2020.11.10
女性同士の幸せに満ちた恋愛模様が完結!優しくて温かい“好き”のカタチが詰まったオトナ百合漫画『定時にあがれたら』犬井あゆ【おすすめ漫画】
『定時にあがれたら』
本日ご紹介するのは、先日発売された第4巻で完結を迎えた、同じ会社で働くふたりの女性の恋愛模様を描いたオトナ百合漫画『定時にあがれたら』です。
最後まで優しくて温かい余韻が心地よい作品でした。
同性同士の心地よい関係に、ざわつく胸の内
とある企業の営業部で働く湯川佳代子さんは、おっとり、ほんわかした雰囲気の女性。彼女はひょんなことから、同じフロアの企画部に所属しているクールな見た目の女性・水城香里さんと、ときどき一緒にご飯を食べに行く仲になります。
ストレートの黒髪に、切れ長の瞳、耳には大きめのイヤリング。そんな水城さんの、“綺麗で華やかな美人”といった外見とはギャップのある、子どものように喜怒哀楽を表現するかわいらしさや、気を遣わず一緒に居られる心地よさ。彼女のことを知れば知るほど、湯川さんの胸はざわめきます。
そしてある日、ついに湯川さんの想いは言葉になって溢れることに。
「……私、水城さんのことが好きかもしれないです」
まるで学生同士の初恋のようなふたりに思わず悶え!
水城さんに告白したことを何度も後悔する湯川さん。これまでの関係が壊れてしまうかもしれない怖さ。心優しい性格もあって、彼女を困らせてしまうという不安にも悩まされることに。
一方、異性との恋愛経験はあっても同性に告白されたことははじめてで、戸惑う水城さん。オトナ同士の恋愛でありながらも、まるで学生同士の初恋のようなふたりの反応には、思わず悶えてしまいます。
第1巻の時点で、ふたりが互いの好意を確かめ、正式にお付き合いをはじめるまでが描かれる本作。ここに至るまでの紆余曲折はむず痒くも、相手への愛おしさや大切さの中で揺らぎ、戸惑う、恋愛の普遍的なドキドキが詰まっています。
最終巻ではちょっとドキドキするおはなしも!?
お付き合いをはじめてからも、ふたりの間には様々なことが起こります。湯川さんに新しくできた後輩に、水城さんがヤキモチを焼いたり……互いの家にお泊りしたり……。
水城さんが学生の頃からの友人との食事に出掛けるエピソードでは、いまの恋人について話す様子を友人たちに「香里のそんな顔はじめて見る」「その人のこと本当に好きなんだね」と指摘されたり。水城さんにとって湯川さんが、如何に特別な存在になっているかが分かります。
湯川さんが優しさのあまり水城さんに本音を打ち明けられず、やきもきさせられる場面も。けれどそんな湯川さんに水城さんはいつも真っ直ぐ歩み寄り、彼女の悩みを解きほぐします。
そして頭の中でぐるぐる悩んでしまうくらい、湯川さんが自分を大切に想ってくれているということに、水城さんもまた救われているようです。
そういった些細なすれ違いも含めて、ふたりの互いを思いやる優しさや、そんな大切な相手だから見せるかわいらしさにキュンとさせられながらも、彼女たちの関係は少しずつ進展。これから先のふたりの未来も見届けていたいという寂しさはありつつも、めでたく物語は幕を閉じたのでした。
ちょっとドキドキする第4巻の巻末のおまけ漫画まで、優しくて温かい“好き”のカタチが詰まった作品となっています。癒されたい方、キュンとしたい方、幸せな物語が読みたい方に、おすすめです。
©犬井あゆ/祥伝社