2018.04.28

【日替わりレビュー:土曜日】『はなにあらし』古鉢るか

『はなにあらし』

2017年秋に小学館「サンデーうぇぶり」で連載スタートするや、女の子×女の子の筋が大好きな界隈で大いに話題をさらった『はなにあらし』が今春ついに単行本化された。

とある女子高校で青春を謳歌する、仲良しな友達グループ五人組。
そのなかで特に親密なふたりが、本作の主役だ。

ひとりは、ショートヘアで身体は小柄、ちょっぴりクールな「千鳥」。
もうひとりは、セミロングで長身、ひとなつっこい性格の「なのは」。
ふたりは親友。そして、ナイショの恋人同士なのである。

待ち合わせて登校したり、ファーストフード店でダベったり、同じ部活に入ったり……。
描かれるのはどれも客観的にはありふれた学校生活のワンシーンだが、「この二人は付き合っている」という、読者だけが知る事実のスクリーンを通すことですべてが特別に艶めいた情景として立ち上がってくる。

友達みんなして冗談で「結婚しよ」「好き」といった軽口を投げ合う流れに乗っかるなか、千鳥となのはにはそれが強い意味をもつなど、ナイショの関係をスパイスとしたシチュエーション作りが毎回秀逸。

例えば体育授業でクラスメイトに堂々と肌をさらす恋人にお互いが内心やきもきする回や、友達グループみんなにお弁当のおかずを一口ずつ食べさせる回などがとくに分かりやすいが、他に対するのとまったく同じ行為が二人にだけまったく違う意味を持つ瞬間を切り出す演出が見事で、それが本作の“いい雰囲気”を生む基盤となっている。「みんなで」と「二人には」の行き来がひじょうに上手いのだ。

しかも、けっして「許されざる禁断の恋が~」みたいな背徳のドロドロ感ではなく、茶化されたら照れくさいし今はナイショにしておこうね、くらいの塩梅なのがいい。
秘密というものを軸としていながらここまでさらっとした清涼感を出せるバランス感覚の見事さを、ぜひ実際に読んでたしかめてほしい。

ところで作者さん、これが連載デビュー作なんですか。すごいな!
Twitter情報によると秀良子先生(『STAYGOLD』『ロメオがライバル』等)の元アシスタントで、またサンデー関係でいえば本誌で人気の『初恋ゾンビ』『古見さんはコミュ症です』にスタッフ参加していたそうで、なるほどなるほど。

『はなにあらし』という作品と共に、古鉢るか先生という新鋭マンガ家の今後にも注目していきたい。

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miyamo

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