2020.06.26

実家暮らしの未亡人とバツイチ男。お隣同士の幼なじみが再会し日々を紡いでいく──。『1日2回』いくえみ綾【おすすめ漫画】

『1日2回』

ちょっと前ですが、いくえみ綾先生の新作『1日2回』の第1巻が発売されています。

まずはあらすじをご紹介しましょう。

園田れみ(39)は、夫と死別し母と娘と3人暮らし。ある日、隣に住んでいた鍵谷季(39)が離婚して戻ってきた。ふたりは小さいころから一緒に過ごしてきたが、それぞれ別の人と結婚し、今はどちらもひとり。過去のふたりの記憶の中にはいつも、ここにいないある人がいて……。

私が好きないくえみ綾作品は『I LOVE HER』と『潔く柔く』なんですけど(突然の自己紹介)、この人の描く作品は本当に色褪せないですよね。ついにアラフォーをメインに据えて来ましたが、それでも変わらず、圧倒的にいくえみ綾作品でした。

簡単に言うと、実家暮らしの未亡人と、離婚して実家に出戻ったバツイチ男という、お隣同士の幼なじみがアラフォーになって再会し日々を紡いでいくというお話。いかにもおあつらえ向きなシチュエーションで、あわよくば恋愛関係に……って展開を期待するじゃないですか。

でも全然恋愛しないんですよ。少なくとも1巻では。たぶん2巻以降も。

形は違えど、互いに別れを経験して、いわば心にぽっかり穴が開いている状態。それを恋愛で手っ取り早く埋めても良いのですが、いくえみ綾はそうしません。互いにつかず離れず、寄り添うような素振りは見せるのですが、描かれるそれは、恋人のものでもなく友達ともちょっと違う、幼いころから一緒にいたからこそ、互いに傷ついたからこそ通ずる距離感。

陳腐な言葉で表すならば「ソウルメイト」なのかもしれませんが、うーん、この唯一無二感は読んでこそ伝わるんだろうなぁ。

恋愛が無いにも関わらず、ものすごくいくえみ綾的に思えるのは、喪失感再生という部分が色濃く物語に落とし込まれているからだと思います。

元々「死」と、「残された者の苦しみや悲しみ」を淡く切なく描くのがものすごく上手い漫画家さんですが、本作でも度々「お別れ」がハイライト的に描かれます。

それは「離婚」であったり「人の死」であったり、時には「ペットの死」や「友達との別れ」であったりと様々。そうした数々のお別れと対峙した際の、登場人物たちの反応というのが、本作の一つの見どころとなっています。

ともすればものすごく暗い物語になりそうなものの、作品に流れる雰囲気はものすごく穏やかで、読むのも全然苦じゃないんですよ。自分の勝手なイメージですが、いくえみ綾には白いいくえみ綾黒いいくえみ綾の2パターンがあると思っていて、本作は完全に前者。ちなみにメインキャラの李はいくえみ男子っぽさはあんまりないので期待しないように。

本作のAmazonでの評価が高いのも納得。これはいくえみ綾ファンは好きでしょう。変に気負ったところもなく、ありのままに物語を楽しむことのできる良作だと思います。オススメ。

試し読みはコチラ!

この記事を書いた人

いづき

このライターの記事一覧

無料で読める漫画

すべて見る

    人気のレビュー

    すべて見る

        人気の漫画

        すべて見る

          おすすめの記事

          ランキング