2018.04.24

【インタビュー】『ダンゲロス1969』架神恭介×横田卓馬の奇妙な関係とは?「架神恭介はサイコパス」

2012年、颯爽とマンガ界に登場し「面白すぎる問題作として人気を博した『戦闘破壊学園ダンゲロス』。超常的な能力を持つ「魔人」達の激しい戦いをエログロ要素満載で展開した、非常にチャレンジングな作品であった。

原作は小説家の架神恭介氏。

マンガは『背すじをピン!と〜鹿高競技ダンス部へようこそ〜』『シューダン』などでおなじみの横田卓馬氏。

かたや鬼才&奇才の変態小説家、かたや爽やか青春スポーツマンガのエキスパート。なんとも意外なタッグである。

現在、新シリーズ『ダンゲロス1969』ヤングマガジンサードにて連載中だ。

左:架神恭介氏 / 右(パンダ):横田卓馬氏

どうして2人はタッグを組むことになったのか? 

原作者とマンガ家はどのようにして出会うのか?

ダンゲロスがマンガ化された理由とは?

あまりにも気になってしまったので、両氏にインタビューさせてもらえないか打診したところ、快くOKが出た。

原作者とマンガ家の意外な出会いとは

──新連載、おめでとうございます。今の心境はいかがでしょうか。

架神恭介氏(以下、架神):お、やったー。 っていう感じですね。

横田卓馬氏(以下、横田):あ、載ったな。 っていう感じです。

──あら? 2人の共同作品が形になって、もっとテンションが上がっているのかと思っていたのですが?

架神:厳密に言うと、共同で何かやってるわけじゃないんですよね。

横田:………………………。(黙ってうなづく)

架神:前作の『戦闘破壊学園ダンゲロス』もそうなんですが、ぶっちゃけ、月刊ヤングマガジンに掲載されているのを見て、初めて僕の作品がマンガ化されたのを知ったので。

──ええええええ!? そんなこと、ありえるんですか!?

架神:実はですね、ダンゲロスシリーズは二次創作利用を無償かつ無断で可能という特性を持った作品なんです。

横田:なので、特に架神先生に連絡することもなく描きましたよね。そしたら掲載されました。

──ちょ、ちょっと衝撃の事実すぎて…… 本日のインタビュープランが瞬時に崩れさってしまったのですが。

架神:元々、ダンゲロス自体がネット上で遊ぶテーブルトークRPGとして誕生した経緯があるので。魔人などのキャラクターや能力のアイディアとかも読者投稿型で寄せられたものだったりします。

なので、そのアイディアが採用されて小説やマンガに登場したとしても、発案者に金銭の授受などは一切、発生しません。これは提唱者である僕本人にも適用される話なのですが。

横田:(笑)

──そんな事情があるんですか。。。じゃあ、ネームとかは誰が?

横田:僕が一人で描いてますね。ストーリーとか絵とかも、事前に架神先生に確認してもらうこともないですし。

架神:そうですね。僕の方から内容に関してオーダーを出すことはないです。

ちょっぴり、絵の内容にリクエストしたことはありますけどね。『戦闘破壊学園ダンゲロス』に一刀両断(いとりたち)という女子高生が登場するんですが、ふんどしなんですよ。そのふんどしがチラリと見える「ふんチラ」を作品に登場させてくれ、と。

──なるほど。本当に別々に作品を作っているんですね。

横田『バクマン。』のサイコーとシュージンみたいな関係を期待されていたかもしれませんが、実際はそんな感じです。

でも、僕は昔から架神先生のファンだったんですよ。The男爵ディーノというWebサイトを架神先生が運営されていて、ジャンプを読んだ感想がブログ形式で掲載されていたのですが、それがすごい面白くて。

架神:16年前から始めて2年くらい前までやってたやつですね。

僕もダンゲロスの連載が始まった時、最初は「横田卓馬って誰やねん」って思ってたんですけど、実は過去に作品を読んだことがあったのを思い出して。横田先生が「JUMPトレジャー新人漫画賞」で入選した時の『戦下に咲く』という作品なんですけど、すごいレベルが高かったのは覚えてて、「あー、あの人かーっ!!」って。

2人はお互いのことをどう思っている?

