2018.02.21

【まとめ】圧倒的不条理なルールで生き残りをかける新感覚「デスゲーム」系マンガのススメ

さまざまな理由で集められた人間たちが、特定のルールに沿ってゲームに挑む。敗者は死亡、ないしは相応のペナルティを受ける「デスゲーム」

独自ギャンブルで大金と命を奪い合う『賭博黙示録カイジ』や、「だるまさんがころんだ」「縄跳び」など子供の遊びで否応なしに殺される『神さまの言うとおり』、未来予知のできる日記を所有する12人が殺し合い、生き残った一人が神になれる『未来日記』など、デスゲームを題材にしたマンガはひとつのジャンルとして定着した感があります。

今回は単行本が10巻未満(執筆時点)で手に取りやすく、手に汗握る熱い展開の「デスゲーム」系マンガを紹介しましょう。

本名を知られると……死ぬ

『たとえ灰になっても』(既刊4巻)

難病の妹を救う為には10億円がいる───高校生・四宮良真は交通事故で死亡したあと、天使クロエルが支配する地獄の狭間へと飛ばされた。そこは本名がバレると、灰になってしまう世界……。名前を偽り、容姿も性別も偽り、命と金を賭けた人生逆転のデスゲームが始まる!

デスゲームと一言でくくっても、『バトル・ロワイアル』のように暴力で殺し合うシンプルな武力闘争から、知恵や謀略を駆使する頭脳バトルまで幅が広いです。その中でも『たとえ灰になっても』(鬼八頭かかし/スクウェア・エニックス)は後者。

「ゲームに勝つ」だけではなく、「相手の本名を暴く」という二つの勝利条件が用意されているのがキモになっています。

予選は相手の申告を疑ってダウトができる半丁サイコロ。本戦は誰が鬼なのか隠匿されている鬼ごっこ。ゲームに勝つには、どちらも嘘をつきながら相手をハメる必要が出てきます。さらに偽装した容姿や言動から相手の本名を探っていくスリリングさが加わることで、駆け引き必至の舌戦が繰り広げられます。

主人公の四宮良真=偽名:ユキは自分が犠牲になると見せかけて、善良で内気な女の子を情に訴えて騙す! その瞬間の冷徹な表情の恐ろしさたるや。フィクションだからこそ許される、他人を裏切る薄暗い快感を与えてくれるんです。

一方、ユキと一緒に本戦に勝ち上がってきた偽名:常称寺麗奈(本名は執筆時点で不明)は、自分のために犠牲となった少女の敵討ちを誓う高潔な精神の持ち主。人間の背反する感情を浮き彫りにしていて、登場人物への感情移入を加速させます。

外見は全員が美少女。そんな彼女らが裏切られて絶望に顔を歪ませたり指を切り落とされながら絶叫する苦痛の描写も容赦がありません。絵柄が可愛いだけにすさまじいギャップです。

参考:「ファラリスの雄牛」(パブリックドメイン/Wikipediaより)

『嘘喰い』でも衝撃だった、中に入れた人間を炙り殺す拷問装置「ファラリスの雄牛」も登場。拷問シーンが、視覚を通じて痛覚に伝わってくるほど説得力のある「痛い」絵に仕上がっているんです。

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おもしろいマンガを描けないと……死ぬ

『漫殺-マンコロ-』(『少年ジャンプ+』連載中)

挫折した「元」マンガ家志望の高田希望は、謎の異空間「マンガコロシアム」に召喚されてしまった。同じような「マンガ描き」が集められている中、「マンガの神」を名乗る男が唐突に告げたのは、マンガで生き残りをかけたデスゲーム「漫殺(まんころ)」!? 高田は過去に捨てたマンガへの情熱を取り戻し、生き残りをかけてマンガを描き続ける!


他の参加者よりも面白いマンガを描きつづけなければ殺されてしまう
、一風変わったテーマのデスゲーム『漫殺-マンコロ-』(へちぃ/集英社)。負ければ消しゴムで削り取られたり、脳みそをチューチュー吸われたり、修正ホワイトで溶かされたりと、コメディな絵柄に比して敗者へのペナルティがなかなかエグいです。

第二次審査で高田が与えられたお題は「野球マンガ」。ところが高田には興味がないテーマの上に、過去に野球マンガでメジャー誌に連載を持っていた大ベテランに勝たねばなりません。第三次審査は「イイマン」(SNSにおける「いいね」のような評価ポイント)をたくさん稼ぐルール。対する相手はインターネットでバズらせるのが得意な、短編マンガを量産する人気者です。

