2021.02.05
恋に真っ直ぐな主人公と、振り回され系ツンデレ王子が繰り広げる、爽やかさ100パーセントのトキメキ系青春恋愛マンガ!『春と嵐』香魚子【おすすめ漫画】
『春と嵐』
香魚子先生の新連載『春と嵐』の第1巻が発売されました。それではさっそくあらすじからご紹介しましょう。
つぼみは高校2年生。1年生のときに担任だった三宅先生に片想い中。バレンタインに渡すつもりだった手編みのマフラーは7月になってようやく完成。まもなくやってくる先生の誕生日に渡したいけどあいにくその日は日曜日……。同クラの矢吹風馬が先生の従弟だと知り取り次いでもらおうとするが、学校イチのイケメンの風馬は想像を絶するひねくれ者で……⁉
振り回され系ツンデレ王子
帯には「吹き荒れるツンデレ旋風」の文字。
あらすじ紹介にもある通り、相手役の風馬については「想像を絶するひねくれ者」との評があることから、どんなサイコ野郎なのかと思いきや、読んでみての個人的な感想は「いや、あたりは多少きついけど、別に死ぬほどひねくれてはいないし、なんなら結構な常識人じゃね?」って感じだったりします。むしろ相手役よりも、ヒロインのつぼみの方が印象的にはヤバい。
冒頭の通り、元々先生に恋する女の子だったつぼみ。せっせと編んだマフラーをどうしても先生の誕生日に渡したい! けれど、その日はあいにく日曜日。
そんな中、風馬が先生の従弟であり、ちょうど集まって誕生会をするという情報をキャッチし、「その食事会どこでやるのか教えて!」と風馬に突撃。それに対して風馬が「図々しい」ときつめの言葉でたしなめるわけですが、それに対してつぼみは「なんでそんなこと言われなきゃなんないの!」とショック&ご立腹。
いや、まあ放った言葉はきついけれども、別に筋違いなことは言ってないと思うんですよね。その後、紆余曲折あり、結局風馬側が折れてセッティングするに至ります。
この初っ端のやり取りが一番わかりやすいのですが、つぼみはとにかく自分の感情・価値観というものがど真ん中にあって、自分の想いに対して真っ直ぐに頑張ってしまう性格の持ち主。盲目的というか、悪く言うと自分と好きな相手という狭い世界で完結していて、他の人を顧みることができない不器用さがある。
一方、相手役の風馬はぶっきらぼうな物言いで他人に対して壁を作るとっつきにくい性格の持ち主ではあるのですが、クールでひねくれているがゆえに、いい意味で状況を俯瞰して見れている分、相手に対して理解する、譲歩する、歩み寄る余裕がある。
そんな二人がぶつかったら、そりゃあ風馬が折れる側に回らざるを得ない(現実世界においては拒絶という選択肢もあるわけですが、少女マンガでそれだとお話進みませんので)。盲目的で直情的、加えて行動的なつぼみは、風馬からしたら危なっかしくて放っておけない対象として映るんですよね。
ツンデレ王子様って、普通少女マンガだとヒロインを振り回す側に回るのが常なのですが、本作の場合は真逆。風馬が圧倒的に振り回されます。
爽やか&トキメキど真ん中
展開される物語自体は、爽やかさ100パーセントのトキメキ系青春恋愛マンガ。裏表一切無しの直球勝負。読み切り時代、なかなか毒味の強いダークな物語を描かれていた香魚子先生を知る者としては、現在の変わり身が信じられないぐらいなんですが、このあとダークな要素が噴き出すって方向でワンチャンないですかね? そうですか、ないですか。
傍から見るとなかなか難儀な性格をしている2人ですが、そんな設定とは裏腹に、1巻終了時点で結構なところまで関係は進展します。結局のところ、2人ともめっちゃチョロいんですよね(そしてそこが可愛らしくもある)。
極めて順調な恋路。しかしながら、風馬からしてみたらつぼみは「好き」でありつつも、「放っておけない」という要素が強く、一方のつぼみにしてみても、「恋の雰囲気に舞い上がっている」といった感じ。互いに真に好きあうというところに至るまでには、もうちょっと時間が必要そう。
2巻はまさにそういったところを掘っていくような物語展開になると思われ、1巻以上にトキメキ要素が強化されていくことでしょう。純度の高い少女マンガを読みたいという方には、まさにうってつけな一作となっております。
©香魚子/集英社