──ちなみに、現在のおふたりはどんな関係なんですか?

横田ビジネスパートナー、という表現が一番しっくりきますね。

架神:2人で遊ぶとか、飲みに行くとかはほぼないです。イベントで一緒になった時に挨拶をする程度。LINEとかも仕事以外ではまず、送らない(笑)。でも、仕事では結構頻繁にやり取りしていて、コミカライズも僕は内容にはノータッチですけど、宣伝とか関連企画では動いてるので、その点ではよく会話してます。なので、ビジネスパートナー。

──クリエイターとして、あるいは人間として。お互いのことをどう思っているのかお聞かせください。

横田:架神先生は親切なサイコパスなんですよ。この場合、サイコパスという表現は良い意味で使ってます。

架神:どういう意味(笑)

横田良い意味で共感能力が低いんです。だから、周りの人に影響されて自分のペースを変えることがない。普通の人が躊躇するような場面で、一切ブレーキを踏まない。それが作品とかアイディアに強く反映されていて、素晴らしいモノを作り上げていますね。

架神:褒めて頂いてるんですよね? ブレーキの話に関しては反論があるんですが、自分ではちゃんと計算の上でやってるんですよ。いけると確信してから行動してます。

架神:僕から見た横田先生はですね、もう圧倒的な実力を持ったマンガ家という印象ですね。もうね、気持ち悪い。すごすぎて気持ち悪いんですよ。

とにかくマンガを描く腕力が尋常じゃないですね。どんな話でも無理やり、面白く変えてしまう。一般的には悪手とされる展開でも腕力で面白くしてしまう。気持ち悪いですよ。

あと、人間としてタフです。根が強いというか。繊細な芸術家、という感じではないです。交渉と意志力でやりたいことを貫ける人ですね。

横田:すごく評価して頂いて嬉しいです。サイコパスとか言ってすみません(笑)

架神:良い意味なんだもんね、サイコパス?

──お互い、ベタ褒めじゃないですか! ちなみに横田先生の腕力が作品中で発揮された象徴的なシーンを挙げるとしたら?

架神:これも『戦闘破壊学園ダンゲロス』の話ですが、赤蝮伝斎(あかまむしでんさい)という魔人がいるんですね。バイセクシャルのレイプ魔で、「攻撃対象となった者の処女を強制的に奪う」という能力を使うのですが。

原作ではモロに性器を操って犯すのですが、当然マンガでは描けないじゃないですか。どうするのかな? モザイクかけるのか? とか思ってたら、性器をめちゃくちゃカッコよく、「異形の触手」みたいにデフォルメして堂々と描いてたんですよ。感心しました。

噂の触手。『戦闘破壊学園ダンゲロス』5巻より

横田:ダンゲロスシリーズは原作そのままだと描写できない表現も多く登場するんですよね。いわゆるエログロ要素が満載なので。

連載中の『ダンゲロス1969』でも、戦いの場面で精子を飛ばしたり、排泄物を食べたり、排泄物を操ったり、といった能力が数多く登場しますが、誰しもが排泄物が食べるシーンとか見たくないですよね。

架神:僕はそういう描写が好きなんですよね。山田風太郎の作品に強く影響を受けてますが。でも、下ネタとかエログロは読者サービスのつもりで書いているんですけど……。だって、ほら、う○ことかち○ことか出てくると嬉しいでしょう…?

横田:マンガでは架神先生の作品の魅力を損なうことなく、読者が不快にならない範囲に調整して描く。そういったことを心がけています。

架神:横田先生は、ダンゲロスをマンガとしてベストな形に仕上げてくださっている。そういう信頼がありますね。

──ダンゲロスの世界をマンガで表現するのは並大抵のことではないと思うのですが、横田先生はどんなアプローチで作品と向かい合っているのですか?

