『京極家の結婚』

BLですけど、タイトルが結婚です。

よくある話なので特に疑問にも思わなくなってきた今日この頃ですが、この作品の場合は個人同士の気持ちからの結婚というよりは、政略結婚の様相を呈しており、ちょっと様子が違います。

カップリングは「親が俳優のイケメン×一族が政治家の政治家秘書」となっており、受の父親は、時の内閣で法務大臣を務めている大物政治家です。

ただし政治家としての出来はともかく私生活はアカン感じで、隠し子がいたりします。下半身に締まりがないのはよくないですね。

父親の作った異母弟と暮らすことになり、さらに偶然その秘密を知ってしまった元同級生の尊も同居する流れになり、誠志郎はプチパニックです。挙句、尊がふざけてキスをしてきたところを週刊誌に押さえられ、すわ大臣の息子に同性愛スキャンダルか！ という展開になるかと思いきや、法務大臣は言い放ちました。

「同性愛を認める法案を成立させるために、おまえらそのまま報道を認めて結婚しろ」

まさかの親からの結婚命令。しかも付き合っているわけでもない元同級生のバツイチ（男）とです。

法案成立の追い風にするために息子の人生をぶん回すお父様、政治家としてはやり手、なのかもしれません。一般家庭の息子なら絶縁上等な命令でも、政治家一族の息子は受け入れてしまいます。マジか……。

完全に巻き込まれた感のある尊ですが、どうも彼、誠志郎のことが好きな気配がします。そして、誠志郎も、もしかしたらもしかするかもしれない雰囲気がないとは言えません。

形から入る恋もありだとは思いますが、日本全国に知れ渡って結婚式を挙げる男同士の恋がどう転がるのかは、予想するのがなかなか難しい気がします。しかも同居するのがまだ幼稚園児の（便宜上、尊の息子という設定にすることにした）異母弟です。波乱の予感しかしない組み合わせです。

心がどう転ぶかはわかりませんが、尊は既に誠志郎を押し倒していますし、同居人の幼稚園児には愛し合っていると宣言しているこの偽装結婚カップル。この先どう関係性が変化していくのか、目が離せません。

イケメン同士の幼馴染カップルの今後が最高に楽しみです。

伏線らしきものももそこここにちりばめられており、明らかに序盤感のある1巻。BLの刊行スピードを考えると待つのも仕事になりそうですが、気合を入れて待機しましょう。

©木下けい子/木下けい子