2021.09.29

彼女から1日連絡がないと不安で耐えられない女の子の恋は、そこまで重くない。『ひめちゃんは重い女』花束葬式【おすすめ漫画】

『ひめちゃんは重い女』

彼女から1日連絡がないと不安で耐えられない女の子の恋は、そこまで重くない

恋愛に関しての「重い」という感覚は悩みの種のひとつ。人によってはネガティブイメージで地雷とかメンヘラとか呼ばれることすらある。でも人によっては、大変だよね、苦労多いよねという共感だってたくさんある。一方で、いやそんな意外と気にしないけどねという相手側への共感もある。この作品はそんな、等身大の「重い」子たちを描いた恋愛漫画だ。

大学2年生の女子・姫乃(ひめの)には、(よる)という大好きな彼女がいる。姫乃はどちらかというとフェミニンで、夜はボーイッシュな王子様タイプ。

お互いが大好きで2人一緒にいるときは幸福にあふれている。しかしちょっとでも連絡が途切れると、不安で仕方がなくなり、死にそうになる。ラインが28時間返ってこない時は、心配で「あんなに好きな人が居なくなったらどうしよう」と涙がポロポロ流れる。

夜はというと「不安にさせてごめんね」と笑顔。彼女に対して「重い」とは一切考えていない。むしろ彼女は、スマホを全然見ないあっけらかんとした女性だ。

ビアンの姫乃とゲイの(はじめ)、重い女子・男子の共感トークがこの作品のキモになっている。姫乃は考えすぎるタイプで、ずっと悩んでいるけれども、それが夜にとって迷惑なんじゃないかとも苦しむ。そこで、悩みを聴いてくれる一の存在は非常に貴重。

「最近やたら夜を褒める知り合いがいてさぁ」と愚痴った時、すかさず一は「それ女ですか?」「それは嫌ですね」と返答。

ここで「だよね!」と言えることで、姫乃の不安はだいぶ緩和されている。さらにセクシャリティの繊細な部分も、このふたりの間だとさらっと話すことができる。

姫乃は話題に出した知り合いが「そんな怒んなくて大丈夫だよー?あたしレズじゃないし(笑)」とデリカシーのない発言をしたことを明かす。すると一は「言いたくはないですけどよくありますよね」「ビアンじゃないからって人の彼女に♡飛ばしていいと思ってるんですかね」と、男性が好きな男性の立場でスパッと答えてくれる。

「重い女」という姫乃の悩みはあるものの、実際読んでみるとそこまで問題があるわけじゃない。程度の差はあれ、特別な病理とかでは決して無い。加えて同性愛の扱いもフラットなものとして描かれている。「返事がこない」のような些細な、でも本人たちには重要な恋愛の悩みの流れのひとつとして挟まれているようなさじ加減だ。

苦しさにどこで折り合いを付けるか。姫乃は夜に直接慰めてもらったり、一に話を聴いてもらったり、友人にチョロいと言ってもらったりすることで、「重さ」はきれいに昇華され「幸せ」の比重が大きくなっている。これは姫乃が依存先を複数に分けているからこその救い。

一の恋人の男性のように、「重い」と言って離れてしまう人間もいる。姫乃に対する夜のように重いとは感じない人間もいる。「重さ」は絶対値があるものではなく、相対的なものだ。読者の中には作中の姫乃や一を見て「重い!」と感じる人もいれば「むしろ嬉しいよね」と感じる人もいるだろう。それはどちらも間違いではない。

ただ程度の差は必ずあることにも気付かされる。恋愛比重やセクシャリティに対する、読者の認識の試金石のような作品だ。

なお本編だと姫乃が一に頼りっきりに見えるが、一もまた恋がうまくいかない男性として姫乃にかなり救われているのが描きおろしで読むことができる。ゲイで悩んでいた彼が姫乃によって救済された流れが見られるので、是非合わせて読んでほしい。

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たまごまご

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