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2018.04.17

【まとめ】いかにしてオタクはギャルを大好きになっちゃったのか 〜マンガにおけるギャル萌えの系譜〜

かつてマンガの中の少年キャラたちは、「ギャル」が苦手だった。嫌いではなく、怖い

ルーズソックス、ガングロメイク、くだけた制服、謎のJK語。

00年代以前のマンガには、多少遊び人なヒロインはいても、ガチギャルのヒロインはほとんどいなかった。

ところが昨今は、ギャルキャラクターがオタク界隈を賑わせている。
どう変化してきたのか、そのおおまかな流れを、いくつかの主要マンガ作品と一緒に追ってみよう。

ギャルは属性になった

日本で「ガングロギャル」が激減したのは、ここ20年の変化の一つ。
今でもルーズソックスはあるが、履いている人はほとんどいない。00年前後に話題になった「ヤマンバギャル」は、天然記念物状態だ。

80年代は「スケバン」がヤンキーマンガのヒロインとして描かれてきた。しかし、90年代になるとスケバンは現実にはほぼいなくなった。
スケバンの、見て一発でそれとわかるデザインは、00年代以降ではキャラクター造形として使いやすいものになった。
同様に00年代の「ギャル」像も今、まさにその過渡期だ。

ギャルファッションは萌え属性になり、リアルから切り離したファンタジーとして見られはじめている。

自分はギャルより下か同列

少年・青年マンガでギャルを描く際、男性キャラは彼女たちより、力関係として下位に表現されることが多い。
ひとつ上の次元のギャル様たちが、俺らのような下々のものに優しくしてくれるなんて! という描写だ。

2017年発売の『ひょっとしてギャルは俺らに優しいのでは? アンソロジー』(一迅社)や、『ギャルと付き合っちゃった アンソロジー』(KADOKAWA)は、タイトルからしてモロにそれが反映されている。

『ひょっとしてギャルは俺らに優しいのでは? アンソロジー』

昨今のギャル表現で、特に重視されるポイントがいくつかある。

1. 楽しいことをするのが大好きで、明るく自由奔放
2. 周囲に誤解されやすいが、行動には基本悪気がない
3. 実は内面はピュアで「俺ら」にも優しく、能動的に話しかけてくれる

1と2に共通する、ある種の女神性を求める動きが、今のギャル人気の根源にある。
(3は男性向けギャルゲー的なキャラ性として付属したものなので、ここは好みが分かれるかも)

彼女らに、人間の若く強い、活力の眩しさを見ているのだ。

00年代のギャルの変遷

2000年の『花とみつばち』、2002年の『GALS!』など、「ギャルは魅力的である」という文法の作品は少しずつ増えてはいたが、ギャル・ヤンキー文化圏とオタク文化圏の溝は深かった。

『GALS!』(藤井みほな/集英社)

「気が強い子」「かっこいい子」「かわいい子」などを、なんとなくひっくるめた「ギャル系」という言葉でくくられた作品が、00年代前半は多かった。
80〜90年代の「ギャル」は成人女性のことを指し、女子高生はマスコミによって「コギャル」、中学生は「マゴギャル」と呼ばれていたが、実際のところはその意味合いが曖昧だったからだ。
00年代後半に入ると、「ギャル」は女子中高大生をまとめて指す言葉、という扱いで自称・他称共に固定。「コギャル」「マゴギャル」は死語になっていく。

2008年の『パギャル!』は、現役ギャルだった作者が渋谷ヤマンバギャルを描いた作品。ギャル文化を知る、という側面が強いマンガだ。
アニメ・マンガファン層が読むマンガとは違う文法で、「ギャル」が表現されている。今思うとヤマンバギャルが減少していく前の、最後の踏ん張りだったのかもしれない。

『パギャル!』(浜田ブリトニー/小学館)

1995年創刊で、コンビニの棚では一際異彩を放ってブイブイ言わせていたギャル文化専門誌「egg」は、時間が経つにつれ少しずつおとなしくなり、2014年には休刊になった。
2005年からは姉ギャル・姫ギャルをターゲットにした雑誌「小悪魔ageha」が出版され、リアルギャルの方向性が大きく変化していく。これらの雑誌は、オタク文化圏とほとんどかすらない異文化として、ネットでは扱われ続けていた。

「ラフ」と「ギャル」の分化と、合流

『女子高生』

『女子高生』(大島永遠/双葉社)

2002年から連載され、一旦間をおいて2016年まで続いていた『女子高生』は、リアルなギャル変遷の波を掴み、「Weekly漫画アクション」「コミックハイ!」などで連載。女子高校生の生態を、男性向けの紙面で描いた、男性が抱く清らかな女子校妄想をぶち壊す、下ネタ連発の作品だ。

