2018.04.30
【日替わりレビュー:月曜日】『会社のおじさん 今日もBL?』鈴木もなか
『会社のおじさん 今日もBL?』
おじさんズが繰り広げるリーマンラブか!? というようなタイトルですが、ちょっとこの作品は趣が違います。
BLの「び」の字も知らない中年リーマンの谷中が、娘が腐女子の同僚にBLの説明をされてうっかり親切な部下を意識してしまい、その部下とのやり取りにドキドキしたり一喜一憂したりするという、そんなおじさんを眺めて楽しむマンガです。
サラリーマンで中間管理職というと、部下と上司との板挟みになることも多く負荷の高い立場ですが、そんな中、扱いにくい部下の教育に悩んでいたところを何くれとフォローしてくれる別の部下・里見。彼こそが「おじさん」こと谷中のBLのお相手です。里見のちょっとしたフォローや気遣いの一言にキュンとしちゃう中年男子が可愛くて癒されるんですよね……。
ジャンル的には厳密にはBLとは言えないかもしれないんですが、谷中が里見に、
「父親がいたらこんな感じがいいなあって!」
と無邪気に言われてなぜか落ち込んでしまうところを見て、うんこれはやっぱりBLだなと判定を下して、しょんぼりしているおじさんに心置きなく胸キュンとすることに致しました。
とにかく日常のほんわかなマンガです。特に大事件が起こるわけでも、誰かが大恋愛をしたり失恋したりするわけでもありません。悪人は登場しないし、もちろんだ誰も死にません。分類的にはほのぼの系だと思われます。
娘から得た断片的な知識を得意げに谷中に披露する同僚や、扱いにくい部下・高杉を里中にけしかける腐女子社員・おじさんズが甘味を食べながらBLトークをするのを聞かされて恐怖に震える隠れ腐女子などなど。
現実世界に「BL」というジャンルが存在して、そのジャンルを意識しちゃったおじさんが、自分もBLっぽい気持ちになっているんじゃないかと思春期の少年みたいにドキドキするのが無条件に可愛いですね……。途中から里見くんがちょっとした小悪魔キャラに見えてくるから不思議です。
疲れた時に読むとHP・MPがやんわり回復されていく、かもしれません。肩ひじ張らずに楽しめるちょっとメタな感じのBLだと思います。
©鈴木もなか/ジーウォーク