『ガチ恋粘着獣 ～ネット配信者の彼女になりたくて～』

「ピッコマ」や「ゼノン」ほか、多数のマンガ配信サイト・マンガ配信アプリで連載中の『ガチ恋粘着獣 ～ネット配信者の彼女になりたくて～』の第2巻がついに物理書籍化されました。

電子書籍版は2020年11月に発売だったので、実に5ヶ月の間隔を空けての待望の物理書籍化です。

主人公は、女子大学生の輝夜雛姫（かぐや ひなき）。インターネットでは「ヒナ」と名乗っています。ヒナはチャンネル登録者数100万人超えの男子3人組配信グループ「コズミック」のメンバーのひとり、スバルに“ガチ恋”中。

Twitterではスバルへの愛をアピールし、スバルの誕生日にはケーキを持って自撮りを投稿。配信は逃さずチェックし、時には投げ銭機能も使用します。そしてその愛の大きさ故、ほかの視聴者が自分よりも激しいアピールをしていると、その視聴者へと憎悪の感情を向けることも……。

一方で、自分の投げ銭に気づいたスバルから、配信中に名前を呼ばれたりしたときには、天にも昇るような喜びを感じるヒナ。スバル中心の生活を送る彼女は、極めて感情の浮き沈みが激しい毎日を過ごしています。

そんなヒナの生活は、スバルを名乗る裏垢からの「よかったらご飯でもどうかな？」というDMを境に一変。

実はスバルの正体は、とんでもないカス野郎。“脈アリ”と判断したファンに手当たり次第に手を出し、面倒くさく感じると捨ててしまうような、最低の男だったのです。そうとは知らず、スバルの気持ちを繋ぎ止めたい一心で、あの手この手で迫るヒナ。

けれどスバルの周りには、常にほかの女の影がチラつき、ついにヒナはもうひとりの厄介なスバルガチ恋女“りこめろ”と相まみえることに……？

どの登場人物も愛情表現が歪んでいて、独善的で。現実に居たら極めて厄介そうな人たちです。けれど物語を追っていくうちに、いつしか自分の欲望に素直に生きる彼女たちの鮮烈さに、強く惹き付けられること必至。

そのヤバさすら愛おしく感じてしまうのは、彼女たちが持っているその醜い感情は、誰かや何かを本気で“推した（好きになった）”経験のある者ならば、多かれ少なかれ心を過ぎったことのあるものだからかもしれません。

2巻では登場人物たちの行動がさらにエスカレート。取り乱し、慟哭し、ブチ切れて……。なのに時折とても幸せそうな表情を見せるヒナやりこめろから、最後まで目が離せません。

ちなみに、物理書籍版にはおまけの4コマ漫画など、いくつかの描き下ろしページが追加されているので、これから読まれる方にはこちらがおすすめです。

電子書籍版は4巻まで発売済み。物理書籍版の3巻は6月18日に発売

この2巻でヒナとスバルの物語はひとまずの完結を迎えた『ガチ恋粘着獣 ～ネット配信者の彼女になりたくて～』。しかし、誰かに“推される”者がいる限り、生まれ続けるのがガチ恋勢。電子書籍版は既に3巻、4巻が発売しており、3巻からは“新たな獣”・琴乃のガチ恋の物語が幕を開けます。

コズミックのメンバー・コスモへの想いが募り、思わずほかのファンを攻撃してしまいそうになる気持ちと、“厄介なファン”になりたくない気持ちがぶつかり合う琴乃の葛藤も、ヒナとはまた違った切実さで必見。

物理書籍版の3巻も2021年6月18日の発売が決定したとのことなので、こちらもたのしみです。

©星来/竹書房