2018.05.08
【インタビュー|後編】『空挺ドラゴンズ』桑原太矩 「やっぱりマンガはキャラクター!」
「good!アフタヌーン」にて連載中の人気ファンタジーマンガ『空挺ドラゴンズ』。
その著者である桑原太矩先生へのインタビュー・後編では、桑原先生が影響を受けたマンガや映画の数々、創作術など、パーソナリティについて大きく踏み込んだ。
桑原太矩
プロフィール:1985年5月20日生まれ。北海道札幌市出身。武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科を卒業。2010年アフタヌーン四季賞にて『鷹の台フリークス』で佳作、2011年同賞にて『ミミクリ』で準入選を受賞。『とっかぶ』全④巻刊行。現在、「good!アフタヌーン」で『空挺ドラゴンズ』を連載中。
(取材・文:かーずSP/編集:コミスペ!編集部)
朝方の方が仕事の効率がイイ
──連載開始当初と今とで、変わった点はありますか?
桑原:朝方になりました。『とっかぶ』の時には夜型で、それを変えた方が効率が良いということに気づいたんです。
夜型で朝遅く起きるとすでに全部が疲れているっていうか、身体も疲れているし、部屋の空気も疲れている。同じ8時間でも疲労度が違う感じがします。
──なにかわかる気がします。じゃあ徹夜も無しで?
桑原:完徹はしません。マンガはマラソンなので1回を頑張ればいいというものではなく、長く続けられる方法を自分で考えなきゃと思いまして。
それに『空挺ドラゴンズ』の乗員たちがすごい早起きだから、同じリズムで生活していることも、作風に影響しているかもしれません。
──子供の頃に読んでいたマンガを教えて下さい。
桑原:小学校低学年の時に初めてマンガを買ったのが『魔法陣グルグル』でした。他には『封神演義』『るろうに剣心』、それに『パトレイバー』には大きな影響を受けました。
影響を受けたマンガ家はゆうきまさみ先生
──ロボットものがお好きだったんですか?
桑原:昔から『機動戦士ガンダム』などロボットものは好きだったんですが、アニメの『パトレイバー』を見て、このロボット物は何か違うって。内容が大人向けっぽくて、子供なりに背伸びをしたい気持ちがくすぐられたのかも。
それでマンガの『パトレイバー』に触れたのが、ゆうきまさみ先生との出会いでした。私が影響を受けた作品は『パトレイバー』と『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』ですね。
──ゆうきまさみ先生の魅力はどんなところにあると感じますか?
桑原:キャラクター像に変な癖がないんですよ。一見、癖があるキャラクターに見せかけて、それぞれ複雑なパーソナリティを持っていてそれが自然で。一辺倒な性格を与えられていないというか。彼らが会話してるだけで楽しく読めちゃうんです。
──特車二課の会話の緩さとか面白いですよね。
桑原:『パトレイバー』は、もともと少年誌に載せるような話じゃないんです。1冊通して、ロボット同士の取っ組み合いがほとんどない巻もあったり、刑事物みたいな面もありますし。全然少年マンガっぽくなくって、大人な魅力を感じさせますよね。
──『空挺ドラゴンズ』も、シリアスなことが起こっていても決して暗くならない作風なので、それと近しい感じがします。
桑原:そうかもしれません。
『ゴジラ』『リンダリンダリンダ』他、桑原先生の好きな映画
──ご趣味は映画鑑賞と伺ったのですが?
桑原:映画は昔から大好きで、特に『エイリアン2』や『バックトゥザフューチャー』といったSFが好きでした。だから、『空挺ドラゴンズ』も剣と魔法じゃなくて船で空中戦をやる、SFっぽい内容になったんだと思います。
ちなみに「クィン・ザザ号」っていう名前は、『不思議惑星キン・ザ・ザ』というロシアのSF映画が元ネタになっています。
──それは『空挺ドラゴンズ』の読者にオススメできる映画なんでしょうか?
