品発送にのみ利用させていただきます。
・本キャンペーンは予告なく変更・中止させていただく場合がございます。あらかじめご了承ください。

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この記事を書いた人

八木 あゆみ

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