2021.09.23

妾腹なのに父に溺愛されて当主になった弟×跡目争いに敗れて死んだはずの兄。相手が死人でも愛しちゃう弟がちょっと怖いホラー系兄弟BL!『屍と花嫁』赤河 左岸【おすすめ漫画】

『屍と花嫁』

ちょっと複雑な設定のオリエンタルBLなんですが、名家の兄弟ラブだとだけ認識して読み進んでいただければ問題ございません。

兄弟だけど血がつながってるのは半分だけという設定だけで、ドロドロな何かが思い浮かぶのではないでしょうか。ええ、その通りです。

カップリングは、「妾腹なのに父に溺愛されて当主になった弟×跡目争いに敗れて死んだはずの兄」となっております。

世間的には、妾腹の子と正妻の子が仲良く手を取り合って家を盛り立てていくなんてありえないという見方で、後継争いは井戸端会議のゴシップネタにされておりました。

お話は、兄が弟の婚約者に毒を盛り、弟は兄を粛清しますが、毒を飲まされた婚約者は”人に見せられない顔”になってしまった──というショッキングな設定から始まります。お兄ちゃん、初っ端から攻の手にかかって死んでますやん……。

しかし、顔が爛れて人に見せられなくなってしまった婚約者は、他者の目が届かない部屋に下がってベールを脱ぐと、きれいに整った顔をしています。
さらにその婚約者は、どうやら男ですし、弟は婚約者に対して名前を尋ねるという謎の対応をしたりしています。BLなんですがミステリのような謎が散りばめられているのです。真相がわからないまま読み進めていくと、少しずつピースがそろっていきます。

婚約者と皆が思っている人物は、実は粛清されたはずの兄であること。
弟の本物の婚約者は、傷一つない状態で地下に軟禁されていること。
そして──兄は婚約者に毒を盛ったのではなく、婚約者のたくらみに嵌められて、婚約者を守るために毒杯を口にして息絶えたこと。

そうなのです。
タイトル通り、お兄ちゃんはガチの死者です。屍。キョンシー。

弟が道士のもとに兄を持ち込み、生きる屍として兄を現世に呼び戻してしまうのです。肉体は死んだまま目覚めた兄は記憶が混濁し、自分を弟の婚約者だと思い込んでいました。それでも意識も思考もはっきりしており、生者とかわりません。記憶も、ある時にしっかり取り戻します。

弟は兄が死んでいても愛しているし、兄は自分の死を自覚しながらも弟と共に死者として生き、弟の幸せを願っているという度を越した相思相愛ぶりです。最終的にはハッピーエンドなんですが、全体的にそこはかとなくホラー感が漂う純愛で、萌えというよりは少し背筋が冷たくなる作品です。

幸せになれてよかったねと心から思うんですが、ちょっと半歩引いてしまうこの気持ち、読んでいただければ共有できると思います。ホラー系が苦手じゃなければ、切ない系BLとしてとてもおすすめです。

この記事を書いた人

アキミ

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