桑原:いや、これは変な映画で、特に観なくてもいいです(笑)。でもカルト的な人気で、映画通なら誰でも知っているようなB級映画なんですよ。ブラックユーモアやロシアの社会風刺が入ったドタバタコメディ映画で、クィン・ザザ号は本当に名前だけです。
──本当にSFがお好きなんですね。
桑原:怪獣映画も好きで、子供の頃はずっと『ゴジラ』を見ていました。『シン・ゴジラ』はシリーズの中でも相当出来が良かったですが、でもHuluで昔の『ゴジラ』が観られるので作業中に流していると、「こんなにお話はハチャメチャだったっけ?」って(笑)。
──子供は怪獣が暴れているだけで楽しいからですかね。
桑原:ゴジラの背びれが光っているのがカッコいい、みたいな。でも小学生ながら『ガメラ』は正義の味方だから嫌というのはありました。「敵か味方かわからないゴジラがかっこいいんじゃん!」って。でも大人になってから平成ガメラを観ると、すごく出来が良くて『ガメラ』はすごいなって思います。
──SF以外でお好きな映画はありますか?
桑原:『リンダリンダリンダ』っていう映画がめっちゃ大好きなんです。
学祭三日間の話なんですが、大人が期待する高校生像を描いてないのが良いんですよね。普通は学生映画ってキラキラ青春していて、熱血な女の子が出てくるような作品が多いですけど。
──同じ時期に『スイングガールズ』や『ウォーターボーイズ』が流行っていましたよね。
桑原:それらも面白いんですが、『リンダリンダリンダ』は本当に気だるくて、学祭での目標も「バンド演奏をする」っていう高くない目標で。でもそんな気だるさの中にも、瑞々しさがあって暗くならないんです。
──『桐島、部活やめるってよ』に近い感じですか?
桑原:ですね。『桐島、部活やめるってよ』はサスペンスっぽい要素も入っているんですが、『リンダリンダリンダ』はやっぱり空気感が良いんです。普通の女の子が、普通の場所で、それでもちょっとだけ煌めく瞬間をちゃんと持っている点が好みです。
マンガを描くことを止めるつもりで投稿したことがデビューに繋がる
──いつ頃からマンガを描き始めていましたか?
桑原:小学校2年の頃に、クラスでマンガを描くのが流行ったんです。そこから途切れずに絵を描き続けていました。でもマンガを描くのは恥ずかしい行為だと思っていたので、誰にも見せずに家族にも知られないように、エロ本を隠すみたいに引き出しの奥にしまってました(笑)。
──『デスノート』のライトみたいですね(笑)。
桑原:他人に見られたら死ぬんで、逆デスノートというか(笑)。それで、美術の予備校から美大に進学したんですが、その頃はデザイナーになりたいと思っていました。
大学4年の夏休みに就活で辟易していた頃、むしろ趣味でマンガを描き続けるのはもう止める、これで最後だ、くらいの気持ちで投稿したのがデビューのきっかけです。
──自分の中で区切りをつけたかった?
桑原:「どうせなんの形にもならないのに、なんで描いているんだ俺は」って気持ちで続けていたので、1回投稿して落選して、自分の中にあるマンガを終わらせたかったんです。
それで「ジャンプSQ.」に送ったところ、賞を受賞できて、後には引けなくなったなって(笑)。その1年後に今度は「アフタヌーン」に原稿を送ったら「アフタヌーン四季賞」を受賞したというのが経緯です。
──『アフタヌーン』を選んだ理由は?
桑原:これはマンガ家を目指している人あるあるかもしれないんですが、「『アフタヌーン』は懐が広そうだから」、ですね。マンガ家を目指している人の駆け込み寺というか、ここなら自分の作風をわかってくれる感じがして(笑)。
──雑誌の煽り文句でも、「ジャンルレス漫画誌! good!アフタヌーン」って謳ってますしね(笑)。他に学生時代、打ち込んでいた趣味はありますか?
桑原:ずっとプラモデルを作っていました。ガンプラだけじゃなくて、戦車とか飛行機とか全般。ただ大学を卒業してからは時間がなくて……。
──今の趣味は?
