2018.03.25
【日替わりレビュー:日曜日】『ど根性ガエルの娘』大月悠祐子
『ど根性ガエルの娘』
日本のすべての家族に贈る、感動の一家再生物語。
という作品紹介ではあるのですが、まずは1巻を読んでみてください。たぶん、“感動”のベクトルが思っていた方向と違うという驚きがあるんじゃないでしょうか。でもこの作品に驚かされるのはこんなもんじゃなく、絶えずなんです。
大ヒットした国民的ギャグマンガ『ど根性ガエル』の作者・吉沢やすみは大スランプに陥り、ギャンブル、DV、娘の財布からお金を盗むなどし、ついには失踪し原稿も落とす。
衝撃の家族エピソードを実娘のマンガ家・大月悠祐子が描く、家族崩壊から再生までの話というのがあらすじではあるのですが、“再生”部分ががまさにリアルタイムで、連載中にもどうなっているのかわからないほど。
これは実際の家族のルポなんです。
こんなにどんでん返しに次ぐどんでん返し、ありますか? 毎回「衝撃の新展開!!!」と煽りたくなるほど、新展開が続きすぎます。また、伏線回収が素晴らしく(実際にあったことですし、伏線という言い方がいいのやら……?)大月先生の話の見せ方が見事。
しかし、これが実際の話なんだから「もうそろそろ落ち着いてあげて……」と思っても、いまこの瞬間にも家族の出来事は現実に起こっているんですよね。どんな最終回を迎えるかは、誰にも分からないのです。
ちなみに本作品、最初は「週刊アスキー」(KADOKAWA)で連載していましたが、Webコミックサイト「ヤングアニマルDensi」を経て現在アプリ「マンガPark」(白泉社)にて掲載と、どんどん掲載誌が変わっています。
この辺りの生々しい流れすらもマンガのネタにしているのだから、大月先生のたくましさと「全てを書く」という意気込みが感じられます。現在、本作は不定期連載とはいえ、更新予定の水曜日にアプリ内で『ど根性ガエルの娘』のサムネイルに“UP”のアイコンが踊っていると、嬉しい反面怖くなるほど。見たい、見たくない、見たい。
同じく吉沢家の話ということで、大月先生の弟さんと吉沢やすみ先生とのご飯の思い出が詰まったこちらのエピソードもあわせてどうぞ。ぐっときます。
【田中圭一のペンと箸-漫画家の好物-】第八話:「ど根性ガエル」吉沢やすみと練馬の焼肉屋
(この記事が2015年1月ということがポイントです。『ど根性ガエルの娘』と並行して読むと、ひとつの家族の姿はここから3年で、また変化が訪れているということをリアルに感じることができると思います。)
『ど根性ガエルの娘』最新刊の4巻は3月29日発売予定。
「家族」の話は、娘から見た吉沢家という枠だけではなく、夫・大井昌和(マンガ家)と築く夫婦としての家族という枠にもあるということに、はっとするはず。今回も、どっしりくるストーリーが詰まっています。