2020.12.11
とある女子校で教師をしている男の日常を描いた、シュール&ナンセンス・コメディ!『女の園の星』和山やま【おすすめ漫画】
『女の園の星』
本の発売に先立って、Webの方で「このマンガがすごい!2021」のランキングが発表になりました。
オトコ編の1位は『チェンソーマン』、そしてオンナ編の1位は『女の園の星』でした。筆者(いづき)もオンナ編の選者として参加していますので、是非誌面の方もチェックしてみてください!(宣伝)
さて、オンナ編1位を取った『女の園の星』ですが、昨年の「このマンガがすごい!2020」オンナ編で2位、「このマンガを読め」で1位と話題をさらった『夢中さ、君に。』の和山やま先生の「フィールヤング」連載作品となります。なんとこれが初めての連載ということで、あっという間に戴冠ですよ。すごい。
最高にくだらないなんてことない日常
内容は、とある女子校で教師をしている男の日常を描いたもの。星というのは期待の星だとかそういう意味ではなく、苗字が星ってこと。……もうこれ以上の情報は無いです。いや、ホントにこのままなので。
これといった大きな事件が起こることも無く、あったとしても日常の中で普通に起こりえるアクシデントのようなもの。
記念すべき第1回は、生徒が描いた絵が何なのか思案し続けるというもので、ずっと職員室の椅子に座り続けていますし、とある回では同僚と飲みに行くだけ。ある回は生徒が描いた漫画を添削するとか、本当になんてことない風景が続きます。
そんな感じで圧倒的に「静」の絵面が続くのですが、そこで繰り広げられる会話や思考がとにかくシュール&ナンセンスで笑えるんですよ。
本当に小さいことを、思考を巡らせ歪ませて膨らませていったり、会話をこじらせて膨らませていったり、その転がし方が他には無い独特のセンスで、「くだらない」というただ一点において、強烈な印象を残します。感動とか、強い怒りとか、深い悲しみとか一切なし。恋愛なんてもってのほか。人間関係は希薄。教育に対する熱意も無し。
とことんくだらなさを追求した、清々しいほどに馬鹿馬鹿しいストーリーです。(いや、ストーリーなんてものもないな)
このマン1位雑感
現在、女性向けマンガで最も「会話」を描ける漫画家・作品は、ヤマシタトモコ先生の『違国日記』だと思っているのですが、動きの無い中で会話を中心としたコミュニケーションで読者の心を掴むという意味では、和山やま先生も実は引けを取らないのでは。
そしてそんな2人が連載をしているフィールヤングって雑誌は、とんでもないですね。
1位だからといって、昨年2位の『夢中さ、君に。』より本作の方が明らかに勝っているとは思いませんが、独特の「尖り」や「クセ」が本作では少し薄れ、より間口が広く受け入れられるようになったなという印象で、それが爆発につながったのではないかなと思います。
あと、和山やま先生のこのくだらない話ってのは、単発で読むよりも、回を重ねてじわじわ笑いのゲージを溜めていった方がより楽しめる感はありますね。
また今年は、昨年の『さよならミニスカート』のようにテレビを巻き込んで話題になったりするような作品も無く、全体的に小粒な印象で、ライバル不在という印象もありました。得票数も圧倒的で、まさに完勝。何気に5位に『カラオケ行こ!』も入っているなど、今年は和山まや先生一色という感じですね。
というわけで、2年続けて大きな話題を呼んだ和山やま先生、2021年の活躍にも大いに期待したいと思います。
©和山やま/祥伝社