メインキャラクターの一人・鈴木由真は、襟を開いた服装にミニスカート、髪を脱色、ルーズソックスという、絵的には90年代後半の「ギャル」「遊び人」イメージに寄せたデザインのキャラだ。
しかし彼女は、「バカなことも好きな、サバサバしたスポーツマン」として描写されている。破天荒なキャラの多いこの作品の中では、比較的常識人。性質としては「ギャル」ではない。
また、このキャラクターから、当時ルーズソックスがギャル以外の子でもたまには履いている、くらいのモノだったのがわかる、リアルな表現だ。

一方で姫路京子は、大人びた容姿で制服は着崩しておらず、一見普通。しかし惚れっぽく、男をとっかえひっかえしている非処女。スクールカースト上位のギャルグループにも加わっていた。
00年代のいかにもなギャルっぽさは出さない。やりすぎるより普通の格好の方がモテる。「女子高生」を謳歌するギャルとして、生々しい存在だ。

時代にあわせて髪を盛りまくったり、ネイルを極めたり、チャラ男が出てきたりもする。読モレベルのギャルも出てくる。その中で、この二人の微妙な「ギャル」のさじ加減がひときわ目立つ。
「オシャレ」なのか「ラフ」なのか「ギャル」なのか。この作品を見ておくと、今のギャルキャラクターがギャルとしてどのベクトルで派生したものなのかが見えてくる。

ウブで真面目なギャル像の誕生

『シンデレラガールズ劇場』

『シンデレラガールズ劇場』(熊ジェット,バンダイナムコエンターテインメント/KADOKAWA)

2011年からはじまったソーシャルゲーム『アイドルマスターシンデレラガールズ』の城ヶ崎美嘉莉嘉の姉妹は、2010年代のギャル萌えブームの火付け役だ。ゲーム内のマンガが単行本化された『シンデレラガールズ劇場』の中には、ギャルキャラを魅力的に見せようとする表現が多数盛り込まれている。

城ヶ崎美嘉はビビッドなピンク髪のファッションリーダーで、カリスマギャルの高校生。誰もがかっこいいと認める彼女、実はものすごくウブ。プロデューサーと撮ったツーショット写真を妹の莉嘉に送ったところ、「デート?」と聞かれ、途端に真っ赤になって慌てふためいてしまう。

以降、彼女は「明るくてピュアで真面目」な、アウトローではない優等生ギャル属性の金字塔を打ち立て、後のマンガ作品に多大な影響を与えるようになる。

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包容力のある純粋ギャル

『おしえて!ギャル子ちゃん』

『おしえて!ギャル子ちゃん』(鈴木健也/KADOKAWA)

2014年『おしえて!ギャル子ちゃん』は、ギャル・オタク・お嬢様が主役。3つの文化圏、特にオタクとギャルの壁をなくす友人関係が、テーマの一つに据えられている。

ギャル子の設定は少々複雑だ。姉は筋金入りの遊び人ギャル。妹のギャル子は真面目で優しい。映画好きのギャル子は、外人女性の金髪や華やかなファッションに憧れてマネした結果、ギャルっぽい格好に落ち着いた。
ギャル子は、自由奔放でありたいというギャル的な内面を持っているわけでも、ギャル文化圏に生まれたわけでもない。ファッションと周囲の思い込みで生まれた「ギャル」だ。

「ギャル=性的にも自由=ビッチ」という思い込みが、マンガ作品では植え付けられがち。そこを逆手にとって、「夢はお母さんになること」と性的なピュアさが強調されている。

「ギャルなのに」と「ギャルだから」の相反するかわいさを合わせ持つ彼女。純情な性格と、母性あふれるふくよかな肉体美の魅力で、大ヒット作品になった。

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ギャルと恋をしたい

『はじめてのギャル』

『はじめてのギャル』(植野メグル/KADOKAWA)

2016年『はじめてのギャル』は、ギャルをこれまではどう見てきたか、そして今はギャルヒロインに何を求めているかがはっきりとわかる作品だ。

パッとしない男子・羽柴ジュンイチは、ギャルを見るとつい怯えてしまうタイプ。彼はクラスメイトのギャル・八女ゆかなに、偏見から「ギャルに土下座したら付き合える、童貞卒業させてもらえる」と思い込み、その通りアタックしてしまう。

ギャルは自分たちとは別の世界の人間、というのがまずベースにある。知らない世界に住むギャルと親しくなれたら、という憧れを表現し続け、現時点では、あらゆるタイプのギャルが登場するハーレムマンガにまで成長した。

八女さんはガードが硬い誠実な女の子、というギャップポイントもしっかりおさえている。それでいて、性的イメージとしての「ギャル」感も忘れられていない。キャラクター性としては、理想とファンタジーの詰まった「お姫様」という感覚が一番近いだろう。

異文化への恐れは、憧れへと進化している。

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ギャルは女子高生の平均値か?

