2018.03.13
【日替わりレビュー:火曜日】『ふらいんぐうぃっち』石塚千尋
『ふらいんぐうぃっち』
黒猫のチトと一緒に横浜からやってきた主人公・真琴は、実は魔女。15歳の習わしで、修行のために青森の親戚の家で暮らすことになりました。
又いとこの圭や千夏、新しい友達の那央たちと一緒に過ごす、ゆるふわ魔女スローライフ。
「魔女」と聞くと、爆炎魔法で敵を薙ぎ払うヒロイック・ファンタジーや、黒ずくめのローブをまとった悪のボスか幹部を思い出させるかもしれません。
『ふらいんぐうぃっち』にはそのような戦闘はありません。敵も(今のところ)出てきません。マイペースで、魔法が使えること以外はフツーの女の子・真琴の周りで起こる、日常と非日常のまったりとした日々を描いています。
魔女ってことをサラリと一般人の那央にバラしちゃったり、マンドレイクという怪しい人面野菜をひっこぬいてプレゼントしようとしたり。思わずプッと吹き出してしまうズレた笑いが癖になる作風です。
真琴たちが遭遇する、人間じゃない生き物のデザインやギミックにも独特の味わいがあります。
例えば春の運び屋さんはひょろっとしたノッポで、岡本太郎の「太陽の塔」みたいな顔つきをしています。
魔女協会から届く手紙は、紙飛行機が宇宙をゆっくりと飛び続けて、送り主の頭にコツンと当たるような伝達方法。
「二礼二拍手一礼」で見えるようになる隠れ家的な魔女の喫茶店には、和服の幽霊ウェイトレスがいて……など。
一風変わった世界観は石塚千尋先生独特のセンス。心地よく不思議な魔女のいる世界に、入り込んでみませんか?
©石塚千尋/講談社