桑原:歩くのが好きですね。目的地だけ決めてひたすら3時間とか、歩きながらアイデアを出しています。散歩って、アイディアが出なくても罪悪感を感じなくて済むんですよ。テーブルに粘って1時間何も出ないと、本当に時間を無駄にしたって罪の意識にさいなまれるので(笑)。
──(笑)。最近、気に入っているマンガを教えてください。
桑原:『映像研には手を出すな!』は、喋り方などがすごくキャラっぽいんですけど、属性が与えられているキャラクター作りじゃないのがイイです。熱血じゃないんだけど熱血みたいな、キラキラしてないんだけどキラキラしてるみたいな、不思議なバランスですよね。
大童澄瞳先生は自主制作でアニメを製作していた方らしく、構図の作り方がマンガっぽくなくて、アニメっぽいところも気に入ってます。
──ゆうきまさみ先生といい、キャラクターに惹かれるんですね。
桑原:やっぱりマンガはキャラクターだと思います。同じ大学の部活を舞台にしたマンガでは、『げんしけん』もすごく好きでした。
木尾士目先生は微妙な感情をほじくるみたいな、ちょっと素通りしてしまうような人間の感情、日々抱いている感情をマンガで表現しているところに感銘を受けます。例えば「ハラグーロ」っていう面倒くさい男がいて、すごく嫌なヤツなんですけど、「ああいう引っ張ってくれるやつがいるから世の中回るんだよ」みたいな話も出てきて。人間の微妙な関係や感情を描くのが、木尾士目先生はすごいと感じます。
──インタビュー前半で触れた、「モノローグを廃して、ちょっとした演技で感情を匂わせる」ことにも繋がる話ですね。他にもありますか?
桑原:最近読んで面白かったのは、さいとう・たかを先生の『サバイバル』。
ネズミの話とか、すごくしつこく描かれているんですよ。このしつこい感じを通して、主人公が悩んでいることが体感で伝わってきます。昔の作品なので、今っぽくないキャラクターの演技とかセリフ、例えば「地団駄を踏む」とか。そういうのが逆に面白いっていう点もあるとは思います。
──それでは4巻の告知をお願いします。見所はどこでしょうか?
桑原:4巻の表紙がヴァニーになってます。これでミカ、ジロー、タキタ、ヴァニーで主要メンバーが一周した形です。
4巻はヴァニーが中心になる話で、クィン・ザザ号が廃業の危機になります。
──ええーっ!
桑原:それと4巻の特装版ですが、雑誌の表紙などカラー原稿や、単行本ではモノクロで収録されていたイラストやマンガも、カラーで掲載されています。単行本派の方には初見のイラストもカラーでいっぱい見られるんじゃないかと。
それと今回のインタビューで散々出てきた、『空挺ドラゴンズ』の元になったネームの全編が収録されてしまいます。
──「しまいます」って(笑)。
桑原:恥ずかしい気持ちもありますが(笑)、それだけに皆さんには楽しんでもらえるネームになっていると思います。また、今まで書店さんに描き下ろした購入特典イラストが、文字が乗っていない状態で見られるので、そちらも見ていただければ。
──編集さんからは何かありますか?
担当編集:秋葉原の駅に、大きな駅貼りのポスターが貼られます。お近くにお立ち寄りの際には探してみてください。
また、7日よりコミックDAYSで、『空挺ドラゴンズ』本編の1話ネーム1稿目とキャララフが期間限定(17日まで)公開されています。
単行本4巻に収録されたプロトタイプから、今回のインタビューで先生がお話しした内容を経て、1話になるまでの過程が垣間見える内容になっていますので、こちらもぜひご覧下さい!
──それでは最後にメッセージをお願いします。
桑原:これからも、いろんなところへ行って、いろんな龍と出会う彼らの日常にお付き合い頂けると幸いです。まだ読んだことなくて、この記事で興味持たれた方、ぜひこの機会に、クィン・ザザ号に乗り込んでみてください!
──本日はありがとうございました。
作品情報
©桑原太矩/講談社