『ダンベル何キロ持てる?』

『ダンベル何キロ持てる?』(サンドロビッチ・ヤバ子,MAAM/小学館)

ギャルはそもそも「かわいくなりたい」からオシャレをする。その「かわいさ」は、外国人モデルへの憧れの思考だ。2016年『ダンベル何キロ持てる?』は、ギャルの身体に目を向けた。

筋トレ方法のレクチャーが中心の、筋肉コメディで、主人公の紗倉ひびきは、金髪褐色のギャルだ。食べるのが好きで太り気味の彼女は、ジムに入ってダイエットを目指そうとした時に、超お嬢様で筋肉フェチの奏流院 朱美(そうりゅういん あけみ)と出会い、一緒にトレーニングを開始する。

ギャルとお嬢様の組み合わせは、絵的にものすごく映える。特にひびきのトレーニング中の身体は、とてもエロティック。「ちょっとだけ太っている」という設定があるので、筋肉以外のお肉でムチムチしている。

ギャルキャラ人気は、昔からある褐色肌(日焼け含む)人気と、かぶっている部分も大きいだろう。黒ギャルの褐色肌は、マンガの中で女の子の身体をセクシーに見せる。黒ギャルはリアルでは減りつつあるからこそ、今後マンガ文化ではビジュアル面での登場が増えていきそうだ。

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ギャルは明るい太陽だから

『ギャルごはん』

『ギャルごはん』(太陽まりい/白泉社)

2017年『ギャルごはん』は、ジャンル化するほど広まっている「食マンガ」を、ギャルネタと組み合わせた作品。作者があとがきで、ヒロインを「理想のギャル」と書いているように、ギャルのかわいさをとことんまで突き詰めようとしているのが感じられる。

褐色、金髪、ミニスカートにルーズソックス。みんなから「学校イチのギャル」と言われる岡崎みく。家庭科教師の矢部真司に習って以来、料理が好きになり、彼の作った料理研究部に入部する。次第に彼のことが気になり始め、二人きりの部活にときめきを燃やしていく。

彼女は、いつも笑顔でポジティブという「強い少女」像としての「ギャル」だ。本人は可愛い格好をしたいだけで、精神性はむしろ幼く、純真無垢。どんなに矢部が鈍くても、みくが前向きだから、ラブコメディとして見ていて心地がいい。

周囲からは誤解されてちょっと距離を置かれているけれども、それが奇しくも「先生と生徒の二人だけの時間」を作っている、という設定もニクい。自分がギャルなのもある程度わかっており、「お泊りしていっちゃう?」「ウチら付き合っちゃう?」と茶化す適度な軽さもかわいい。

ギャルキャラ人気の重要な柱である「女の子から積極的に話しかけてきてほしい」という欲求を、このマンガは完璧に満たしてくれる。

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ギャルはスクールカーストの中で戦い続けている

『星野、目をつぶって。』

『星野、目をつぶって。』(永椎晃平/講談社)

一方2016年『星野、目をつぶって。』で描くギャル像は、かなりシビアだ。高校生の間には、どうしてもスクールカーストがある。その中で生き抜くためには、手段が必要だ。

見るからにギャルな星野海咲は、実はメイクを落とすとものすごく地味で目立たない顔の少女。元気ではあったけど、自分に自信はなかった彼女が、中学でメイクをしてから友だちができ、本来の明るさが表面に出て人気者になった。はじめて海咲にメイクをした先生は、「あの格好にこそ力があると思ってる」と海咲のことを説明する。

「メイクしてれば……オシャレしてれば、みんな友達になってくれる。これが無いとみんな離れていっちゃう……ってね」

クラスで孤立していた内気な主人公・小早川をはじめ、イケてる面々、ギャルグループ、スポーツマン、オタク、文系……あらゆるキャラクターが全員、自分の居場所とやりたいことのために悩んでいる。

中でもガングロギャル集団にいる加納の存在は強烈。彼女は高校で同級生を陰湿にイジめていて、一巻では完全に悪役だ。しかし加納がガングロギャルになっている理由が、後に描かれる。彼女の苦悩がはっきりしてから、白ギャル星野・黒ギャル加納の、全く性質の違う2人のギャルにスポットが当たり始める。

