本当に分かるとはどういうことか

──『うるわしの宵の月』に対する読者の反応はいかがですか？

やまもり：今作に限ってはヒーローよりヒロインの方が人気で、ヒーローの人気がちょっと危ぶまれているくらいです（笑）。「宵ちゃんが好きです」みたいなコメントは本当に多いですね。かっこいい女子ってやっぱりみんな好きなんですね。

──この作品のテーマとして置いていることがあれば。

やまもり：『椿町ロンリープラネット』の時は、「孤独なふたりが出会ったらどうなるか」をテーマに据えていたのですが、『うるわしの宵の月』はいまのところテーマを定めていなくて。

男の子っぽい女の子の初恋！ というふわっとした……可愛い話かなっていうイメージくらいです。ただ、ここから何かになっていくかもしれないですけど、今は私が描いていて楽しい！ というのがテーマかもしれません。

──ふたりとも周りに王子と言われているものの、別に自分自身が望んでる訳でもないし、周りが持ってるイメージとの乖離をこれから本人がどう受け止めていくんだろうと思います。

しーげる：そのあたりは一応、裏テーマですね。僕の場合は、先生が本当に描きたいものを描いて欲しいけれども、大きめのテーマとして意識してもらいたいことはお伝えしていて、今作に関しては周りのキャラづけや理解と、本人が思ってることが違うことに対して、「本当に分かるとはどういうことか」を一応置いて貰っています。

やまもりさんのキャラクターの作り方が本当に凄くって、誠実というかキャラをちゃんと知っていこうという感じがあるので、これからどう展開していくのか楽しみにしています。

周りのキャラづけや理解と、本人が思ってることとのギャップ。

──市村先輩も印象的なセリフがたくさんありますが、あれらのセリフは勝手にキャラクターが喋ってくれるイメージですか？

やまもり：先輩のようなタイプは初めて描くキャラなので、何を考えてるのかよくわからないんです（笑）。まだあまり萌えポイントが分からないので、例えばここでどういう行動に出たらキュンとくるかなどを人に聞きながら、探り探りやっています。

──最近、市村先輩のことをかわいいなと思うことが増えてきました。保健室に入ってきた時はすごいチャラいなって思いましたが……！

体調不良の宵ちゃんが保健室に行くと、たまたま先輩がいて……！

やまもり：あれ、やばかったですよね（笑）。でも、ちょっと可愛さが出るというか、なんとなく市村先輩のポンコツ感がにじみ出てきたと言いますか。少しポンコツな王子のほうが読者の人気を感じます。完璧すぎるよりも、愛嬌を感じるんでしょうか？

猫みたいなかわいい一面を見せる、市村先輩。きゅんが詰まった保健室エピソードはぜひ本編で！

物語の世界観を彩る、街とファッション

──これまでの作品も金沢を舞台にしていたりと、物語の舞台を節々から感じますが、今回の舞台のイメージはどのように捉えていますか？

やまもり：一応東京のイメージではありますが、『北沢カレー食堂 茄子おやじ』さんも、実際にお伺いしたご縁で登場いただいています。でも、下北沢なイメージではないとしーげるさん言ってませんでした？

しーげる：僕じゃなくて、やまもりさんが最初に言っていた気がしますよ（笑）。下北沢はサブカル寄りなイメージだけど、もうちょっと分かりやすくお洒落！ な街の方がイメージにあるのかもしれません。やまもり先生もシュッとしておしゃれな方なので、スタイリッシュな街並みが似合いそうです。

──デートで服を着替えてるシーンが好きで、ファッションがキャラクターをあらわしていてとても素敵だと思います。キャラクターのファッションはなにか参考にされていますか？

やまもり：今は男の子っぽい服装の参考に、「UOMO」や「FUDGE」、「MEN’S NON-NO」などをよく見るようにしています。前々からメンズ雑誌はよく見ていましたが、この作品になってからよりいろんな年代の雑誌を見るようになりました。

──今作に限らず、作品を作る時はキャラクターごとに参考にする雑誌を決められていますか？

やまもり：あります！ 前作の『椿町ロンリープラネット』では、主人公は「FUDGE」のふわっとしたナチュラルでガーリーな感じや「MORE」のきれいめな感じ。主人公の友達は「Seventeen」などのちょっと若めのモデルにしたりと、いろいろ雑誌は分けてますね。

