2020.08.25
弱みを握られた抜け忍が、セクシー衣装で恥じらいながら奮闘! 忍者スチャラカOLお色気健全ギャグまんが!『先輩が忍者だった件』クサダ【おすすめ漫画】
『先輩が忍者だった件』
たとえ忍者が好きじゃなくても、セクシーな格好をした歳上女性の恥じらう姿がお好きなら、『先輩が忍者だった件』は、ぜひ読んでいただきたいマンガとなっています。
本作は恋愛系マンガが集う「楽園」コミックスには珍しい、ギャグテイスト強めの作品。公式サイトの言葉を借りるなら“忍者スチャラカOLお色気健全ギャグまんが”とのことです。
抜け忍OL、後輩に弱みを握られセクシー忍者に
若手サラリーマンの石田くんは忍者オタク。会社の机も忍者のフィギュア(※数千~数万円するハイクオリティなやつじゃなくてガチャガチャで取れそうなやつ)やグッズがいくつも並び、散らかっているような有様。そのだらしなさを直属の女性上司・服部から、頻繁に叱られる毎日を送っています。
そんなある日の昼休み。いつものように服部先輩に叱られ、落ち込んで会社の屋上から空を見上げていた石田くんは、激しい空中戦を繰り広げる、複数の忍者らしき人影を目撃します。そのうちのひとりが蹴り飛ばされ、ガラスを突き破って自社ビルの一室に突っ込むところを見た石田くん。問題の部屋へ入ると、その忍者の正体はなんと服部先輩だったのです。
実は服部は、忍の里から逃げてきた抜け忍。都会のオシャレなOLライフに憧れて里を飛び出した彼女は、ずっと正体を隠したまま仕事を続けていたというのです。しかし、忍者オタクの石田くんに、里からの追っ手との戦いを見られ、正体を知られてしまったのが運の尽き。
弱みを握られた服部は、石田くんが「いつかこんな日が来るんじゃないかと思って」用意していた(?)、手作りの忍装束(しのびしょうぞく)に着替えさせられてしまいます。
胸元は側面がざっくりと開いており、下は超がつくミニスカ。網タイツで覆われた足が露わとなった忍装束のデザイン(表紙画像参照)に、赤面する服部。年齢的にも厳しい露出だと、石田くんに不平を言います。
ここで誤解なきよう、少し石田くんを弁護しておきましょう。この忍装束は、機能性と造形美を兼ね備えた、彼なりの理想とする”忍者像”の体現であり、そこにスケベ心のような不純なものは、いっさい介在していない……はずです、多分。
仕事はダメダメでも、“好き”に対する情熱は真摯であることを理解した服部は、(パッと見ただけでスリーサイズが分かる特技があり、体にぴったりフィットした忍装束を即座にこしらえたという彼の発言を気味悪がりつつも)石田くんを信頼。
夢だった平穏なOLライフを守るため。恥ずかしい格好で、里の追っ手と戦い続けることを決意するのでした。
みんなクセが強いけどお人好し、魅力的なキャラクターたち
恥じらったり、石田くんにキレたりしながら……服部は、性懲りもなくやってくる里の追っ手を来る日も来る日も退けます。この追っ手の忍者たちもどこかおかしな連中ばかり。彼女たちとのやり取りも、毎回ニヤリとさせられます。
服部の新しい忍装束を見るや「メチャクチャかっこいいな!」と目をキラキラさせ、石田くんと意気投合してしまう“鶉(うずら)”に、彼女の相棒でありツッコミ役でもある“雀(すずめ)”。さらに、石田くんがつくった忍装束の資料が忍の里の手に渡ったことで、里の服飾担当である“耳木兎(みみずく)”は、石田くんに対抗意識を燃やします。
いつも恥ずかしい思いをして、周囲はクセが強い連中ばかりで、気苦労が絶えない服部。さすがに彼女が不憫……かと思いきや、忍装束姿を褒められて、煽てられると調子に乗ってサービスしちゃったり、自分をかばって川に落ち、風邪を引いた石田くんを気遣って忍装束の姿でお見舞いに行ったり。根の優しさもあるのでしょうけど、ちょいちょいまんざらでもない様子が微笑ましいです。
本作の登場人物はみんなお人好し。石田くんも先輩が本気で嫌がることはしないし、そんな石田くんだから、彼に危険が迫ったときは、服部は先輩として全力で助けます。それは追っ手の忍者たちも同様で。彼女たちが服部にちょっかいを出しに来るのは、離れて暮らす服部のことが心配だから……という面も、ちょっぴりあるようです。
基本的にお色気ギャグマンガでありながら、なんだかほっこりしてしまう読後感は、このあたりに理由があるのでしょう。
忍者を嫌っていた服部に、やがて変化が……
また、別の流派の忍者との出会いも。OLをしながら、忍者スキルを活かして産業スパイとしても暗躍する“お珠(おたま)”と出会い、友人になる服部。彼女との交流は服部にとって、忍の里の出身であることを否定してきた人生を見つめ直すきっかけになります。
忍の里になんて絶対に帰らない……最初はそう思っていた服部ですが、自分を羨む石田くんの能天気さや、お珠の考え方、それになんだかんだと悪い奴らじゃない旧知の忍者たちと接しているうちに、その頑なさにも変化が訪れて……?
全2巻で完結を迎えた本作。面白くて、恥じらう服部先輩がとってもかわいい……だけじゃなく、読み終えたとき、ちょっと肩の荷が下りるような感覚も得られるのではないかと思います。
忍者に興味がない方も、ぜひぜひ読んでみてください。
@クサダ/白泉社