10年代のギャルは、明るく元気なのが主流だ。00年代に描かれた不良の象徴のようなギャルは、今だとヤンキーマンガ以外ではそこまで多くない。とはいえ、かわいいからギャルになりたいという子もいれば、心を守る装甲として、反逆の証として、ギャルスタイルになる子もいるだろう。そこを平等に、繊細に表現している。

ギャルはファッションなだけじゃない。生き方だ。

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私の本当のところを見てくれるアイツのことが大事だよ

『やんちゃギャルの安城さん』

『やんちゃギャルの安城さん』(加藤雄一/白泉社)

2018年の『やんちゃギャルの安城さん』は、かなりセクシャルな方面でいたずらを仕掛けてくるギャルマンガ。表紙の通り、スキが大きいというよりは、意図して魅力的に振る舞っている。

全く冴えない少年・瀬戸。なぜか彼に、ギャルの安城が絡んでくる。なめていたアメを渡してきたり、キスしようかと狙ってきたり、トイレの個室であえいでみたり、ランジェリーショップで下着を見せたり。童貞の瀬戸としては、気が気じゃない。

読み進めていくと、「ビッチキャラ」ではないのが見えてくる。彼女がエロいたずらをしかけるのは、瀬戸だけだ。瀬戸は、性体験の有無を問わず「相手が自分にとって大切かどうか」を重視する人間。これが、男子たちからビッチ扱いされていた安城に刺さった。

実際に彼女に性体験があるかどうかは、作中では書かれていない。描く必要がないからだ。

テーマになっているのは、目の前の人間をカテゴリ分けせずいかに向き合えるか。キャラクターデザインが、かなりリアルギャル寄りなので、どうしても安城の「ギャル」補正は高い。だからこそ、「安城という一人の人間」が物語で描かれていく度に、ギャルかどうかは人間性と関係ないし、それを見抜いてくれる存在が安城にとって大切なのも伝わってくる。

自分を卑下して苦しむ瀬戸に対し、安城が言うのは励ましではなく「私の大事なヤツの悪口ゆーな」。彼女もまた「真面目」という外面で見られがちな、世界に一人しかいない瀬戸の本質を見ようとしている。

ギャルキャラはかわいくて、憧れの存在かもしれない。でも外見と、触れたことでわかる人間性は、別だ。

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百合マンガでのギャル、エロマンガでのギャル

『citrus』(サブロウタ/一迅社)

百合マンガでもギャルキャラは躍進中だ。

2014年『citrus』では、見た目がギャルの柚子と黒髪美少女・芽衣の艶めかしい関係が描かれる。二人は義理の姉妹、という設定もスパイスが効いている。

恋愛マンガは紙面的に、黒髪と茶髪でコントラストを出すと非常に見栄えがいい。その際、髪を染めている設定のギャルの存在は重要になってくる。「ギャルになった理由」も物語のいい隠し味になる。百合マンガとの相性は抜群だ。

エロマンガでは、ギャルは雑誌一冊に何キャラかいるほどのメジャージャンル。黒ギャルの褐色肌は、男性の心を惹きつける強烈な引力があるようだ。また、「ギャルだからビッチ」「ギャルだからドS」のようなキャラ付けも、エロマンガには欠かせない。

そもそも活力にあふれたギャルキャラクターにエロスを感じるのは、本能的な必然かもしれない。

ギャルブームの今後

雑誌やWEBマンガサイト、創作同人の世界を見ていると、まだまだマンガ界隈におけるギャルキャラブームは盛り上がっていきそうだ。

ただ、その波が落ち着いてからが本番だろう。特に「ギャル」と明示しなくても、当たり前に存在するキャラ性として浸透していくくらいの、ポテンシャルを持てるかどうかが重要だ。かつて、「ツンデレ」「ヤンデレ」がそうだったように。

一つ難しいのは、時代によって「ギャル」のあり方が違うこと。現時点では00年代ギャルをベースに描く作品が多いが、今度はそれすらも「スケバン」「ガングロ」のようにファンタジー的な捉えられ方になる可能性もある。

ある程度テンプレ化しつつ、「明るく元気なギャル」像の中から新しい「ギャル」が生まれるかどうか、じっくり観察していきたい。

純粋系ギャルが最近は多いので、個人的にはここで振り戻すように「うぜー」などが口癖な、はみ出し系ギャルも増えてほしいところ。ヒロインの友達ギャルには多いキャラなのだが……。

適当ギャル3人が異世界に行く『ギャル転生 〜異世界生活マジだるい〜』(佐々木マサヒト/KADOKAWA)には大いに期待しています。

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