2018.03.22
【日替わりレビュー:木曜日】『めがはーと』横槍メンゴ
『めがはーと』
ちょっとエッチで、ちょっと切ない、なのに希望がある。
それは未来の話。その世界には寿命の「譲渡」を譲渡できるシステムがあり、結婚前の男女はお互いの寿命を知っておくというのが、暗黙の流れとしてできている。それは、なるべく夫婦が同じ寿命で生きられるようにという目的のシステムでもある。
横槍メンゴの『めがはーと』は、そんな世界で生きるカップル(男女カップルに限らない)のエピソードがオムニバス形式で詰まった一冊だ。
『クズの本懐』や『レトルトパウチ!』など、主に青年誌で活動する作者の作品はどれも、その欲情溢れる表情やセックスシーンがエロくて興奮してしまう。
『めがはーと』も、表紙の時点でちょっとゾクッとする表情である。内容も、横槍メンゴのエッチな描写が好きな人には満足なシーンばかりだろう。
可愛い絵柄で描かれるストーリーは、それでも命をメインテーマに置いているからか、ずっとうっすらとした暗さと切なさが漂う。といっても単なるお涙頂戴ではなく、愛する人と人生をともにする覚悟とか喜びも描かれていて、読後感は爽やか。ああ、私もこんな風に愛するひとと出会いたい、と希望をもたせてくれるのだ。
ちなみに、タイトルにもなっている「めがはーと」は、ときめいたり胸が苦しくなったりゾッとしたりと、感情が忙しい話だった。短い一編の中に、ここまで人間の喜びや業を詰め込めるというのは、ちょっと天才なんじゃないかと思う。
ある意味、これは命を捧げたいくらいに大事な人たちに巡り会えた、幸運な人たちのストーリーだ。
ちょっぴりエッチでちょっぴり切ない、それでいてあたたかい、なんだか誰かを羨ましくなってしまう一冊。
「横槍メンゴ」の過去作品