ただ、宵ちゃんはまだちゃんとした私服を出していなくて、もうちょっと女の子っぽくてもいいのかなと思いつつも迷っています。

──実際に高校生くらいの年齢は、自分自身の服装に模索する頃なので、宵ちゃんと先生のファッション研究が同時進行しているのですね。制服がミニのタイトスカートで韓国の制服のように感じますが、どのようにして制服を決めましたか？

やまもり：K-POPを意識して、これがやりたい！ という流れではなかったのですが、宵ちゃんがあまりにもプリーツスカートが似合わなかったんです（笑）。似合う制服を探すなかで、タイトスカートが流行っているので着せてみて決めました。

最近増えてきたジェンダーレス制服のスラックスを履いて、男の子によく間違えられるといった設定も考えてみたのですが、そうすると逆に宵ちゃん自身がジェンダーを意識してしまわないかなど検討し、スカートにしました。

強い世界観を持つ作品に惹かれる

──先生が影響を受けた漫画や、好きな漫画家についても教えて下さい。

やまもり：漫画を描き始めた頃からよく読んでいるのは、いくえみ綾先生ですね。もちろん今も大好きで、いくえみ先生の漫画の、生活を覗き見しているような、生々しい感覚はさすがの一言です。

最初に読んだ作品が『おうじさまのゆくえ』（短編集『プレゼント』に収録）という読み切りだったんですけど、衝撃を受けましたね。雑誌の「Cookie」創刊2号目に載っていて、学校で友達に借りて読んだ時に、そのページだけ輝いて見えました。

友達がたまたま、いくえみ先生の漫画を集めていたのでいろいろ借りた中に、オムニバス漫画の『バラ色の明日』があって、その中のイチとナナという男女の双子が出てくる話で、イチの「月に一度、ありもしない臓器が痛む」というモノローグが今でも胸に残っています。

すごい言い回しだなと、こんな表現をする人がこの世にいることが驚きでしたね。いくえみ先生の漫画って色褪せないし、いつ読んでも心にバシバシ響くので、最近は逆にあまり読まないようにしています（笑）。引力がすごいので、引っ張られちゃうんです。

──いま連載してる漫画で楽しみにしているタイトルはなにですか？

やまもり：連載している漫画だと『ダンジョン飯』がすごく好きです。九井諒子先生は本当に天才ですよね。本誌の「ハルタ」についていたおまけの落書き本を見ても、ご自身が漫画内の世界の解像度をあげるために描かれているような感じがします。

ファンタジーの設定がしっかりしていて、全てにおいて矛盾がないように作っているのはさすがです。キャラクターの行動も全然違和感なく進みますし、世界観が作られてるので思わず没入してしまいます。

──最後に、5月13日に第2巻が発売しますが、今後の見どころや描いていきたいことについて教えて下さい。

やまもり：これから新しいキャラクターも増えるかもしれないのと、宵ちゃんと先輩がお互いどんどんじれったい感じになっていく予定なので、楽しんでもらえたらと思います。これからも頑張りますので、よろしくお願いします。

──本日はありがとうございました！

作品情報

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【応募期間】
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【応募方法】
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第5回 みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞

日本全国に数多くの書店とレンタル店を展開する「TSUTAYA」が、漫画に特化した読書記録・管理サービス「comicspace」と、電子書籍配信サービス最大手の「ブックライブ」のサポートのもと、 【第5回 みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞】の投票受付を、2021年4月1日（木）より開催中！

本賞は「2021年3月31日現在で単行本が最大5巻まで発売している未完結の漫画作品」を対象としており、次にヒットすることが期待される、まさに「ネクストブレイク作品」を読者投票によって決める漫画賞です。

大賞作品と各部門賞は6月中旬頃に授賞式イベントにて発表し、全国TSUTAYAの書籍販売・レンタルコミック売場にて大々的に展開を行い、読者からの作品に対する想いをのせた投票コメントも全国の売り場にて紹介予定です。

投票受付は2021年5月16日（日）まで！ 今年はどの作品が大賞を受賞するのか！？ ぜひみなさんの投票をお待ちしています！

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©️やまもり三香/講談社