横田「ダンゲロスっぽさ」みたいなのは意識して描いてますね。僕は結婚していて妻がいるのですが、彼女もダンゲロスの大ファンで。描き上げたばかりの作品を見せて、アドバイスを貰うことがあります。

例えば、『ダンゲロス1969』の第1話で魔人公安の山下が学生団体の事務所に乗り込んで殺戮を行うシーン。この「二丁拳銃」というセリフには当初ルビは振っていなかったんですが、妻が「ルビがあった方が絶対良い」と。

2人で30分悩んだ末、「ち○ことピストル」というルビを振ることに決まりました。シリアスなバトルの最中に自然な形で下ネタが登場する。ダンゲロスっぽいシーンに仕上がったと思います。

──架神先生よりも「奥様との共同作業」という感じなんですね(笑)

架神:横田先生の奥さん、すごくマンガが好きなんですよ。僕も一緒にマンガ系のイベントを開いたり、ビジネスパートナーとして仲良くさせてもらってます。

ダンゲロスの世界

戦闘破壊学園ダンゲロス

──ダンゲロスシリーズをこれから読む方に向けて、ストーリーや世界観についてお話いただけますか。

架神:一言で表現するのは難しいのですが、現在連載中の『ダンゲロス1969』は『戦闘破壊学園ダンゲロス』と直接的なつながりはないんです。パラレルワールドの話なので。

共通要素としては、超能力を持った人間「魔人」がいる世界で、彼らが社会の中で居場所を求めて戦う。『ダンゲロス1969』では「学生団体と警察」が、『戦闘破壊学園ダンゲロス』では「番長グループと生徒会」が、それぞれ対立する話です。

横田:バトルのアイディアも面白くて。『ダンゲロス1969』の安田講堂を巡る戦いは本当によくできている。マンガではこれからどんどん描かれていきますが。

架神:何か社会的な問題があって、その上に個人の思想がある。それぞれが正義を主張して戦いが生まれ、激しくぶつかる。概ねはそんな話です。

──作中にエログロ要素や下ネタを多く盛り込んだのは意図があるのでしょうか?

架神読者サービスですね。社会的な問題を巡って戦いがあるけれど、俯瞰的にみると最終的にはそういったものが全てどうでもよくなって「好き」とか「愛」とか、そういう個人的な気持ちが残る。

それが作品を通して伝えたいメッセージなのですが、真面目に表現すると誰も読んでくれないじゃないですか。エログロ要素や下ネタはエンターテイメントを作るプロとしての工夫で、読者がとっつきやすいようにしているつもりなんです。

横田:エログロ要素が目立つので注目されがちですが、実は僕が面白いと思っているポイントはそこではなくて。ストーリーが非常によくできているんですよね。まぁ、うまく言葉では表現しきれないのですが(笑)

──お二人の想いはよくわかりました。読者に向けてメッセージがあればお願いします。

架神:『ダンゲロス1969』は第1話からしてかなり下品だと感じる方もいるかもしれません。しかし、ここからさらに激しくなります。振り落とされないようについてきてください!

横田:とにかく、下ネタに惑わされずに話の筋に注目して欲しいですね。

オマケ:両先生オススメのマンガを紹介

──余談ですが、最近読んだマンガでオススメの作品があれば教えてください。

架神『はぐれアイドル地獄変』ですね。空手使いのアイドルが色々と大変な目に遭うバトルマンガなのですが、妙に明るくて楽しく読めると思います。あと、精神性がほとんどアスリートのアスリート系ビッチ、豪島セーラさんが最高にカッコイイですね。

横田『衛府の七忍』をオススメします。すでに「このマンガがすごい!」などに取り上げられている作品なので、僕から言えることは何もないのですが、家康が「超巨大な鎧ロボ」になって戦うシーンは圧巻です。

『ダンゲロス1969』が読めるのは毎月6日

架神先生、横田先生、インタビューに応じてくださってありがとうございました!

『ダンゲロス1969』は現在、ヤングマガジンサードにて連載中! 毎月6日発売です。

また、5月5日(土)、6日(日)に東京ビックサイトにて行われるゲームマーケット2018では、ダンゲロスのボードゲームが販売されます(販売は5月6日のみ。ブースはD56)。

去年も販売され、架神先生曰く「予想以上に売れた」ボードゲームのメジャー流通版(及び拡張版)となりますので、ファンの方は是非、お見逃しなく。

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紳さん

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