強大なライバルたちに追い込まれてピンチになっても諦めず、機転を利かせて勝利する高田の熱いマンガ魂がうなる! マンガに真摯に取り組む彼自身の姿が、そのまま少年マンガの王道主人公にも重なるというメタな構造。一度夢を諦めた高田にとって、デスゲームに勝ち進むことがマンガ家としての再生の物語にもなっています。

メインヒロインの絵村さんは健気で愛くるしい正統派ヒロインで、高田にも好意的。しかし、マンガの面白さは高田を上回る最強のライバルでもあります。いずれは高田と『漫殺』するのだろうか、これからも目が離せないマンガです。

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就活で失敗すると……死ぬ

『サツリクルート』(全7巻)

4大財閥が国家よりも強い権力を持つ日本。蓼丸(たでまる)財閥の跡取りだったカズヤは父の失墜により没落。無一文となったカズヤの前に、悪魔・アガリが現れる。アガリと契約を結び、直前の発言を消せる異能力「消失(デリート)」を手に入れたカズヤ。その代わり、就職活動で一度でも不合格になれば即死亡というリスクを背負う。他の就活生にも悪魔と契約を交わした異能力者が紛れ込んでいる中、死と隣り合わせの就職活動がスタートする。

『サツリクルート』(MITA,吉宗/小学館)は就職活動という馴染みのある活動が、デスゲームに変化する衝撃的な舞台設定。加えて、それぞれが固有の魔法で相手の足を引っ張りあい、面接官を騙す異能力バトルの側面も持ち合わせています。二人同時面接では相手の発言を削除したり、ディベートで相手と入れ替わって妨害したり。就活試験を舞台にした異能バトルという、新たなデスゲームの噛みごたえが感じられます。

「感情を増幅させる過剰反応」「相手が嘘をつけなくなる」など面接で有利になる力をもつ就活生もいれば、面接官にも「視界傍受」でカンニングを見破る能力者もいて、巧みに人をあざむいて内定を得ていく知能バトルが楽しめます。

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両想いじゃないと……死ぬ

『ラブデスター』(既刊9巻/4〜9巻はデジタルのみ)

廃墟のような実験都市に突然転送された月代中学校の三年生たち。転送したのはファウストと名乗る試験官だった。
「君たちには最も愛する人物に、命をかけて『告白』してもらう」
誰かが誰かに告白して、両想いの場合は故郷に帰す。不成立の場合は、手首のリング(測定器)が発動して爆死。生徒会長の若殿ミクニたちは、ファウストに真実の愛を示すため「愛試死実験(ラブデスター)」に立ち向かう!

『ラブデスター』(榊健滋/集英社)では、バレンタインやお見合いといった多幸感に満ちた恋愛イベントが、一転して殺伐としたデスゲームに変化してしまいます。イケメンがいろんな女とキスしまくって保険をかける浅ましさ。カップルの相性測定器を巡っての醜い争い。デスゲームの魅力の一つとして、死に直面した人間の業を描くことが挙げられます。『ラブデスター』でも恋愛に絡めた人間の醜い本性を浮き彫りにしているんです。

逆に姫夜カオル(男)や蝶野ゆり(女)は同性愛者ゆえに、「片想いする相手と成就して、故郷に生還することはできない」と最初から諦めています。それでも想い人を支えて助ける、献身的な行動の数々。カオルとゆりの純愛もまた、人間のひとつの本質なんでしょう。

生徒会長の若殿ミクニは責任感が強く、誰も死なせたくないように考えて行動しています。主催側のファウストやレイディたちを出し抜いて、全員での帰還を試行錯誤していく姿がカッコイイ。その他大勢のモブキャラが「告白したい、できない、両想いになりたい」とルールの中でもがき苦しむ中で、ミクニは常にルール破りを狙う! 他のデスゲームにはあまり見られない珍しい行動で新鮮です。

恋愛を主軸としたデスゲームの中で、ミクニは「恋愛が大嫌い」というところもミソとなります。皇城ジウ(男)は愛月しの(女)が好き。愛月しのは若殿ミクニ(男)が好き。しかし、ミクニは恋愛自体を否定。一方通行で行き止まる恋のベクトルが、やがてジウとミクニの関係にも歪みを生んで広がっていきます。二人の思惑がズレていき、巻を重ねるごとに緊張感が高まっていく人間ドラマが見事な一作です。

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『バトル・ロワイアル』『GANTZ』の大ヒットを契機に、マンガやアニメで数多くのデスゲーム作品が興隆している昨今。

すると体系化されて、「ルール説明の時に反抗的なモブキャラがまず殺される」「司会者は殺しをいとわない享楽的な性格」「家庭環境が複雑な奴がいる」など、デスゲームあるあるネタも増えてきました。

そんな共通点にも着目しながら、大量のデスゲーム系マンガを読み比べるのも面白いですよ。

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かーずSP

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