2018.04.25

【日替わりレビュー:水曜日】『恋の撮り方』たなかのか

『恋の撮り方』

恋をすると、カメラのフレームに相手の姿が写るんだ

絶対笑顔を見せない先輩・佐々木つぐみ「凍てつきの女神」と呼ばれる彼女の、明るい顔を見た人はいない。
だがそれを唯一撮影できた少年がいた。後輩の河島まもる。絶対にそんな顔したことがないのに、なぜか写真の中の先輩は、満面の笑みだ。

写真部の先輩が語る「恋をするとね、カメラのフレームにつねに、恋してる人の姿が写るんだ」という精神論が、本当になってしまうラブコメディ
河島が一眼レフのフィルムカメラを覗き込むと、いるはずのない笑顔の佐々木先輩が見える。幽霊ではない、カメラを構えたときだけ現れるのだ。

「実際にはいない先輩の姿が、実際には笑わない先輩の笑顔が、僕のカメラには写るということだ」

河島はカメラの中に佐々木先輩が写るのを見るたび、自分が彼女に恋をしているのを噛みしめることになる
プリントするとほぼ必ず、笑顔の先輩が映っている。まるで念写だ。

河島がカメラを覗きながら、見えないはずの先輩とデートをする回は、ちょっとしたホラー
ファインダーの中の先輩は河島に視線を投げかけ、コミュニケーションが取れている。カメラを通して鏡を見ると、先輩が自分と手を組んで映っている。

少々浮つき気味な河島に対し、佐々木先輩はカメラを構えて、人間が心を動かしている瞬間を切り取ることに魂をかけている。
だからこそ自分が写真に写ることを忌避しているところがあるのだろう。ストイックで冷淡な彼女は、誰よりも感受性が強い。

果たして河島が撮影する笑顔の佐々木先輩は、本来の姿なのか、それともただの河島の妄想なのか、現時点ではわからない。

カメラの中の佐々木先輩は回を重ねるごとにどんどんキュートでやんちゃになっていく。
本物の佐々木先輩の本音がちらちら見え始めた時、きっと読んでいるこちらも、佐々木先輩に恋をすることになりそうだ。

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たまごまご

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