2021.10.17
ディズニー公式!アメリカの家具メーカーにつとめるドナルドダックが日本の温泉宿で働く、異色のお仕事漫画!『ドナルド温泉物語』岡野める【おすすめ漫画】
『ドナルド温泉物語』
さて、本日紹介するのは講談社「コミックDAYS」配信の『ドナルド温泉物語』という漫画。
内容を端的に言えば“外国人キャラクターによる日本文化体験もの”にあたるのだが、本作の場合は他の同ジャンル作品には(絶対に)ないキャッチーな売りがある。
日本にやってくる外国人主人公というのが、世界でいちばん有名なお調子者のアヒルさん。そう、かのディズニーキャラクターの大御所、ドナルドダックなのだ!
本作におけるドナルドの役どころは、アメリカの家具メーカー会社につとめるサラリーマン。いつもトラブルを起こす社内の問題児で、部下であるホセ・キャリオカ、パンチートと共にアジア文化交流部という名目の閑職へ押し込められている。
ある時、三人組の根性を鍛え直してやろうと考えた社長は「アジア向けに家具をつくるためのデータ収集として、日本のおもてなし文化を学ぶ研修へ行ってくれ」と海外渡航を指示する。
社運を背負った計画を任されたつもりで意気揚々と日本へ赴くドナルドたち。滞在先は、群馬県にある温泉街の由緒正しい旅館だ。
待ち構えていた大女将は、老舗の温泉宿につとめる誇りを厳しく説いてさまざまな仕事を課してくる。ことあるごとに文化風習の違いにとまどうドナルドたちは、果たしてお客様に対する日本流オモテナシの精神を理解し、一年にわたる研修を立派にクリアできるのだろうか……?
先に述べたように作品の趣向は外国人キャラの目を通した日本文化レクチャー仕立てなのだが、スラップスティックなドタバタを絶やさない擬人動物キャラの喜劇的な様相はあくまでディズニー側を主体に寄せた世界観であり、劇中に描かれる日本はリアルさよりも“ディズニー世界の中の日本エリア”とでも言うべき雰囲気を前面に帯びている。そのため、きちんとディズニー作品の一編として愉快に楽しめることだろう。
ちなみにドナルドの部下役となるホセ・キャリオカとパンチートは、『三人の騎士』(1944)その他ラテンアメリカ要素の強い一連のディズニー作品におけるドナルドの友達としてディズニーファンに知られた顔ぶれ。ホセ・キャリオカはブラジルのオウムで、パンチートはメキシコの雄鶏だ。ドナルドを主人公とするにあたりこのトリオで配役したチョイスもほどよくツボをおさえている。
そのうえで、ちゃらんぽらんなドナルドたちが少しずつ“おもてなし”を学ぶタテ軸はきっちりつけて、お仕事漫画としてのいい話の風情も適度に味わえる。
ディズニー公認の日本漫画、という建て付けのなかで絶妙なバランス感をみせてくれる一作だ。
©岡野める/講談社