2018.04.12

【日替わりレビュー:木曜日】『実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。』 ペス山ポピー

『実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。』

生ぬるいメンヘラ独白かと思ったら隅から隅までガチだった

ある日友達からLINEで「これ最高。あなたも絶対好きだと思う」というメッセージとともにURLと一緒に送られてきた。開くと、タイトルに「泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。」という文字。連載で一話目が公開されていた。
正直な話をすれば、最初はタイトルと絵柄から、そこはかとなくメンヘラ地雷臭がして読むのに躊躇した。作者の自己満足的な陶酔エッセイだと思っていたのだ。

しかし、結果からいえば、第一話を読んですぐに友達に「これはガチだ。すごい」とLINEを送っていた。むしろちょっと興奮すらしていた。

『実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。』は、著者・ペス山ポピーの生来からもつマゾヒズムな性癖について描かれた作品である。

私は痛いのにめっぽう弱いので、共感は一切ない。むしろ、暴力的なシーンは目をつぶりたくなるくらい辛い(ボディーブローをされたあとに数時間吐き気と戦いながら、その吐き気と行為の余韻でオナニーをするというのは完全に異次元の世界だった)。
殴られるために自らスポーツ洋品店でボクシングのグローブを買ったり、手加減をされて物足りなさにあえいだり、出会い系経由で会った男性たちに一切自分の体を触らせず殴られることに徹底したり、その言動すべてがガチすぎて心が揺さぶられる。

なんて書くと、露悪的な作品のように思われそうだが、そんなことは一切ない。といって、お涙ちょうだいマンガでもない。

己の性癖に嘘をつかずに探求していった結果、自らのセクシュアリティへとたどり着く。(いろんな意味で)苦しみもがきながら、作者は自分と向き合うことから逃げずに作品に落とし込んでいる。
紐解いていく一連のストーリー自体が面白く、マンガとしての底力も感じる作品である。

「私ぐらいは私の股間の味方でいなければ……」

孤独を極めたからこそ生まれる名言である。マゾヒズムな性癖をもっているひとはもちろん、なかなか理解してもらえない性癖に悩んでいるひとにとっても面白い作品だろう。

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この記事を書いた人

園田 もなか

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