2021.12.16

ご主人様大好き大型わんこ×不器用な戦巫子の、ますます目が離せないファンタジーBL。気持ちの噛み合わなさが切ない、まだキス止まりの彼らの関係が愛おしくももどかしい!『夜明けの唄』ユノイチカ【おすすめ漫画】

『夜明けの唄』

デビュー作とは思えない筆力で多くの読者をファンタジーの世界観に引きずり込んだユノイチカ先生のシリーズ2巻。

BL業界で、しかもデビュー作でいきなりシリーズ化確定すること自体が相当レアケースなんですが、それを決断させるだけのものが確かにある作品なんですよね……戦う強く儚い受が好きな人には絶対刺さると思うのでとりあえず1巻を買ってきてください

カップリングは、「ご主人様大好き大型わんこ(アルト)×不器用な戦巫子(エルヴァ)」という組み合わせなんですが、まだ掛け算には至っておりません。

年末に発売された2巻。
戦巫子を育てる修道院のきな臭さだったり、エルヴァ以外の、孤独に戦い続ける西の覡・マニエリの登場で風呂敷がまだまだ広がり切っていないことを実感させられます。1巻ラストで嵐の海に落ちたアルトはマニエリに助けられて無事にエルヴァの元へ戻ります。

エルヴァのことが主従関係ではない、色恋方面で「好き」なアルトと、まだ精神が発達しきっていないエルヴァの「好き」には隔たりがあり、それでもエルヴァはアルトを受け入れようとします。アルトは鉄の理性で、まだ完全には自分への「好き」が分かっていないエルヴァへの物理的な行為を自重しています。

エルヴァはアルトのことを間違いなく好きです。しかしそれは初めて自分の孤独を埋めてくれた相手への刷り込みのような「好き」という面が確かにあって、果たしてそれは本当に恋や愛になっていくものなのか、この感情を分けて考える必要があるのか。寿命が短すぎる自分に恋や愛など必要ないと言いながら、エルヴァは実感として恋や愛を知らないだけではないのか。

欲しいと思っても与えられなかった愛情への飢えを、表に出すことすら許されずに戦い続けてきた子供には、自分のことを無条件に慕ってくれるアルトはもはや手放しがたく大切な存在です。

アルトの好きとエルヴァの好きの擦り合わせが、どのようになされるのかはまだ分かりませんが、何とか幸せになって欲しいという気持ちが募っていきます。そう、2冊目を終えてもまだ彼らはキスから先には進んでいません。

待てができるBL界では稀有な理性の大型わんこ・アルトは、エルヴァのメンタルガーディアンとして今のところとても優秀です。ただ、エルヴァは既に今以上にアルトの愛情を求めてしまったし、理性的にエルヴァとの距離を保とうとするアルトに「さみしい」──すなわちもっと近づいて欲しいと願っているので、その理性もうちょっと守り薄くしてもいいかもしれないよ……? という感じです。

エルヴァの子供時代を知っているという領主が現れ、覡を邪魔に思う連中も姿を見せ始め、まだまだ奥行きが広がりそうなシリーズ。二人の関係がどうなるのか、この世界の暗部がどう彼らに牙を剥いてくるのか、目が離せそうにありません。

この記事を書いた人

アキミ

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